2006年9月アーカイブ
・INetXP
http://resume-next.hp.infoseek.co.jp/program/utility.html
INetXPは、InternetExplorerの起動を高速化するソフトウェア。タスクトレイ上のアイコンをクリックするとダブルクリックすると、瞬間的にInternetExplorerが立ち上がる。私の環境では劇的な変化があった。FireFoxのように軽快である。
仕組みは、InternetExplorerのプロセスをメモリ上にあらかじめ起動させておくということらしい。だから、起動は軽快にはなるが、InternetExplorerを使っていないときにも、メモリは消費するようだ。その点は注意。
一度起動すると、次回からはパソコンの起動時に自動で起動するようになる。(アンインストール方法は、タスクトレイのアイコンを右ダブルクリックすると可能)。
■重要なお知らせ
このブログではソフトウェア紹介をする際に、ダウンロード先としてベクターのサイトを紹介している記事が多いです。ダウンロード最大手で信頼できると考えていますが、このたび、配布ファイルのウィルス感染の事故が発生しています。
・「Vector」で公開中の807タイトルがウイルス感染、7,873回ダウンロード
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/10/02/13473.html
「ベクターによれば、ウイルスに感染したソフトウェアが掲載されていたのは、フリーソフトおよびシェアウェアを公開している「ライブラリ」。9月27日1時頃から13時30分頃にかけて、半日以上にわたりウイルス感染したソフトウェアがダウンロード可能な状態になっていた。」
この期間中にベクターでダウンロードをされた方は、ぜひウィルスチェックをしてください。
・巨大文字作成ツール -やめて-
任意のサイズの巨大文字のアスキーアート(AA)を作るツール
http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se405379.html
「
● 何これ ●
任意のフォントで書かれた文字列から、巨大文字アスキーアートを作ってしまおうとい うツールです。2chで誰かを煽りたいときなんかに使ってください...おkおk、平和利用平和利用。
この手のツールはいくつか存在していますが、どれも自分のニーズを微妙に満たしてく れなかったので、自作してしまいました。売りとしては、全角半角問わずどのような文 字(例:キタ━(゚∀゚)━!!など)でも変換対象となり、しかもフォントの種類やサイズ指
定もOK。といったところでしょうか。
」
というイカした説明がある巨大絵文字作成ソフト。
メールやブログで使ってもインパクトがありそうだ。
絵文字を構成する文字種、フォント、余白サイズはユーザが指定することもできるので、
なんてことや、
なんてことが可能。
・2ちゃんねる風の絵文字作成を支援するAscii Art Editorと文字絵考
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001881.html
・おまいら2chカードゲームで遊びませんか、いいYO!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002821.html
・テキストでビジュアライズするツール
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000436.html
・なぜ偉人たちは教科書から消えたのか 【肖像画】が語る通説破りの日本史
「みなさんは、日本史の教科書から偉人たちの肖像画が消えつつあることをご存知ですしょうか。たとえば1980年の教科書(『日本史』三省堂)には、36点の肖像画が掲載されていましたが、現在の教科書(『日本史B』三省堂 2006年)はわずか20点。およそ半分に減ってしまっているのです。」
私達が昔教科書で見た源頼朝の顔や、お札にまでなった聖徳太子の肖像画は、本人を描いたものではなかった疑惑が持ち上がっているらしい。武田信玄は実は細面で華奢な外形であったという説。銅像にもなった西郷隆盛の今に伝わる顔は実物とはまったく似ていない説。足利尊氏の騎馬武者像は別人説。
こうした疑惑もあって、教科書では肖像画を使わないか、「伝○○像」という表記に止める例が続出しているそうである。いまさらそんなことを言われても困るのだが、違うかもしれないものをそのままにもしておけない。
そういえば何年か前に、明治神宮を散歩していて宝物殿に入ってみたことがある。
・宝物殿・宝物展示室
http://www.meijijingu.or.jp/japanese/homotsu/index.htm
ここには初代の神武天皇から第124代昭和天皇までの歴代天皇の肖像画が並んでいる部屋があって壮観である。世界広しといえど2600年前からの先祖の肖像画があるのは、天皇家くらいだろうと感心していたが、ふと、思った。神武天皇の顔って何を見て描いたのだろう、そもそも神武天皇を含めて最初の8代は実在も疑われてさえいるわけで、御顔などわかるわけがないのである。
それでも顔は重要で、この本の偉人たちが偉人として語り継がれた理由の一つは、やはり有名な肖像画で、人々に親しまれてきたからだろう。似ている似ていないは主観の問題もあるし、時代の作風にも影響されるから、大事な条件ではないとする学者もいるらしい。いまさら、本当の顔がわからないのだから、本人と伝わる肖像画はそのまま使い続ける手もあるのかもしれない。
肖像画の顔問題とは別に、通俗的な評価とはまったく違う人生を送っていた偉人たちも数十人取り上げられている。ワイロ政治で悪名高かった田沼意次は、最新の研究では、積極的な重商主義の進歩的政治家だったと名誉回復の動きがある。生類憐みの令で印象が悪かった徳川綱吉も画期的社会福祉政策だったと再評価する傾向もある。遠山の金さんの刺青は桜吹雪ではなく女の生首だったという説もある。うーん、歴史って数十年でかなり変わってしまうものなのですね。
ライブドア事件の際にニュースによくでてきたキーワード。投資事業組合、投資ファンドは、一般にはその正体はよく知られていない。同事件でこの仕組みが悪用されたために、よくない印象を与えてしまったが、本来は経済活動を支える重要な役割をになう。
「
あれほど長い間苦しんだデフレの苦境から脱することができたのは、実は投資ファンド・投資事業組合の貢献があったから、といっても過言ではありません。
にもかかわらず、投資ファンド・投資事業組合は、上場会社のように情報開示を広く一般に向けて行うことはありませんから、その活躍ぶりが大々的に報道される機会はありません。
したがって、悪いところが指摘されることはあっても、投資ファンド・投資事業組合の素晴らしさが伝えられる機会は限られていたのです。
」
投資事業組合には、任意組合、匿名組合、投資事業有限責任組合の3つの形態があること、ジェネラルパートナーと呼ばれる運営者とリミテッドパートナーと呼ばれる出資者がいること。課税は組合に対してではなく、組合員に対してなされる「パススルー課税」という経営メリットがあること。組成は株式会社より簡単で、登記が不要であったこと。運営者の手数料は2.5%程度が一般的であること。運営者と出資者のよくある取り決めの例など、投資事業組合と投資ファンドの基本的な仕組みが、誰にでもわかる言葉で説明されている。
日本版LLP、日本版LLPとの違い、新しい法規制、コンテンツファンドなど、最新事情も具体例を挙げて記述がある。これまでは監督当局が存在しなかった投資事業組合だが、証券取引法が金融商品取引法に改正されたことに伴い、金融庁に登録・届出が必要になったそうだ。
わかりやすさに定評のある著者が書いている。ベンチャー企業家と投資家におすすめ。
CNET Japan Innovation Conference 2006 Autumn 「Web 2.0時代に成長するテクノロジー企業の戦略」 でパネリストとして発表させていただきました。
詳しいレポートは上記サイトの報道でご覧ください。
参加したのは「いまこれが熱い米国のWeb2.0サービス」というセッション。
プレゼン資料を公開します。
この資料はパワーポイントを「いきなりPDF FlashPaperでFlashに変換しています。PDF版はこちら
なお、パネリストの湯川さんは「進化するネットワーキング」、渡辺さんは「」をそれぞれ共著で最近、出版しています。控え室で拝見したところ面白そう。
以下はテキスト化したデータ。
・できる100ワザ SEO & SEM 集客も売上もアップするヤフー!・グーグル対策
影響力のある言葉の探し方、アクセス解析のキモ、PageRankの上げ方、低予算でできるキーワード広告など、Webサイトの集客と売り上げを増やす方法が100。このシリーズは本来は入門書だが、ノウハウが集約され、実行手順が具体的に書かれていて、中級者以上でも参考になる内容。
Excelで「キーワード帳」を作って、自分のサイト用のキーワードリストをメンテナンスする。実際に検索してみて、競合サイトや他の分野の人気サイトからキーワードを”盗む”のが基本だが、この本には、著者らの長い経験から作成された、強いキーワード案が表にして紹介されている。
