戦争を演じた神々たち(全)
「
破壊する創造者、堕落した王妃、不死の恐竜伯爵、男から女への進化、完全なる神話学的生態系、等々。生命をめぐるグロテスクで寓意に満ちたイメージが、幻視者、大原まり子のゴージャスかつシンプルな文体で、見えざる逆説と循環の物語として紡ぎあげられた。現代SF史上もっとも美しくもっとも禍々しい創造と破壊の神話群。第15回日本SF大賞受賞作とその続篇を、著者自ら再編成しておくる、華麗で残酷な幻惑の輪舞。
」
「地域情報化 認識と設計」の書評を書いたら、小橋さんからお礼のメールをもらった。彼もSF好きなので、末尾にこの小説を薦めるコメントがあった。即購入してみた。大正解。これは面白かった。表紙がライトノベル風なので、薦めてもらわなかったら出会えなかったであろう名作を発掘できた。
独特な宇宙観、世界観の中で荒唐無稽な神々が暴れる。死と再生、創造と破壊、循環する神話の時間、女性的なるものなど、どの作品も激烈なイメージに魅了される。ここではファンタジックなストーリーは強烈なイメージを創りだすための道具として機能している。そのイメージは私たちの中の原体験や宿業と呼応して、著者の異世界の奥へと引きずり込もうとする。まさに神話的な物語。
各作品は独立しているが、共通した設定もあって、続けて読むことで、いっそう引き込まれやすくなっている。このブログで紹介しているグレッグイーガン系とは違って、難解な宇宙論や量子論はでてこないので、ハードSFは苦手という人にも物語系としておすすめできる。
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