きつねのはなし
「京の骨董店を舞台に現代の「百物語」の幕が開く。注目の俊英が放つ驚愕の新作。細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出したものは、そして失ったものは、あれは何だったのか。さらに次々起こる怪異の結末は―。端整な筆致で紡がれ、妖しくも美しい幻燈に彩られた奇譚集。 」
お稲荷のお使いがキツネの像で、狐憑きという霊的現象もあるからキツネは霊的な印象があるが、本来はこれは動物のキツネが神様というわけではなかったらしい。穀物の神である御饌津神(みけつかみ)の"ミケツ"という発音がキツネの古語である"ケツネ"に近かったため、キツネがお稲荷の使いになったという説がある。
この作品に登場するきつねも動物のキツネではない。それは長い胴体を持って、闇夜にすばしこく動く何かである。お稲荷の総本山である京都の伏見稲荷には数年前に一度行ったことがある。見るからになにかそういうものが棲んでいそうである。昼間なのにどきどきした思い出が、この本を読みながらよみがえってきた。
・伏見稲荷神社で撮った写真をFlashムービー化してみたもの
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/fushimiinari.html
京都の古物商を主な舞台にして、少しずつ重なり合う4つの物語がひとつの世界を構成する。なお、ミステリー小説ではないのですべての謎が解けると思って読まないほうがよい。まさにキツネにつままれたような体験をしたい人におすすめである。この森見 登美彦は恒川 光太郎、川上 弘美などの民俗系のダークファンタジーに通じるものがある。
・雷の季節の終わりに
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004801.html
・夜市
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004796.html