例えば「口コミ」を探しているユーザには、口コミ、おすすめ、比較、人気、評判、評価、批評、話題、選び方...。悩み解決を探しているユーザには、簡単、作り方、やり方、育て方、トラブル、対策、相談、診断、修理...。こうしたキーワードを自分のサイトのキーワードと組み合わせることで、検索エンジンで発見されやすく、クリックされやすくなる。
ひとりで考えているだけでは限界もあるので、キーワードを探すツールもいくつか紹介されていた。便利だなと思ったのが、KEIを算出するキーワードアドバイスツールプラス。KEIとは、月間の検索数の二乗÷検索結果数で計算されるキーワード有効性指標で、大きければ大きいほど競合数が少ない良いキーワードになるそうだ。
「書評」というキーワードでKEIを調べてみた例。こんなキーワードを盛り込めば、これくらいの効果が予想されるということ。
・無料登録ドットコム - キーワードアドバイスツールプラス
http://www.keywordadvisetoolplus.com/
ここではGoogleとYAHOO!の検索結果数で計算されている。ちなみにGoogle:YAHOO!:MSNからのアクセス数は、5:3:1が普通であるそうだ。私のブログがSEOをあまり考えていないせいか、Googleが7割近い。YAHOO!対策もしなければと思った。
このほか、無料アクセス解析の定番Google Analyticsの使い方、Googleアドワーズ広告の使い方など、入門から応用までの全体像が示されている。これからSEO、SEMに取り組みたい個人、企業の担当者に入門書としておすすめ。
長編「ツ・イ・ラ・ク」の対をなす短編集。
・ツ・イ・ラ・ク
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004722.html
前作の登場人物たちが、各々の視点で語る6つのサイドストーリー。「あの事件」と平行している時代の話もあれば、後日談もある。前作では脇役だった人物がここでは主人公になる。
人それぞれの6つの人生模様の中で、共通しているのは、何かに執着する心といえそうだ。幼い頃に芽生えた執着は年齢を重ねても本質はかわらない。それがやがて個性になり、それぞれの運命を呼び寄せている、ように思える。
「
学校---幼稚園でも大学でも---という空間が区切る時間があまりにも克明で密度が高いため、この空間からはなれて久しい人間は、おうおうにしてミステイクをおかすけれども、十四歳の女は、二十四歳の女とも三十四歳の女とも同じなのである。そのからだは。その情欲も。
「ちがう」
もしだれかがそう言うのなら、それは、わたしとその人の個性がちがうのであって、その人のうちでは、その人の原型は十四歳よりももっと以前、十歳くらいに成り立っていて、その原型が、衆人の前に現れ出るかたちが、わたしとはちがっただけのことを錯覚してしまうからだ。
その人のうちにおいてはその人の十四歳と二十四歳と三十四歳は同じはず。ちがうところは、わたしがそうであるようにふたつだけである。各々なりの知識の量とその知識量からくる語彙。体力とその体力差からくる執着の度合い。執着を詩人はときに、情熱やひたむきと換言するけれども。
」
どの話も「ツ・イ・ラ・ク」を読んでいなくても、単独作品として楽しめるように書かれているが、もちろん、前作を読んでからのほうが深く味わえる。
表題作「桃」は映画にもなっている。女性のエロスをテーマにした短編オムニバスの「female」。この第一話として長谷川京子が主演で映像化された。小説のファンなら一見の価値あり。ただし、このDVDでのおすすめは、断然、小説とは無関係な「玉虫」の石田えりの好演なのであるが。
5人の女性作家の原作を5人の監督が5人の女優で仕上げた5つのエロス。「桃」「太陽の見える場所まで」「夜の舌先」「女神のかかと」「玉虫」を収録。
「桃」―長谷川京子/池内博之/野村恵里
「太陽の見える場所まで」―大塚ちひろ/石井苗子/片桐はいり
「夜の舌先」―高岡早紀/近藤公園
「女神のかかと」―大塚寧々
「玉虫」―石田えり/小林薫/加瀬亮
・アイム・ゴーイング・トゥ・テル・ユー・ア・シークレット(DVD付)
「
1991年のツアー・ドキュメンタリー「イン・ベッド・ウィズ・マドンナ」から15年、
マドンナが再び全世界に贈る、感動と衝撃のツアー・ドキュメンタリー第2弾。
感動と衝撃のツアー・ドキュメンタリーDVD:『アイム・ゴーイング・トゥ・テル・ユー・ア・シークレット』に、マドンナ初のライヴCDをカップリングしたマドンナ史上、初のDVD+CD2枚組作品。
」
コンフェッションズ・オン・ア・ダンスフロア~ジャパン・ツアー・スペシャル・エディション(DVD付)
現在「コンフェッションズ・オン・ア・ダンスフロア」が売れている。このDVD+CDは2004年のツアー内容。マドンナは5年おきくらいに姿を変えて、世界の頂点に戻ってくる感じがある。ドキュメンタリDVDが素晴らしい。
マドンナは、ダンサーたちに神父や牧師の衣装を着させて、舞台で脱がせる演出を指導する。
「宗教は分裂するのよ こういう宗教的な衣装が 人々を分断するわ だから脱いで分断する理由をなくすの 皆の意識を一つにできる 宇宙の法に従って」
宗教をモチーフにした過激パフォーマンス。
ユダヤ教カバラの信者であるマドンナはイスラエルに乗り込む。危険だからやめておきましょうと困惑する現地ガイドの制止を振り切って、聖地を見学。ジョンレノンの「イマジン」も歌う。
「スターとテロリストとの違いは何だか分かる? 」
「ポップスターは交渉ができない」
千秋楽。バックステージで、ダンサーたちと手をつないで祈るシーン。全員の名前をひとりひとり呼びながら、感謝のねぎらいをかける。心がこもった言葉に涙ぐんでしまうスタッフも続出。
「イン・ベッド・ウィズ・マドンナ」以来、一層、説教臭くなったとも言えるのだが、人間的に一回り大きくなって魅力を増したようにも思える。このドキュメンタリがどこまで演出なのか分からないが、マドンナの自己プロデュースのうまさ、リーダーとしての統率力、周囲への気配りなど、何十年もエンタテイメントのトップに君臨できる秘密がわかったような気がする。
「えkoUrl」は、指定された URLやHTMLなどのページを表示、または複数のURLをスライド表示し、指定された時間後に終了するアプリケーション。
RSSリーダーを使えば、各サイトの主要な更新一覧は把握できるけれども、RSSに含まれていない情報もあるし、デザイン変更や機能追加はみつけられない。新聞サイトなどでは記事の表示面積も確認したい。だから、ブラウザでひとつひとつ見て歩くという作業はいまだに有効だと思っている。
「えkoUrl」を使うと、あらかじめリスト化したサイトを、だまって見ているだけで順番に表示される。朝一番で寝ぼけているとき、昼食をPCの前で食べているとき、などには、この受動的なブラウジングスタイルが楽でいい。
スライドショウ風つながりで、もうひとつ面白いサイトを紹介。MashStarはキーワードを入力すると、プレゼンに使えそうな関連画像を見つけて、表示する。ジョークアプリかなと思ったが、ブレストレベルではかなり使えそうな気がする。
・MashStar | 準備ゼロの最強プレゼンテーション!
http://mashstar.com/
9月29日、私も理事をしているNPOのオーバルリンクが主催でYouTubeってどうよ、なセミナーを開催します。元CNETJAPAN創業社長の御手洗さん、CNETブログでも有名な渡辺さんの二人を中心に、映像メディアの未来を考察します。
会場でお会いしましょう。懇親会もあります。
お申し込みはこちら
http://www.ovallink.jp/info/20060916_2.html
やりすぎ感漂うCM映像まであります。
●タイトル
オーバルリンク公開セミナー September 2006
『 Do You You Tube ? 』
Tubeが開いたパンドラの箱を検証する。
●講演
御手洗 大祐
http://www.huis.gr.jp/~mitarai/profile.html
渡辺 聡
http://sw.cocolog-nifty.com/swmemo/
●日時+場所等
2006年9月29日(金) 19:30〜21:30
22:00より懇親会を予定
●場所: ATL Systems 会議室
新宿区西新宿6-8-1 住友不動産新宿オークタワー 17階
(駐車場・駐輪場は用意しておりません。公共交通機関をご利用ください)
地図はこちら
セミナー参加費:一般:3,000円 会員:無料
懇親会参加費:一般:3,000円 会員:3,000円
主催:OVAL LINK I/O
企画構成:OVAL LINK
・お申し込みはこちら
http://www.ovallink.jp/info/20060916_2.html
●テーマ
「You Tubeってどうよ?」
今、この問いは、もはや単なる映像のチャネルとしての展開可能性を問うことだけにはとどまらない。すでにここに流れるコンテンツは、自ら大きな変容を見せている。それは、販売促進なのかコンテンツ自体なのか、インデックスなのか、本編なのか?
