空の小話集―元老練機長が明かす裏話
「15歳で海軍操縦練習生となり、海上自衛隊、民間航空のプロパイロットを経て、75歳で飛行機を降りるまでの半世紀もの間、空を翔けつづけた著者が明かす裏話。」。
とても面白かった。空のエッセイ集。
スチュワーデスや管制官とのハプニング話という軽い話題から入って、訓練生時代や現役パイロット時代、教官時代の体験談、そして九死に一生を得たトラブルや生死のかかった戦時の思い出話まで、話のバリエーションが豊か。
定期航空会社の運行規定には「定期航空の四原則」というのがあって安全性、定時性、経済性、快適性で、この順で大切だが、あちら立てればこちら立たずになる。パイロットは総合点でベストを尽くすために実にいろいろなことを考えながら操縦しているのだなと終始感心した。
特に厳しい訓練と定期チェックが印象に残った。日本で年間に階段から落ちて死亡する人は600人。年間に航空事故で死亡する人はそれより少ないと書かれている。飛行機の乗るより2階に住む方が危険という見方もできるほど、現代の飛行機の安全性は高いそうである。
私は飛行機が苦手である。海外へ行くときには仕方がなく乗るが、国内は新幹線で行けるなら陸路を選ぶといった感じなのだけれども、この本を読んで飛行機への興味は高まった。著者の小話のユーモアに笑い、専門知識の披露にフムフムと思い、戦時中のパイロットの壮絶な日常に感動した。
文章が読みやすく、暖かい。
それは軍隊で死ぬ人より交通事故で死ぬ人の方が多いと言ってるのと同じで。