「脱日」する韓国―隣国が日本を捨てる日
「韓国ではもはや「反日」は時代遅れである」
毎日新聞ソウル支局に1999年から2004年まで勤務したジャーナリストの本である。著者は学生時代にも韓国留学しているが、10年を経ての韓国は「まるで別の国に来たのだろうか」と思わせるほど変化していたそうである。
経済復興を成し遂げて自信を持った21世紀の韓国。かつての「反日」は日本が経済的に先を行く特別な国であるという前提があった。ところが経済的に追いついて、日本は特別ではなくなり、むしろ、外国の一つ程度の意識になった。ある意味、日本はどうでもよくなった。
メディアが報じる「日の丸を燃やす人々」は一般の韓国人の感情を代表するものではないという。現在の韓国人が意識しているのは日本ではなく、米国であり、反米、嫌米の割合が急速に高まってきているそうだ。メディア報道の見方、各種統計データの読み方が勉強になる。
私は韓国は詳しくないのだが、最近の韓国の映画の素晴らしさに感動している。アイドル中心のTVドラマ韓流ブームは別に、まっとうな映画のクリエイティビティという点で、もはや日本映画を超えている気がするのだ。少なくとも私にとっては、映画のMade in Koreaはブランドである。韓国の方がハリウッドに近い。
たとえばこの4作を観てみたらわかってくれる人もいそうに思う。
・イルマーレ
「韓国発、手紙がとりなす、切なくて忘れられないラブストーリー。主演は「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョン。さとう瑞緒が吹き替えを担当。」
・シルミド
「1968年4月、死刑囚ら31人の重犯罪者たちが無人島のシルミ島に送られた。そこで彼らは刑の帳消しと引き換えに、北朝鮮の最高指導者・金日成の暗殺を命じられ、極秘の暗殺部隊へと成長していく。だが政府の外交政策の転換で暗殺計画は中止。しかも政府はこの部隊の抹殺を軍に命じるのだった…。」
これらの作品を見て、共感感動すると同時に、微妙な感性の違い、社会構造の違いも意識することになる。高いクリエイティビティに触れて自然に韓国って凄いなとレスペクトの念がわいてきた。
政治や歴史に関心が薄い「若い世代」の話がこの本にも出てくる。日本の若い世代も同じである。儒教文化の韓国においては過去の清算なくして未来の対話がありえない、という前提が崩れつつあるのかもしれない。「正しい歴史認識」の話を解決するために、まずは文化交流が突破口になるのではないかと感じた。
北朝鮮をどう見ているか、南北統一の現実感はどの程度か、など国際関係の理解に参考になる情報も面白い本だ。