送る側と受ける側とのあるべきメディアの了解を欠いたまま、希望と絶望を振りまきつつ、あらゆる映像はもてあそばれ、利用される。合法か、違法か、そのグレイゾーンが、ビジネスの分水嶺を隠している。そしてもはや、You Tube自体の行方どころではない。
我々は、パンドラの箱が開いていくところを目撃してしまったのだ。その向こう側に見えて来る世界とは? 広告モデル、販売促進、コンテンツディストリビューション、EC、ブランド形成、Webサービス、プロダクツライフサイクル、eラーニング。それらの情報化ソリューションと映像との多様な邂逅が始まっているのである。
クリエイティブな現場と批評空間を行き交う二人の論客が、変貌する映像の価値とメディア事業の可能性について、その本質をえぐり出す。
■オーバルリンクとは?
今から4年ほど前、日経BP社によってオンライン上の有料情報提供サービス「ブロードバンドビジネス・ラボ」が試みられた。同ラボは、残念ながら1年余でその幕を閉じた。しかしその後、そこで稼働していたメーリングリストに集まった有志が、 2003年2月に任意団体として、その活動の一部を継続することとなる。これが、「オーバルリンク」の出発点である。
現在、約140名の会員が、メーリングリストやオンラインデータベースの活用による個々人の情報共有を日常とし、日々起こる様々な企業活動、あらゆる事象や事件、それぞれのプロフェッショナルな立場から起こされるテーマ、それら多様な契機から湧き起こるテクストをネットワークし、アーカイブを重ねている。さらにこういったビジネスコミュニティー的な機能にとどまらず、より日常的な対話、あるいは雑談をも含む多様な遊び、つまり、ビジネスから日常生活まで、ひとつの意思決定の背景となりうるような、まさに欠かせない「情報空間」として「コレクティブ ブレイン」なコミュニティが機能し、それが存続している。またオンラインゆえのオフ会としてだけでなく、会員内でのセミナーや、多様なジャンルのクリエイティブな展開も起こっている。
そして今年、この運営の中心をより社会的な、より確かな組織として、継続的な活動を可能にするために、認定NPO法人化への第一歩を踏み出した。
以上
2002年度ブッカー賞受賞作。
「1977年7月2日。インドのマドラスからカナダのモントリオールへと出航した日本の貨物船ツシマ丸は太平洋上で嵐に巻き込まれ、あえなく沈没した。たった一艘しかない救命ボートに乗り助かったのは、動物たちをつれカナダへ移住する途中だったインドの動物園経営者の息子パイ・パテル16歳。ほかには後足を骨折したシマウマ、オラウータン、ハイエナ、そしてこの世で最も美しく危険な獣ベンガルトラのリチャード・パーカーが一緒だった。広大な海洋にぽつりと浮かぶ命の舟。残されたのはわずかな非常食と水。こうして1人と4頭の凄絶なサバイバル漂流が始まった...。生き残るのは誰か?そして待つ衝撃のラストシーン!!文学史上類を見ない出色の冒険小説。」
まさに世界文学と言えそうな傑作だった。
私達はなんらかの神や、なんらかの物語を信じる。少年は漂流する救命ボートの上で、人を喰うトラと向き合う。食糧も底をついた極限状態であるが、気を抜けばトラに自分が喰われてしまう。調教師のようにトラに対して優位を保つ努力をする一方で、喰われぬようにエサも与える。トラは少年にとって、敵であり友であり、そして神であり、人生でもある。トラと自分の物語を信じることで、また1日を生き延びる。
語りの見事さ、哲学の深さ、ともに見事な完成度。表紙のポップなデザインや動物モノ、冒険小説風の作品紹介に騙されてはいけない。物語は最初は、緩やかに少年の成長物語としてはじまるが、漂流する中盤以降で、人間の心の闇を暴き出すきわどさを見せ始める。加速感がたまらない。
この作品は当初、「シックスセンス」のM・ナイト・シャマラン監督が映画化をする予定だったが、シャマランが別の映画に専念するために降り、「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」のアルフォンソ・キュアロン監督が手がけることになったが、こちらも途中で降板し、結局「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネ監督に決まったらしい。
物語の構成からするとシャマランが適任だったように思われるが、幻想的な作風のジュネ監督にも期待できる。日本公開が楽しみ。
「王様の速読術は、まず一冊の本と付き合う時間を30分と決めてしまう。」
30分を3段階に分ける。
第一段階では、プレビューを5分間行う。
第二段階では、5分間で全ページを写真読みしていく。
第三段階では、残りの20分を使ってスキミング法で読んでいく。
という方法の詳細が書いてある。
この速読法は、
・80%の理解でいいから20%の時間で読む
・とにかく速く読むのではなくて、短時間に必要な情報を獲得すること
・50冊から10冊を選んで1週間以内にレポートを出す
などをねらいとしている。
内容を味わうのではなく、情報という栄養分を摂取するタイプの読書術といえる。
表紙、カバー、目次、見出し、図表などをざっと見るのが第一段階のプレビューだ。実際にやってみるとこの5分間はかなり長いし忙しい。次の写真読みでは見開き2秒で、全ページを眺めて、読むべき箇所を探す。そして20分間でその箇所中心に読む。
大量の情報をさばかねばならない時に向いていそうだ。
個人的には「飛ばし読み」はポリシーに反する。読む本を選んでいるので、もったいないと思うのだが、こうした読みが必要なことは仕事や勉強ではよくある。
仕事で必要に迫られ、私も速読法はいくつか試したことがある。いわゆる「飛ばし読み」でおおざっぱに大意をつかむだけなら、練習次第で、一冊30分は可能だと思う。ごく簡単なメモは作れる。締め切りの近い調査や原稿の仕事における情報収集に、飛ばし読み的な速読は役立つ。それができるのは、やさしいビジネス書か自分が専門としている分野の専門書などに限られてしまう気はするが。
ただ、速読は味気ないし疲れる。日常的には普通に読みたいと思う。大切なのは、毎日読むこと、と、読む本を選ぶこと、だと思う。毎日の時間の積み重なりはとても大きい。私は往復2時間半の通勤時間に愚直に読んでいるが結構たくさん読める。
長距離通勤者は恵まれている。所要時間が1日1時間なら365時間、2時間なら730時間ある。1冊に4時間かかっても、前者なら90冊、後者なら180冊以上は読めるのである。(実際には休日は通勤がないのだが。)
面白い本を選ぶことも大切と考える。内容にひきこまれて夢中で読んでいるときの速度は結構速いものだし、中断や放棄がないから、結果的に中長期で、大量の本を読むことになる。途中まで読んで、面白くない本は、時間の無駄だから、そこで止めることにしている。思い切りが重要だと思う。
そうやって毎日読んでいると、日常が練習になって、読書はある程度、速くなるものではないだろうか。速読法は万能ソリューションではないと思うが、試してみるのは悪くないのだと思っている。速く読めるんだけれども、ペースを落として読んでいるんだと思える余裕はあったらいいと思うから。
内容の構造やキーワードに集中して30分読んでみるといい、というこの本のアドバイスは、短期集中で情報を集めたいときには、ちょうどいいくらいの速度だなと思った。
9月28日(木)に検索会議の第4回を開催します。今回はなんと「非検索」というテーマを設定して、豪華ゲストをお招きします。キーワード検索を超える情報の探し方を考えてみたいと思います。
たくさんの方々の参加をお待ちしております。よろしくお願いします。
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「Yahoo! JAPAN 検索」協賛による検索会議は今回で第四回。今回は検索だけでなく、広くウェブの未来を探る、という意味で「非」検索会議です。
現在、ウェブの世界ではさまざまなサービスがものすごいスピードで日々生まれています。
そうしたサービスの数々は、人々の生活に浸透していくもの、数日で忘れられていくもの、話題にすらのぼらないものなどに選別され、それぞれの運命をたどっていきます。
生活者に選ばれるサービスとそうではないサービス。その違いはどこにあるのでしょうか。
我々はその違いは「機能の差にはない」のではないか、と考えます。個人でも数万人をホストするサービスが作れる今、技術による機能の差はたいした差別化要因にはなりません。
機能以外の「フィーリング」「気持ちのよさ」「美しさ」・・・そうしたものが生活者に選ばれる理由なのではないでしょうか。
今回の「非」検索会議ではおなじみのPassion for the Futureの橋本大也、百式の百式管理人に加え、特別ゲスト!をお二人お呼びしました。
まずは情報検索とユビキタスの専門家として増井俊之さん、そして認知科学と脳科学の専門家として茂木健一郎さんです。
このお二人の最新の研究成果を通じて、生活者に選ばれるインタラクション・デザインとはどういうものかを考えていきます。
もちろん恒例の全体会議も行います。楽しくアイディアをぶつけあいながら交流しましょう。
■ プログラム
第一部 検索しないで情報を見つける非検索術
検索技術開発ベンチャーの経営を6年行ってきたPassion for the Futureの橋本。ヤフーを超えるものってなんだろうと模索してきました。検索を超える情報の探し方。それはインタフェースとインタラクションに秘密がありそうです。担当授業「リサーチ・アンド・プランニング」で学生と一緒に考えてきた情報のもっとうまい探し方をお話してみたいと思います。
第二部 選ばれるサイトとは何か?
