滅びゆく国家 日本はどこへ向かうのか
立花隆の日経BPサイトの大人気の連載を書籍化した一冊。
・立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/
この連載は毎回かなりの長文なので紙の方が読みやすくなった。
小泉改革、天皇制、新憲法、中国問題、防衛問題、ライブドア事件、耐震構造偽装事件など、時事問題に対して果敢にリアルタイムに論評を加えていく。各テーマについて調べる時間は少なかったはずである。
総選挙前の自民大敗の予想は見事にはずれたし、IT業界についてはよくご存知でないのかもと感じる論評もあるのだけれど「立花隆だったらどう考えるか」がこの本の読みどころなのだと思う。
不完全な情報の断片から、想像力を発揮して、物事の本質らしきものを構成していく。それが事実や真実とは違っていても、それなりの説得力を持つ文章としてアウトプットする。時事問題へのコメントだから一層、立花隆のモノの見方、思考法がこの本から見えてくる気がした。
著者は幅広い分野で本を書き「知の巨人」と呼ばれてきた。彼のような、万能の評論家というポジションは、ネット時代にはとても難しい立ち位置だろうと思う。一方的に投げかけられるマスメディアとは異なり、あらゆる分野の専門家や当事者と同じ土俵で発言しなければならないからだ。過去の発言も容易に検索され、反論や批判の材料にされてしまう。
地位も名声も築いたのだから書籍やテレビの権威の仕事で十分なはずだが、敢えてネットで論陣を張るのが、根っからの論客なのだなと尊敬してしまう。この本には、はずれた予想や、当初の誤認識も、意図的に直さず掲載したと自ら述べている。これもなんだかネット的である。
小泉批判、天皇制、靖国問題に関する章が多いが、以下のようなライブドアやメディア論の章の方が個人的には面白かった。専門家というより、一ユーザとしてこうなるんじゃないか、こうあるべきなんじゃないか、こういうのが面白いじゃないかとのびのび書いている。ブログ的なのである。
毎週愛読中。この先も長く読みたいサイト。
・第68回 ネット時代に直面する問題にテレビ、新聞はどう向き合うか - nikkeibp.jp - 立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060227_net/
・第43回 車社会アメリカが切り開くiPod&ネットの近未来 - nikkeibp.jp - 立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/050825_ipod/
・第42回 ザ・タイムズ紙の豹変に新聞の来るべき未来を見た! - nikkeibp.jp - 立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/050825_shinbun/
・第32回 IT後進国の旗を振る民放、NHK ネットと放送の融合に待ったなし! - nikkeibp.jp - 立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/050728_nettv/
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かつては尊敬の対象だったものが朽ちていくのを見るのは悲しい事だ。 電脳進化論 立花隆 [文庫版] 例えば、←の「電脳進化論」と今の「メディア・ソシオポリティックス」を比較すると、彼の「知的足腰の衰え」は見るも無惨だ。 Passion For The Future: 滅... 続きを読む
間近に見ていて、アウトプットの量とスピードに圧倒されておりました。
やはり真骨頂は、科学モノのルポではないかと思います。
ライブドアとか楽天のような、いまどきの伸びている会社の意思決定構造について、過去の大企業との比較では見えてこないものがある、という発見もありました。
書籍化するのに社内ネゴが大変(ま、ビビッてる人多くて)でしたが、本が出たときはもう僕は居ませんでした(笑)。
いずれにしても、立花隆のネット第一作、ということですね。