タオ―老子
「
道(タオ)名の無い領域
これが道だと口で言ったからって
それは本当の道じゃないんだ
これがタオだと名づけたって
それは本物の道じゃないんだ
なぜってそれを道だと言ったり
名づけたりするずっと以前から
名の無い道の領域が
はるかに広がっていたんだ。
」
老子道徳経全81章の現代語訳。
著者の加島 祥造氏は1993年に「タオ―ヒア・ナウ」で英語訳からの和訳を試みている。今回は原文から直接現代日本語に訳している。こちらのほうが情感がこもっていて著者の老子への共感が伝わってくる文体である。
超訳的手法も入っていて「インターネットのウィンドウを覗きこんだって、分かりゃしない <中略> 情報を集めれば集めるほど ますます分からなくなるんだよ」などという表現もある。
自然に回帰すること(無為自然)で宇宙の神秘と一体化することが究極の道TAOであると説く老子の教えは、欧米でも禅ZENの実践とともに高く評価されている。人生のあらゆる荷物を捨てて、争うことをやめて、善も悪もない、宇宙のエネルギーに身をゆだねよ、というメッセージである。
無欲で無知なのがよいわけだが、無欲無知なだけではダメみたいである。タオを知る人は結果として無欲で無知になるということだろう。ではタオとは何なのかというと、冒頭の引用が語るように言葉で定義することができない。定義してわかったように思うのは、老子によると知識病なのである。タオを知る人は知識病にかかっている自分に気がつくことで、それを乗り越えることができる。
老子の思想は後年に道教に影響を与える。道教の達人は不老不死の仙人であるから、これも仙人の生き方の理想といってもいいのかもしれない。地球環境にも人間の精神にも負荷を欠けない究極のストレスフリー思想として、ストレスだらけの現代で再評価を受けているのも納得である。
・老子道徳経 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%80%81%E5%AD%90%E9%81%93%E5%BE%B3%E7%B5%8C