百式管理人はcheck*padシリーズなどの開発に際し、どのようなUIデザインを心がけているでしょうか。参考にした海外サイトの小粋なインターフェースを例示しながら「選ばれるインタラクション・デザイン」の秘訣を探ります。
第三部 情報検索とユビキタスの現場から
予測入力インターフェースのPOBox、超お手軽メーリングリストサービスのQuickML、蔵書の管理が簡単に行える本棚.orgなど、斬新なインタラクション・デザインを革新し続ける増井氏に最新の研究成果をお聞きします。
第四部 認知科学と脳科学の現場から
「クオリア入門」「意識とは何か」「ひらめき脳」「『脳』整理法」など多数の著書を持ち、脳科学者である茂木氏には、彼の最新の研究成果についてお聞きします。
第五部 全体会議
恒例の全体会議では「生活者に選ばれるウェブ」について考えます。今、ウェブに必要なのはどういった要素でしょうか。機能だけではない、「選ばれるウェブ」の特徴について議論します。議論を通じて楽しく交流しましょう。
■ 実施要綱
日付 2006/09/28 (木) 19:30-22:00 (19:15開場)
場所 六本木(詳細は参加確定者に後日お知らせします)
費用 無料
定員 限定100名(先着順)
協賛 Yahoo! JAPAN 検索
備考 全員参加の会議を行います。筆記用具をお持ちください。
※ 注意事項
セキュリティの関係上、今回は20:00以降入場ができませんのでご注意ください!
今回はお申し込みいただいた方のみ入場できます。同伴者は必ずウェブ上でお申し込みの上ご参加ください。
お申し込みいただいていない方の入場をお断りすることがありますのでご了承ください。
なお、ご投稿いただいたアイデアとイベント会議中に出たアイデアは参加者全員に公開されますのでご了承ください。また、参加者が投稿アイデアやイベント内容をブログで公開することもあります。Yahoo! JAPANは投稿アイデアやイベント中に出たアイデアを自由に使用する権利を有します。
■ お申し込み
お申し込みは明日(20日)の午前10時よりこの田口さんのidea×ideaサイト上で開始します。なお、お申し込みの際は事前投稿が必須となります。以下の質問にどうぞ軽い気持ちでお答えください。
Q1. 最近あなたが「使いやすい」「気持ちいい」「イケてる」と思ったサイトのURLを教えてください。
Q2. そのサイトのどこにそういう気持ちを感じましたか?具体的に教えてください。
以上、皆様のご参加をお待ちしております!
・申し込みサイト(20日午前10時から)
http://www.ideaxidea.com/archives/2006/09/post_141.html
面白かったのにレビューを忘れていたPSPのゲーム2作品をまとめて。
■モンスターハンターポータブル
中世RPG世界で恐竜を狩るゲーム。
・MONSTER HUNTER PORTABLE オフィシャルサイト
http://www.capcom.co.jp/monsterhunter/P/
グラフィック満載で紹介する。
何が楽しいかって、とにかく、恐竜の3Dグラフィックが美しい。
ディスカバリーチャンネルの恐竜特集番組や幕張のイベント恐竜博を観て「ああ、こういう恐竜とインタラクションしてみたい」と感じている人には特におすすめ。
武器の調達と体力の回復ができるベースキャンプの村で、村人の依頼(クエスト)を引き受ける。依頼遂行のために、森や草原へ出かけていって、恐竜を狩る。ザコキャラレベルをなぎ倒して、巨大なドラゴンとの決戦。
最初に恐竜(ザコキャラの青いラプトル風)と遭遇したときには、敵だということを忘れて、見入ってしまった。いや、実はこれ、襲ってはこない草食系の恐竜もいるので、戦わないで、モンスターウォッチをするだけでも、結構楽しかったりする。
あまり攻略せずにのんびり楽しんでもいい名作。
・MONSTER HUNTER PORTABLE 2nd
http://www.capcom.co.jp/monsterhunter/P2nd/
60万本以上の大ヒットで続編が予定されている。
やりこみたい人と時間がない人にはデータベース的な攻略本も発売されている。
■スター・ウォーズ バトルフロントII
スターウォーズファンにおすすめ。
ジェダイやシスにもなれるが、帝国軍や反乱軍の一兵卒になれるのが個人的には楽しかった。映画では主要人物によって、あっという間に倒されてしまう各軍のザコ兵士たちにも、それぞれの人生、それぞれの戦争があるわけで、戦闘の片隅で頑張っている、新鮮な気分が味わえる。倒されても、倒されても、別の兵士として復活して出撃することになる。あの宇宙戦争には、無数の兵士の物語があったわけだなあと。戦闘機に乗って出撃するモードもある。
スターウォーズに登場する宇宙船やメカ、キャラクターたちが次々に登場するのが最大の魅力。音楽も映画のままなので、おもいっきりのめりこめる。キャラクターの視点移動の操作が少し複雑、難易度が少し高めという欠点はあるものの、スターウォーズが好きなら満足できる内容。
・スター・ウォーズ バトルフロントII
http://www.japan.ea.com/swbf2/indexFlash.html
オフィシャルサイト
・Star Wars: Welcome to the Official Site
http://www.starwars.com/
・スター・ウォーズの鉄人!
