世界でもっとも美しい10の科学実験
科学史において重要な役割を担った実験のうち、「美しさ」を基準に10個を取り上げて解説する。
・エラトステネスの地球の外周の長さを求める実験
・ガリレオがピサの斜塔で落下の法則を確認した実験
・ガリレオが慣性の法則を確認した実験
・ニュートンがプリズムで確認した光の分散の実験
・キャヴェンディッシュの万有引力定数を求める実験
・ヤングの光の干渉に関する実験
・フーコーの振り子による地球自転を確認する実験
・ミリカンが電気素量を求めた油滴実験
・ラザフォードが原子核を発見したα線の散乱実験
・ファインマンの量子力学に関する2重スリットの思考実験。
著者は雑誌「フィジックス・ワールド」で読者に、一番美しいと思う実験を挙げてくれるように頼んだ。300以上の実験が読者から推薦され、その中でも最も数が多かった10件が上のリストである。
著者は美しい実験が持つ要素を次のように定義した。
・深いこと
結果が基本的であること
・効率的であること
各部が経済的に組み合わされていること
・決定的であること
結果として生じるのは実験にではなく、世界や理論へ、の疑いであること
「
美しい実験は、自然について深い事柄を明らかにし、しかも世界に関するわれわれの知識を塗り替えるようなかたちでそれを成し遂げる。
」
19世紀の物理学者マイケル・ファラデーはロウソクは美しいと言った。
「
ファラデーにとってロウソクが美しいのは、その機能がいくつもの普遍法則の上に、エレガントかつ効率的に成り立っているからだった。炎の熱はロウを溶かすが、その一方で上昇気流を生み出し、縁のほうのロウを冷ます。その結果として、融けたロウを溜めておくカップ状のものができる。そのカップの中で、ロウの表面は水平に保たれる。なぜなら、そこには「地球をひとまとまりにしているのと同じ重力」が働いているからだ。融けたロウは毛管現象によって、芯の根元のところにあるカップから上部の炎のところまで引き上げられる。一方、炎の熱のためにロウの中で化学反応が起こり、炎が燃え続ける。ロウソクの美しさは、ロウソクが依って立つ科学法則の入り組んだ働きと、法則同士を結び合わせる効率の高さにこそある、とファラデーは言うのである。
」
影の長さを測る、重いものと軽いものを同時に落として同時に落ちることを確認する、長いロープの先に錘をつけて垂らす。そんな簡単な実験をするだけで、地球の大きさや、物体の運動法則、地球の自転といった根源的なことがわかってしまう。
数式の美しさはよく言われることだが、一方、失敗や誤差も生じる実験は、美しくないものとされてきたと思う。著者はこうした風潮に対して、優れた実験は本当は美しいのだと、歴史上の傑作を例示して、説明して見せた。
ぼくは断然、マイケルソン・モーレーだね。