ヒルズ黙示録―検証・ライブドア
こういう本を待っていた。とても面白い。
朝日新聞でライブドアを担当していた記者の本。
創業黎明期から、株式公開し、M&Aを繰り広げての急成長、そして球団買収、フジテレビ、選挙戦、強制捜査まで、ライブドアの実態を、新聞記者らしく取材メモと事実ベースで客観的に解明していく。暴露本ではない、検証本である。
堀江社長以外のライブドア経営陣や、村上ファンド、楽天、フジテレビ、リーマンブラザーズなど、各時代の当事者の生々しい肉声も多数公開されている。あの人はそんなことを言っていたのか、と驚きも何箇所かあった。知り合いも数人登場していて、あらあらとも思った。
私は堀江さんとは、そう深くはない面識があった。
1999年ごろ、ニュースサイトのホットワイアードに、NewsWatcher'sTalkという企画が始まり、私は10数人くらいの業界パネリストの一人に選ばれた。その後、数年間、この企画に参加した。同じパネリストの一人として堀江さんがいた。
・News Watchers' Talk ご利用ガイド : Hotwired
http://hotwired.goo.ne.jp/nwt/guide.html
(この企画は今も続いているのだが、当時はもっと活発に議論が交わされていた。)
毎週、IT業界の時事ネタを編集部が選び、パネリストがメーリングリストで議論する。議論した内容はまとめられて翌週にWebで公開される。堀江さんの会社は当時のホットワイアードのシステム構築をてがけていたと記憶している。そういう理由もあってか、堀江さんは、メーリングリストで、しばしば意見を投稿されていた。
私はテーマが提示されると、じっくり考えたり調べてから、長文の意見投稿をしていた。堀江さんは即座に数行の断定的な意見を投稿するスタイルだった。ビジネスの話題でも、技術の話題でも、ばっさり斬る。衝突を恐れず、自分の意見を簡潔に述べていた。私の長文もばっさり一行で斬られたりもした。それに長文で反論すると、また1行で斬られてしまう。
同じ原稿料なのに随分、文字数違うよなあ、効率いいな、堀江さん、などと可笑しくなったりもしたのだけれど、こういう人がいると議論は面白い。この企画での堀江さんの存在感は大きかった。特に技術については鋭い意見が多くて参考になった。ハッカーのワンマン経営者という印象であった。
その後、ホリエモンとして有名になり、次々に世の中をハッキングする堀江さんに、内心では、エールを送っていた。堀江さんの有名なブログのコメント欄が荒れていたときには何度か匿名で応援のコメントを書きさえしていた。規模は違えど同じベンチャー企業経営者として、体制に豪快に切り込んでいく様子は見ていて痛快だった。だから、強制捜査以降の堀江さんの状況は大変、残念だなと思っている。
この本は客観的な検証本なので、著者は敢えて主観的な判断を前面には出していないが、全体的には堀江氏に同情的である。あれは国策捜査であったという見方も取り上げている。まだまだこの国は出る杭が打たれる国だということかもしれない。
この本によれば熊谷取締役が発案した株式100分割で買いやすくなったライブドア株は、20万人以上も個人株主がいたそうである。私の身近にも損をした一般投資家がたくさんいる。株式投資は本来は自己責任のはずだが、集団訴訟も起きている。有罪無罪よりも、これが本質的問題だと思うのだけれど、ライブドアの事後処理をしてから、再起業して、この人たちに2倍返し、3倍返しで儲けさせるような、ドラマをまた見せてくださいよ、堀江さん。
・国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004269.html
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