http://www.starwars.jp/
・もしもチェッカーの紹介
http://homepage1.nifty.com/mM/mosimo/mosimo.htm
もしもタバコをやめたら1年でいくらの節約になるのか、1年間で100万円を貯めようと思ったら、毎日幾ら貯金箱に入れるべきなのか。さまざまな「もしも○○したら」の経済効果を、ユーザに教えてくれるソフトウェア。
最初にもしものテーマを選択肢、1日/1週間/1ヶ月/半年/1年/3年/5年/10年/20年/30年のどれかの欄に数字を入力すると計算が行われる。上のサンプル画像は1箱300円のタバコを1日に1箱吸う人用のシミュレーション結果。
もちろん、新しい「もしも」を新規登録することができる。
必要に応じて結果をユニークな「哀願書」、「依頼書」、「宣言書」のフォーマットで印刷することができる。
なお、このソフトは計算結果をCSV形式でプログラムのディレクトリ内に保存しているので、Excelや他のアプリケーションで再利用が可能だ。
・OSPE
http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se356604.html
うっかり作業中のフォルダを閉じてしまって、あれどこだっけ?ということはよく起きる。特にC:\Profram Files\などで始まる深い階層のフォルダだったりすると面倒だ。Windowsには「よく使うファイル」履歴の表示機能はあっても、「よく使うフォルダ」の履歴表示がないので、閉じたフォルダは、どっかにいってしまうのだ。
OSPEは最近開いたフォルダの履歴一覧を表示し、クリックですぐにフォルダを開きなおすことができるユーティリティ。よく使うフォルダを登録しておくこともできる。パス名をクリップボードにコピーすることも可能。
またパス名がわかりにくい特殊フォルダも簡単に一覧から開くことができる。次の特殊フォルダがあらかじめ登録されている。デスクトップ、スタートメニュー、スタートメニューのプログラム、スタートメニューのスタートアップ、お気に入り(上記のすべてのユーザー)フォント、最近使ったファイル、送る、マイドキュメント、プログラムファイル、コモンプログラム、クイックランチャ、ウィンドウズ、システム、テンポラリ。
そしてさらに便利なのは、起動中はエクスプローラなどのアドレス欄をダブルクリックすると、登録フォルダと最近使ったフォルダに移動するための選択メニューが表示されること。わざわざOSPEの画面を呼び出す必要がないのだ。
いつ必要になるかわからない機能なので常駐させて使うのがよさそう。
教育とは、子どもを「社会の成員(大人)としてふさわしい存在」へと育て上げていくこと」であると著者らは定義する。そしてそのふさわしさとは、働いて食べていけるために必要な「技能や知識」、そして「他者との関係能力」を持つことである、という。
だが、現代社会における、ふさわしさを理念化して共有しようとすると難しい。これは二人の教育者が、教育の理想を議論する本である。まず「自由」や「平等」、「市民社会」という現代の「自由な社会」を形作る基本理念がある。個々人の自由と、社会の一員になること、は対立する印象さえある。
かつての「優秀な労働力をつくる」調教としての教育は時代遅れになった。豊かな消費社会の中で「他者を傷つけない限り、自分の快楽と欲望を追求してよい」という考え方が支持されてきた。個人は社会にどう関わっていくべきかという視点が希薄になった。そして「自分を見つめる」心理主義、「個々人の心がけをどうよくするか」徳目主義が、教育理念として偏重されている。
個性的であると同時に社会的であるというのは、こういうことなのではないか?学校教育はこうあるべきだ、という方向へ、二人の議論はまっすぐ向かっていく。前半の、著者の二人の対談の中で「結社の自由」というキーワードがでてくる。これが自由な市民社会と学校教育を結びつける。
「
刈谷 今まで、コミュニケーション能力とか調整能力というときは、すでに集団が存在していて、そのなかでの協調性が言われた。でも今、西さんが言った結社の自由とか新しい集団とかグループを立ち上げたり、つくりあげていく能力というのは自由の基盤になる。それは今まで言われている共同性とか協調性とかとは別の能力ですね。
」
互いに合意をつくりあげルール化し、それを改変していく能力は、現在の日本の教育に欠けている視点だと指摘している。
「
西 そう、それはきわめて本質的な問題ですね。結社の自由があっていろんなゲームが多種多様に存在しうるのも、民主政体によってはじめて確保されるわけだから。経済主体のゲームだけではなく、趣味のサークルのような文化のゲームや、ボランティア活動やNPOに至るまでのさまざまなゲームが花開くのが近代の理想だとすれば、それを根っこで支えているのは、まさに民主主義という「降りてはいけないゲーム」。だとすれば、この降りてはいけないゲームを上手に営むことのできるプレイヤーをどうやってつくるかは、教育の根幹といってもいい。
」
「降りてはいけないゲーム」を次世代にどう教えるか。自分中心で生きていいというだけでは、このメタシステムは継承できない。ゲームのルールの維持や変更の権利を持ちつつ、主体的にプレイヤーとしてゲームに参加していく人間をつくるには?。その方法論として「選び直しの追体験」のすすめがある。
「
次の世代にもう一度選んでほしいと思う、そういう私たち人類が蓄積してきたさまざまな成果を、選びなおしというきっかけを介在させて伝える。すでにあるものをそのまま伝えるのではなく、もう一度、追体験する、選び直す、ということを学校の場でやってみるのだ。
」
日本社会にとっての民主主義というゲームシステムの選び直しということでもある。
この本を読んでいて、「ゲーム」という言葉からの連想で、「オンラインゲーム」って似た部分があるよなと考えた。うまく運営されているゲームには、参加するプレイヤーたちの主体的な決定によって、民主的なルールができあがっている。皆がゲームを気持ちよく楽しむために、何が荒らし行為や詐欺行為にあたるか、何が好ましいか、といったルールが、ゲームシステムとは別にコミュニティ運営のシステムとして、決まっていく。
プレイヤー間には、ゲーム内の職業の違いや、成長レベルの差、ゲームを遊べる時間の差、反射神経や会話能力などの差、保有資産の差など、リアル社会と同じような個性や能力の差が存在している。うまく運営されているパーティは、そうした違いがあっても、皆が楽しめるようなローカルルールが運用されている。本当はリアルな教育の場にこそ、そうした個性と社会性のバランスを学ぶゲームが必要なのではないかと思った。
個性とは何か?、わかるとできるの違いは?、学校は何をすべきか?などの各論も深い内容が多く勉強になった。知識や技能を与えるだけでなく、この本の形式のように、個人や社会はどうあるべきかを、考えあう教育が必要なのである。
出版社の紹介文を引用。
「
自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春 の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々 がたどった数奇で皮肉な運命に......。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく――英米で絶賛の嵐を巻き起こし、代表作『日の名残り』を凌駕する評されたイシグロ文学の最高到達点
」
「施設」で暮らすキャシー、トミー、ルースの生活は、一見のんびりした普通の子ども時代のようで、なにか様子が違うのである。彼らには知らされていないことがあるのだ。施設は何のために作られ、なぜ彼らはそこで育てられるのか。
彼らも読者も同じように、知らされることを集めて、知らされないことを漠然と想像して自分なりの理解を得る。物語は少女キャシーの視点で語られるので、終盤までその想像が本当なのかどうかはわからない。
全てを知るものの目で見れば、そうした想像は他愛もない空想に過ぎないかもしれない。だが本人達にとっては、生きていく上で、それが精一杯の手にした真実だ。隠されている残酷な現実をはっきりとは知らされないまま、大人になる子供たち。それは、キャシーたちだけではなく、私達自身の人生の普遍を描いているような気がする。
日系の英国人作家カズオ・イシグロの名を世界的に知らしめた「日の名残り」(ブッカー賞受賞作)の深み、格調のある文体と緻密な構成力が、この作品でも活かされ、単なる奇談に終わらせない。多様な解釈の道を読者に開いている寓話、という読後感。
