アドルフ・ヒトラーの一族―独裁者の隠された血筋
世紀の大悪人アドルフ・ヒトラーにも両親や妹、親戚がいた。父親のアロイス・ヒトラーは貧しい家に生まれたが、努力と才覚で、難関であるドイツの税関吏の職を得た人物であった。性格は傲慢で、家族に対しては冷淡な人物であったらしい。これは息子アドルフにも受け継がれた気質のようだ。女性関係は複雑で、3度の結婚をしており、中には役所を騙して成立させた近親結婚も含まれる。
そもそもヒトラーという姓はアロイス・ヒトラーが改姓により一代で作ったものであった。貧しい親族たちと縁を切りたかったようだ。だからヒトラーという姓を名乗る一族はそれほど多くはない。ヒトラーには兄弟が多くいたがほとんどは病弱で、妹以外は幼少時に亡くなっている。異母兄弟や叔父、甥にヒトラー姓がいて、今も存命の人もいる。
ヒトラーは血統の純粋性をプロパガンダで強く打ち出していたので、自らの複雑な出自を知られることを恐れた。親族を遠ざけ、出自の詳細を隠し続けた。家族関係というものについてヒトラーは次のように述べているが、
「
私は自分の一族の歴史については何も知らない。私ほど知らない人はいない。私は家族というものと完璧に縁遠い存在であり、親戚付き合いに不向きな人間である
」
何も知らないのではなく、知っていたから隠したのである。
この本は最新の調査資料も使って、いままで語られることがなかったヒトラー一族の歴史に光をあてる。ドイツ首相で権力の頂点にあったアドルフ・ヒトラーは、彼らをほとんど無視して遠ざけてきた。しかし、”おじさん”が国家の最高権力者であるならば、親戚としてはその関係を利用したいと思うものが出てくる。
甥っ子の一人は、ヒトラーに近寄り拒絶されると、手のひらを返して、出自をマスコミに話すと総統を脅迫し、職業斡旋や金策の便宜をはからせた。戦況が悪化するとアメリカに渡り、アドルフの批判と暴露講演でひと稼ぎしている。
アドルフが好きだった母親は17歳のときにガンで亡くなっている。アドルフが愛した姪のゲリは短銃自殺で失っている。ヒトラーは暖かい家族というものに、本当に縁がなかったようだ。
ヒトラーの死亡、敗戦後は、”おじさん”のせいで一族は受難の日々であったらしい。ナチスになにも関わっていなかったのに逮捕され、獄死したものもいた。遺産争いもあったが大半は国家に没収されてしまう。末裔は今も多くは改名してひっそりと生きているそうだが、新しい世代はアドルフとは無関係なわけで、なんだか気の毒である。
この本は、一族の代表的な人物の伝記集であり、ヒトラーの隠そうした関係から、逆にヒトラーの真の姿、プライベートが浮き上がるように構成されている。大変、面白い読み物であった。
・アドルフ・ヒトラー - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%92%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%BC
この映画のヒットによりちょっとしたヒトラーブーム。
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