好かれる方法 戦略的PRの発想
PRの仕事に40年。その道のプロの(株)プラップジャパン(2005年ジャスダック上場)社長が語るPR論。自民党の選挙アドバイザーとして2005年の総選挙を圧勝に導いたことで有名になった。パブリックリレーションズとは「大衆や公衆、ひいては社会との関係を向上させて、良好なものにする行為」であると著者は定義している。
PR会社はクライアント企業をメディアに売り込んで記事にしてもらうパブリシティの仕事が主体である。広告をメディアに掲載する仲介料ビジネスである広告代理店とは異なる。自民党のほか、キシリトール、タマちゃん(アザラシ)、宮崎シーガイア、六本木ヒルズ、避妊用ピル、ヴィダルサスーン(シャンプー)など、著者の会社が関わった成功事例が次々に挙げられる。
成功事例はそれで楽しいのだが、第4章の「危機管理のエッセンス」が飛びぬけて面白くて、参考になった。同社は記者会見での対応訓練サービスを法人向けに提供している。言ったことを、メディアにちゃんと取り上げてもらうというのは平時のリリースでも難しいのだが、危機管理においてはさらに困難になる。
危機に際して記者会見する際の心構え。
1 記者から逃げない
2 情報開示の姿勢と誠意を示す
3 クイックレスポンスを心がける
4 答えは簡潔に
5 企業の論理を主張しない
という大きな方針が示される。これらの詳細なアドバイスが勉強になる。
たとえば、4の答えは簡潔になら「ポイントは三つ以内に絞るべきです。これはマジック・トライアングルと呼ばれている方法ですが、非常に有効です。「それについてはまず三つポイントがあります」と答えると記者はメモ帳に、1,2,3と番号をつけて、順番に聞こうとします。ですから、先方に話を聞く姿勢を作ってもらえるのです。しかも、ポイントが三つあれば、記者はそれを勝手に省略して記事にはしづらいので全部書かざるを得ません」。なるほど。
「ご承知のように」「言うまでもなく」「先ほども申し上げましたように」や、相手の言葉のオウム返しや「ノーコメント」はダメ。こういう手ごわい質問にはきをつけろリストがある。偉大なコミュニケーターのレーガン大統領の切り返し方「いやあ、その質問にはこんなふうに答えさせてもらおうかな」などノウハウが多い。
私はライターをしていたので、インタビューする側、つまり攻撃側のノウハウはだいたい知っている。この本では、逆に、防戦側のやり方が書いてあって新鮮だった。
2000年の雪印乳業の食中毒問題で社長が記者会見後、エレベータ前で記者にもみくちゃにされ、怒って「私は寝てないんだ」と怒鳴ってしまった失敗例。著者曰く、怒鳴った社長も論外だが、エレベータ前で記者に囲ませるような会見現場の「仕切り」の悪さを批判している。プロは視点が違うなと勉強になった。
経営トップ、役員補佐、広報、秘書の仕事をしている人に特におすすめ。
「私はライターをしていたので、インタビューする側、つまり攻撃側のノウハウはだいたい知っている」
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