人は少しずつ世界を知る。そして十分に知ったつもりになる。本当は何も知らないのに。知ったからといって変えられない運命は使命として引き受ける潔さ。そういう人の生き方を問うのが、著者の意図かなとまず思ったが、まったく異なる読み方が何通りもできる小説でもある。違う読み方なら違うメッセージを読める。
読んだ人と語り合ってみたい小説である。
この作品は発表直後に雑誌「タイム」が選ぶ1923年から2005年の約80年分の作品を対象にしたオールタイムベスト100に選ばれた。ニューヨークタイムズ他で2005年度ベストブックに選ばれる。邦訳は2006年の春で、日本でもどこかで今年の年間ベストに入りそうな予感である。
科学史において重要な役割を担った実験のうち、「美しさ」を基準に10個を取り上げて解説する。
・エラトステネスの地球の外周の長さを求める実験
・ガリレオがピサの斜塔で落下の法則を確認した実験
・ガリレオが慣性の法則を確認した実験
・ニュートンがプリズムで確認した光の分散の実験
・キャヴェンディッシュの万有引力定数を求める実験
・ヤングの光の干渉に関する実験
・フーコーの振り子による地球自転を確認する実験
・ミリカンが電気素量を求めた油滴実験
・ラザフォードが原子核を発見したα線の散乱実験
・ファインマンの量子力学に関する2重スリットの思考実験。
著者は雑誌「フィジックス・ワールド」で読者に、一番美しいと思う実験を挙げてくれるように頼んだ。300以上の実験が読者から推薦され、その中でも最も数が多かった10件が上のリストである。
著者は美しい実験が持つ要素を次のように定義した。
・深いこと
結果が基本的であること
・効率的であること
各部が経済的に組み合わされていること
・決定的であること
結果として生じるのは実験にではなく、世界や理論へ、の疑いであること
「
美しい実験は、自然について深い事柄を明らかにし、しかも世界に関するわれわれの知識を塗り替えるようなかたちでそれを成し遂げる。
」
19世紀の物理学者マイケル・ファラデーはロウソクは美しいと言った。
「
ファラデーにとってロウソクが美しいのは、その機能がいくつもの普遍法則の上に、エレガントかつ効率的に成り立っているからだった。炎の熱はロウを溶かすが、その一方で上昇気流を生み出し、縁のほうのロウを冷ます。その結果として、融けたロウを溜めておくカップ状のものができる。そのカップの中で、ロウの表面は水平に保たれる。なぜなら、そこには「地球をひとまとまりにしているのと同じ重力」が働いているからだ。融けたロウは毛管現象によって、芯の根元のところにあるカップから上部の炎のところまで引き上げられる。一方、炎の熱のためにロウの中で化学反応が起こり、炎が燃え続ける。ロウソクの美しさは、ロウソクが依って立つ科学法則の入り組んだ働きと、法則同士を結び合わせる効率の高さにこそある、とファラデーは言うのである。
」
影の長さを測る、重いものと軽いものを同時に落として同時に落ちることを確認する、長いロープの先に錘をつけて垂らす。そんな簡単な実験をするだけで、地球の大きさや、物体の運動法則、地球の自転といった根源的なことがわかってしまう。
数式の美しさはよく言われることだが、一方、失敗や誤差も生じる実験は、美しくないものとされてきたと思う。著者はこうした風潮に対して、優れた実験は本当は美しいのだと、歴史上の傑作を例示して、説明して見せた。
核戦争、巨大隕石の衝突、インフルエンザ・パンデミック、気候の大変動、環境破壊、ナノテクノロジーの暴走など世界の終焉を科学する本。
「地球最後の日」を29通りのシナリオで描いている。
それぞれのシナリオで、
・いったい何が起きるか?
・それは過去に発生したことがあるか?
・それは現実に起こりうるか?
を分析する。
そして、発生する可能性、起きた場合のダメージ、危険度を10段階で評価している。29のシナリオは、科学技術の叛乱、戦火の火種、生態系の断末魔、気候の大変動、不測の天変地異の5つの章に分類されている。
この本の「世界の終焉」とは現代文明や、人類という種が回復不能なダメージを受けて、滅亡してしまう全滅状態を指す。新型インフルエンザの大流行や核戦争が起きる可能性はそれなりに高いし、数千万人や数億人の犠牲が発生するかもしれないのだが、全滅とまではいかないようだ。
これに対して、小惑星の衝突や、粒子加速器の実験の暴走によるブラックホールの生成などは全滅の可能性が高いが、発生する確率が極めて低い。また起きてしまった場合の対策手段もほとんどないに等しい。あまり心配しても意味がなさそうである。
世界の終焉シナリオには、自然が引き起こすものと、人間が引き起こすものがあるが、前者で危険性が高いのは「超火山の爆発」であった。地球の歴史上、最後の超火山の噴火は7万3500年前に起きており、3000〜6000立方キロメートルの噴出物が大気圏に吹き上げられ、太陽光の99%を6年間に渡って遮断した。この時期の人類はほとんどが死亡して、わずか数千人が生き延びることができたらしい。有名な場所としては、米国イエローストーン国立公園の火山が超火山にあたり、65万年周期で爆発している。そしてちょうど我々の生きている時代が前回から数えて65万年後にあたるという。
人為的な終焉として危険性が高いのは、環境汚染と生態系の破壊による、いくつかのシナリオである。実際、人類の歴史上、多数の文明がこうした原因で滅亡してきた。「大量消費と資本主義的な生活様式」が地球規模の持続可能性を破壊する最大の脅威であり、それに対しては、できることがあるはずだと著者は結論している。
世界の終わりを現実的に、科学的に考えるユニークな内容。
・文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004210.html
・文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004218.html
・感染症は世界史を動かす
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004403.html
・インフルエンザ危機(クライシス)
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004247.html
・ブログスフィア アメリカ企業を変えた100人のブロガーたち
マイクロソフトの企業イメージをブログで変えた男ロバート・スコーブルらによる、企業ブログ論。
マイクロソフトは、オフィシャルな形で、
・Channel 9
http://channel9.msdn.com/
を運営している。
このサイトでは、マイクソフトのエンジニアが、自発的に情報を発信している。映像ブログに顔を見せて読者に話しかける。ユーザとの間に活発な意見交換が行われている。かつて独占的な「悪の帝国」と揶揄されて、ことあるごとに、ネットユーザから袋叩きにされていた頃のマイクロソフトとはかなり印象が違ってきている。
こうしたイメージチェンジを実現したのが、この本の著者であり、1日に50回もブログを更新する情熱家スコーブルをはじめとする、技術系社員のブロガーであった。
チャンネル9という名前の由来はユナイテッド航空の機内放送にあるそうだ。空きチャンネルの9を使って、フライトの最中にパイロットの声を流している。「パイロットの様子を知れば知るほど、一蓮托生なんだとわかった。マイクロソフトに対する人々の怖れを解消する手段について、これ以上のメタファーは思いつかないね」と技術エバンジェリストのレン・プライアーは考えた。
原題は「裸の対話」。企業と顧客が飾らない言葉で、率直に意見を交換すること。その対話によって、マス広告には不可能だった、理想的なパブリックリレーションズを実現できるという。100人以上の企業のブロガーの実例を取り上げて、ここ数年の欧米のブログ事情を総括する。
企業ブログの「成功の5つのヒント」
・語れ、売り込むな
・頻繁に投稿し、面白いものを書け
・興味のあることについて書け
・ブログは費用の節約になるが時間がかかる
・人の話に耳を傾けよ
著者は、情熱的で、正統的(=誠実に)語りかけることが大切だと繰り返し説く。これは人と人との対話の基本ルールなのでもある。従来のマス広告と異なるのは、どれだけ多くの人数に読まれるか、ではなく、誰に読まれるか、こそ重要な点。
「
ニッチに影響を与えるのに、大勢の信奉者を得る必要はない。例えば、あなたが政治についてのブログを持っていたとする。読者はわずか3人だ。そして彼らが、たまたま米国、中国、ロシアの政府高官で、あなたのブログから影響を受けていたとする。これ以上、読者を得る必要がどこにあるだろう?
