かけひきの科学―情報をいかに使うか
情報をいかに扱うかについての軽めのエッセイ集。”かけひき”については実は内容が少ない。情報とは何か、考察がある。
気になった部分を抜書き。
・冗長性
日本語の一般的な会話における冗長な言葉(それがなくても意味が伝わる言葉)は42%もあるそうだ。しかし、この冗長度はうまく使うと、情報を伝える媒介となる。
「講義の上手な先生の話には、じつは冗長な言葉がいっぱい入っている。しかもあちらこちらに余分な話が入っている。講義の内容はだいたいわかる。つまり、私たちが相手にメッセージを送るときに重要なのは、冗長度のサジ加減なのである」。「セールストークであまり冗長度が少ないと、どういう商品かがわからないし、だいいち客はとっつきにくいから、とたんに購買意欲が失せる」。
確かに、電報や業務連絡のような冗長性がないメッセージは、文脈を完全に共有した人以外では伝えるのが難しい。
・現状維持の仮説
「現状は維持される」という仮説は結構当たる。たとえば今日の天気が晴れなら明日も晴れ、雨なら雨というように、「今日と同じ」仮説の的中率は年間60%だそうである。同じ天気が2日続いたら3日目も同じとする「傾向が維持される」仮説は東京だと70%近くなるらしい。冬場に3日間寒い日が続くと4日間暖かい日が続く三寒四温の「周期性がある仮説」もかなり当たる。
これと同様に、市場に投入される製品にも規則性がある場合が多く、各社の製品に基本的な型がn種類あって、型ごとにランク付けがされていて、製品同士が競合関係にある電化製品の市場などでは、過去の新製品出荷のペースを調べれば、将来の新製品の型や販売時期、価格までかなりの精度で予想できると著者は述べている。最近では、携帯電話やパソコン、テレビではこうした予測が成り立ちそうである。
・二つの知性
米国のエイジング研究によると、人間には二つの発達する知能がある。
フルーイド・インテリジェンス 流動性知能
柔らかいひらめきや創造する能力 10代後半から20代でピーク
クリスタル・インテリジェンス 結晶性知能
長い間の経験や学習によって培われる総合判断力 30代からゆっくり上昇
前者が創造力で後者が経験則といえる。年齢を重ねるに従い、驚きが減って好奇心が弱くなる。若いときに創造力を発揮しておかないと経験則にならない。達成したことの感動が次のステップの努力につながる。