ビッグバン宇宙論 (上)(下)
世界最高のサイエンスライター、サイモン・シンの邦訳最新刊。
・フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004192.html
・暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004028.html
上記2冊に次ぐ3冊目である。訳者も同じ青木 薫。前2作はウルトラ級の傑作であり、科学の本なのに目頭が熱くなる体験をした。知識と感動の科学本を生み出すコンビであるから、期待は高まる。予約して発売日に入手した。
世界の神話や聖書の宇宙創造物語から始まって、天動説と地動説、コペルニクスとガリレオ、ニュートンとアインシュタイン、ビッグバン宇宙と静的な宇宙、ビッグバン宇宙と定常宇宙など、ビッグバン宇宙論が科学の世界で確立されるまでの長い歴史を丁寧に追っていく。人間ドラマと学説のわかりやすいサマリーがあるので、難解なテーマも易しく読める。
ビッグバンをめぐる最大の議論は、
「宇宙は過去のある時点で創造されたのか、それとも、永遠の過去から存在していたのか?」
ということであった。始まりがあったということを証明するためには20世紀をまるごと必要とした。宇宙の始まりを証明するという途方もない仕事が、いかにして為されたかを知るためには、アインシュタインの相対性理論その他の理解が必要になる。上巻は20世紀の物理学を振り返り、ビッグバン大論争の理解の準備にあてられている。
この本が扱うのはCMB背景放射の発見(1960年代)と、放射の微小なゆらぎの発見(1992)によって、ビッグバン・モデルが大枠として正しいと確定されるところで終わっている。それ以降の最新理論は出てこない。また科学史や宇宙論が好きな人にとっては、既知の事柄が多いため、フェルマーや暗号のときのようなドキドキは少ない。
あとがきでも訳者が、この本を評して、「エース投手」による「直球ど真ん中」で「王道」の切り口の本と書いている。難解な事柄が絶妙に要約され、わかりやすく頭に入ってきて整理される感覚は相変わらず。宇宙論の入門として傑作であると思う。
・ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002797.html
・はじめての“超ひも理論”―宇宙・力・時間の謎を解く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004230.html
・ホーキング、宇宙のすべてを語る
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004047.html
・奇想、宇宙をゆく―最先端物理学12の物語
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003562.html
・科学者は妄想する
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003473.html
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