」
ブロードキャスト型から会話型へ。情熱的に話しかける企業ブロガーと、情熱的に答える上顧客の対話のログにこそ、企業や商品の魅力が効果的に映し出される。そのためには、企業としてではなく、企業に所属する個人が「顔」を持つ必要があるようだ。
欧米の企業ブログを知る、たいへん面白い本である。
・WinDirStat - Windows Directory Statistics
http://windirstat.info/
ハードディスクの使用状況を分析するツール。
画面上部では、ディレクトリ単位でファイルの数や下位ディレクトリ数、そして合計サイズなどを表示する。容量順で並ぶので、肥大したディレクトリを発見するのに役立つ。
特徴的なグラフを表示する画面下部。ここでは、ファイルの種別(拡張子別)を色で、ファイルのサイズを面積で、ディレクトリを位置でグルーピングする。見慣れない画面だが、一度、見方がわかるととても便利だ。
上のサンプル画像の私のマシンの場合は、映像ファイル(MPEG)がハードディスクの大部分を占有していることがわかった。次に多いのがログファイル(log)だった。
前者は、テレビ録画したファイルを削除していないから。(注、変な映像を蓄積しているわけではない。)。後者はWebサーバのアクセスログを分析するためダウンロードしてあるから。ログのことは作業がとっくに終わっているのに忘れていた。これを削除して容量を空けよう。
・ハードディスク容量不足の解決支援Overdisk
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002305.html
・ロゴ・イラスト系ビットマップ画像の拡大処理ツール『MugenViewer』
http://www.noids.net/mugen/
驚きの効果がある。
MugenViewerはグラデーションを含むロゴ、イラスト等のビットマップ画像を、独自のアルゴリズムで、無限に滑らかに拡大表示できるツールである。ビットマップ画像は拡大するとぼやけてしまう。そもそもオリジナル画像に情報がないからだ。MugenViewerはその細部を自動的に、適当に補完する。あたかもベクター画像であるかのように、文字やイラストの輪郭をなめらかに表示する。
たとえばこんな画像がある。
これを4倍に拡大すると、普通はこんな感じに輪郭がぼやけてしまう。
これに対して、MugenViewerで拡大すると下ようのようになる。
拡大率が上がれば上がるほど、二つの違いは顕著になっていく。
一般的な画像アプリに実装されているバイキュービック法とも歴然とした違いがある。
・i d e a * i d e a - 海外で続々登場するJob Boardって何だ?
http://www.ideaxidea.com/archives/2006/09/job_board.html
百式の田口さんが面白いことを始めました。
ブログで求人する掲示板です。
ブログ上での求人は米国で流行っているらしい。確かに最近、ブログが縁で転職した人が私の周囲にも何人かいるのです。日本でもいけそうですね。
・テクノロジーとアイディアが好きな人のための求人情報 百式 - JOB BOARD
http://www.100shiki.com/jobs/
私の会社も求人を出してみました。
百式 - JOB BOARD - 検索技術に興味のある開発アシスタント募集!
http://www.100shiki.com/jobs/detail.php?id=14
雑誌ダカーポの「眠れないほど面白い本」特集号で恋愛小説第一位で絶賛されていたので、姫野 カオルコ、はじめて読んでみた。いい。とても良かった。
「忘れられなかった。どんなに忘れようとしても、ずっと」
これはリアルで純粋な恋愛の話だ。14歳の少女が新任の若い教師と恋に落ちる。主人公はすこし大人びているけれど、中学生である。じゃあドラマ「高校教師」みたいかというと、違う。ひたすらに燃え上がって心中してしまうような綺麗なだけのファンタジーではない。
舞台は関西のどこか田舎の、これといって特徴のない場所。ストーリーは主人公の小学生時代から始まる。女子グループの初歩的な派閥形成と心理葛藤。好きな男子は誰かを白状させ告白するゲームと、秘密の交換日記。横浜からやってきた都会の香りの転入生。相合傘の落書き騒動。
原稿用紙950枚の長編小説だが、最初の3分の1はそんな具合で、肝心の二人の話は主人公が14歳になるまで、一向に始まらないので恋愛小説だと思って読み始めた読者はやきもきさせられるが、作者は、主人公の森本隼子が少女からオンナになるまでの形成過程をゼロから読ませたかったのだと思う。その仕掛けは成功している。
無垢ではないが、スレてもいない。細いけれど自分なりの芯を持って、現実的な捉え方をする女の子。主人公の生い立ちをなぞるうちに、自然に彼女の等身の姿に読者はなじんでいく。そんな頃合いに男性教師は赴任してくる。長い前戯としての前置き。そこから恋愛物語の本編が始まる。
エロチックで淫らな小説でもある。セックス描写そのものよりも、人目を忍んでまさぐりあうような抑制されたシーンの記述がなまめかしい。ツ・イ・ラ・クする男と女。それを取り巻く複雑な人間模様。敢えて前半を冗長に描いただけあって、登場人物に存在感があり、魅力的に感じられる小説だ。
これ以上は内容について書かない。
少年少女時代のの心理を少し突き放して、大人の視点からナナメに総括する作者の文体が、物語の進行にうまいアクセントを効かせている。所詮は若い頃の恋愛なんて、と構えて話すようでいて、帯にあるような「心とからだを揺さぶる一生に一度の恋」を書き上げているのが、うまいと思う。
・ソニーコンピュータサイエンス研究所 茂木健一郎博士監修 脳に快感 アハ体験!
脳科学者で文筆家の茂木健一郎氏が監修したPSP用のゲーム。脳に快感を与え、活性化するアハ!体験が味わえる。茂木健一郎氏が案内キャラとして登場する。茂木ファンは必見なゲームといえる。
アハ!体験とは何か?
・脳に快感 みんなでアハ体験!
http://aha.sega.jp/
オフィシャルサイトの説明を引用してみる。
「アハ!体験(aha! experience)は、「わかったぞ」という体験を表す言葉として、英語圏では広く使われているとともに、人間の脳の不思議な能力を表すキーワードとして、最先端の脳科学で注目されています。
普段の言葉で表せば、「ひらめき」や「創造性」とでも名付けられるような脳のはたらきが、アハ!体験なのです。」
「
たとえば、偶然新聞で目にした情報で、長年の疑問が解ける。
テレビ番組で出されたナゾナゾの答えが、電車に乗っていて突然わかる。
知人が、誰かに似ているなあ、とずっと思っていたが、誰に似ているのか突然わかる。
」
こうした体験をすると脳にドーパミンが分泌され、強化学習と呼ばれる脳の再編成が起こりやすくなるそうである。
さて、ゲーム内容だが、要するに、間違い探しである。
2枚の画像が瞬時に入れ替わって、違いを指摘するアハチェンジ。静止画像がゆっくりと変化するのでその違いを指摘するアハムービー。そして、短編の映像を観てその間違い(前のカットでは赤のマフラーだったのに、次のカットでは青になっていた、など9を指摘するアハカット。
映像の矛盾を指摘するアハカットは難しかったが楽しい。映画ファンの中には、カットの前後で、登場人物がコップを持つ手が左右入れ替わっているなんていう細かい粗探しが趣味の人がいるが、そういう人は特に楽しめる、だろう。できたときの爽快感、頭のスポーツゲーム。
電車でひたすら遊んでいたのだが、額に汗を書いてしまった。3種のゲームともに頭をかなり使う。ドーパミン、出ているだろうか?
