老ヴォールの惑星
「偵察機の墜落により、おれは惑星パラーザの海に着水した。だが、救援要請は徒労に終わる。陸地を持たず、夜が訪れない表面積8億平方キロの海原で、自らの位置を特定する術はなかったのだ―通信機の対話だけを頼りに、無人の海を生き抜いた男の生涯「漂った男」、ホット・ジュピターに暮らす特異な知性体の生態を描き、SFマガジン読者賞を受賞した表題作ほか、環境と主体の相克を描破した4篇を収録。著者初の作品集。 」
表題作は「SFが読みたい!」誌の2006年版 年間ベストSF 国内編で、堂々第1位の作品。その他に3つの短編が収録されている。4作ともひたすら素晴らしいハードSF。SF好きでまだ読んでいなければ絶対のおすすめ。
読後感はテッド・チャンの短編集「あなたの人生の物語」と似ている。どちらも現代SF最高レベルの出来だが、あちらが「神の不在」がテーマだったとすると、こちらは「人間の絆」がテーマといえそう。だから、こちらの方が少し明るく希望がある印象。もともと日本語だから読みやすい。
4作を私の個人的な主観で順位付けしてみた。
1位 「ギャルナフカの迷宮」
2位 「老ヴォ-ルの惑星」
3位 「漂った男」
4位 「幸せになる箱庭」
といった感じ。
オリジナリティの豊かな作品だが「ギャルナフカの迷宮」「幸せになる箱庭」はそれぞれ
・CUBE
あたりにインスパイアされたのかなと感じた。
小川 一水という作家、2004年度に星雲賞日本長編部門も受賞しているが、今後の作品がとても楽しみ。
いつも拝見してますが、今回はつい反応してしまいました。
小川一水氏は日本のSF小説界がへタレてる中で、がんばってる作家さんです。性善説キャラばっかで作り込みが弱いとか、ストーリーの展開が見えすぎるとか、まだ物足りなさは感じるのですが、設定立ちという点でがんばっているかと。特にこの短編集は彼がいかにいろいろなスタイルに挑戦しているかがわかります。
さらに、これからに期待したいところです。