・ 「脳」整理法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003795.html
・脳と創造性 「この私」というクオリアへ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003268.html
・脳の中の小さな神々
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001921.html
・脳内現象
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001847.html
・脳と仮想
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002238.html
・意識とはなにか―「私」を生成する脳
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000561.html
これは凄い小説だ。第19回(本年度)山本周五郎賞受賞作品。
「二位殿やがていだき奉り、「浪のしたにも都のさぶらふぞ」となぐさめたてまつって、千尋の底へぞ入給ふ」(平家物語)。1185年、壇ノ浦の戦いで敗北が確実になった平家軍の船の上から、祖母の平時子に抱かれて、8歳の安徳天皇は三種の神器とともに、海に身を投げて崩御した。
平家の滅亡から二十年の歳月が流れて、源頼朝の息子で12歳の少年、源実朝は鎌倉幕府の第三代征夷大将軍に就任していた。この物語は、安徳天皇と源実朝の二人の少年を軸にしてすすんでいく歴史ファンタジーである。第二部のマルコポーロ編では、物語は海を越え、元帝国クビライ・カーンをも巻き込んだ世界スケールへと発展していく。
諸星大二郎的な、日本神話ベースのおどろおどろしいイメージが好きな人にはたまらない作品である。歴史の波を漂う安徳天皇の魂が、同じく滅ぼされるものたちの魂と呼応して、幻想的なドラマを織り成す。
これは日本神話と平家物語と東方見聞録の壮大なリミックスといえる。深く味わうには、古事記と平家物語が予備知識としてあったほうがよいが、原典を読むのが面倒であれば、諸星大二郎の漫画「海竜祭の夜」がおすすめ。祟る神としての安徳天皇がでている。
歴史系、SF系の小説が好きで、まだ読んでいないなら、強い自信を持っておすすめ。
・古事記講義
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003755.html
HDDレコーダーを使って録画して視聴するユーザが増えるとCMが見られなくなってしまうと、いうテレビ局の不安があるようです。
しかし、先日、そんな不安を吹き消すような「飛ばしたくないCM」を見つけました。続編があるならば検索して探したいようなCMです。
8月28日のCMの日に、JNN系列でオンエアされたドラマ番組「メッセージ」。
主人公はCMディレクターで「嘘のないCM」づくりを目指す青年です。この放送の中で、番組スポンサーの資生堂が流した1分間の企業広告「新しい私になって」編。企業のイメージ広告ですが1分間画面の前に釘付けになりました。
・資生堂 テレビCMの日スペシャル ドラマ「メッセージ」
http://www.shiseido.co.jp/tsugiyama/
このページの画面の一番下の方の「新しい私になって」編のテキストリンクをクリックすると映像が再生されます。
ネットでもこのCMは大きな話題になり「誰が歌っているの?」「あのモデルは誰?」という声が殺到したようです。私も歌が気になったので、調べてみたところ、歌っているのは熊木杏里という歌手でした。まだこのCMの歌はCDリリースされていないようですが、過去のCDを購入しました。
心に染みとおるような声とまっすぐな歌詞のフォークシンガー。森田童子の声と中島みゆきの詩を足して2で割って、少し明るめにしたような雰囲気。言葉が素直に心に入ってくる歌でいっぱいでした。
冒頭の「長い話」から、いきなり詩の世界観に引き込まれます。何かになりたいと思うけれど、何者にもなれないんじゃないかという、若い頃の不安が「無から出た錆」の基調テーマなのかなと思います。切ないです。
フォークソング好きには絶対のおすすめ。
・『熊木杏里』 SPECIAL INTERVIEW
http://www.hotexpress.co.jp/interview/kumakianri5/
・熊木杏里公式blog 〜hotexpressで綴る言葉たち〜
http://kumaki-anri.hotexpress.co.jp//2006_08/82.html
歴史的にも、資生堂はこだわりのある上質なCMを作ってきましたが、この映像作品は、CMスキップの技術に対する、とても効果的な業界からの反論だと思いました。観たいCMって実際あるよ、たとえばコレ、と思いました。
#このCM及び歌手の情報は妻から得ました(ブログに書くのなら情報ソースを書けと言われました。なんの意味があるのかわからないのですが、家庭円満のために付記しておきます)。
ベストセラー「Web進化論」のシリコンバレーの投資家 梅田 望夫氏1996年から2001年までに書いたコラムをまとめた書籍の文庫化。当然、時事テーマについての記述内容は古いわけだが、シリコンバレー文化とは何かという本質を語る部分は今も変わっていないのではないかと思う。
日本のベンチャーには「借金型」「爺殺し型」「若きスーパースター型」「シリコンバレー型」の4つがあるが、シリコンバレー型は少ないと著者は2000年ごろのコラムで嘆いた。才能のある起業家がベンチャーキャピタルやエンジェルの投資を受けて、借金することなしに、上場して大成功したり、失敗して解散できるタイプのベンチャーのことである。
シリコンバレーのそうした起業家たちには特有の精神文化がある。
「
限られた情報と限られた能力で、限られた時間内に拙いながらも何かを判断しつづけ、 その判断に基づいてリスクをとって行動する。行動することで新しい情報が生まれる。 行動する者同士でそれらの情報が連鎖し、未来が創造される。行動する者がいなければ生まれなかったはずの未来である。未来志向の行動の連鎖が引き起こす核となる精神。それが「シリコンバレー精神」である。
」
梅田氏のシリコンバレー精神で素敵だなと思うことに「価値を生み出すのは会社ではなくて個人」という考え方がある。梅田氏がシリコンバレーになじみ始めた頃のコラムから引用してみる。
「
シリコンバレーに慣れて、いわゆるインサイダー達の集まりに出席するようになって、驚いたのは、胸に付けるバッジに大きな字でファーストネームだけが書かれ、ほとんど見えないくらい小さな字でしか姓と会社名が書かれていないことだった。<中略>相手は「お前は何をやっているのか」「お前のアイデアはなんだ」「お前の価値は何だ」「お前は今まで何をしてきて、これから何をするのか」、先を急ぐように、私という「個人」を引っ張り出そうとする
」
組織の名刺に頼らない生き方をする人には、覚悟と知恵があるから、強い。その強さの集積がシリコンバレー急成長の原動力なのだと思った。この本で著者は、自身が会社を辞めて米国で独立起業した頃の心境の変化を何度も語っている。
「ああそうか、ここで生きていくためには、私「個人」の「個人としてのストーリー」が必要なのか。」
何度かお会いしたことがある(一度はシリコンバレーで!)梅田さんは私より10歳年上で創業10年目。私は創業6年目である。ちょうど私の今の年齢で、梅田さんは起業している計算だ。それをこの本で知って、よーし、私もやってやるぞと決意を新たにできた。
アメリカのテレビドラマとして史上最多のエミー賞11部門、ゴールデン・グローブ賞5部門受賞した作品。原作はトニー賞、ピュリツアー賞を受賞。戯曲としても高い評価を得た。アル・パチーノ、メリル・ストリープ、エマ・トンプソンとハリウッドの超大物たちが出演する。6話で完結。
登場人物のほとんどが「ノーマル」ではない。性同一性障害、エイズ患者、薬物依存など精神的な重い問題を抱えている。同時に彼らはゲイ、ユダヤ人、黒人、モルモン教徒という社会的マイノリティの苦しみを背負って生きている。
恋人に捨てられ、希望を失ったゲイのエイズ患者の前に、空を割って、アメリカの天使が舞い降りる。天使も救いをもたらす存在ではなく、意味深な謎のメッセージを残すだけであり、ドラマにさらなるカオスを引き入れる。
しだいに登場人物たちの関係が錯綜し、事態は一層複雑で泥沼化していく。出口が見えなくなる。しかし、どうにもならなくても、人は生きていかねばならない。彼らもアメリカも前へ進まなければならない。
全体としては、病んだ80年代アメリカ社会の再生がテーマである。荒唐無稽なストーリーだが、存在感のある俳優陣に支えられて、ストーリーに引き込まれる。娯楽性、芸術性、社会性どれも一級。
・WowWow エンジェルス イン アメリカ
http://www.wowow.co.jp/angels/contents.html
海外テレビドラマとしてバンド・オブ。ブラザーズに続いて大当たりだった。
・バンド・オブ・ブラザース
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003885.html
・Microsoft Codename Max
http://www.microsoft.com/Max/
「Microsoft Max」というすごいネーミング(コードネームらしい)のベータ版。
機能としては、
・写真付きのニュースが読める
・ローカルの写真や画像を2Dあるいは3Dアルバム化、スライドショウ化できる
・作ったアルバムをユーザ同士でネットで共有する
・写真に手書きのメッセージを書き込んで共有できる
である。
・Microsoft Codename Max - Gallery
http://www.microsoft.com/Max/jsgallery.asp
スクリーンショットのギャラリー。VISTAを意識した美しいデザイン。
写真アルバム+コミュニケーション機能という組み合わせは、GoogleのPicasaの対抗馬といえるだろう。クリックで任意の写真を拡大できるインタラクティブなアルバム表示は、多数の写真をスライドショーで眺める際に便利である。独特の「3D Mantle View」モードも楽しい。
ユーザ同士の共有にはMicrosoftパスポートのIDが必要。共有したい相手のIDをリストに設定しておけば、見つけてもらえる。FlickrのようなWeb上での写真共有サービスとは使い勝手が一味違うアルバム単位での交換アプリケーション。これも結構いいかもと思った。
将来的にはインスタントメッセンジャーから、簡単に使えるようになるのかな。