第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい
最初の2秒の状況判断=第一感はかなり正しいということの科学。
全米連続50週のベストセラー、世界34カ国で翻訳された話題の本。
赤いカード2組と青いカード2組の4つの山がある。カードには「○ドルの勝ち」「○ドルの負け」と書いてある。4つの山から、自由に選んでカードを何度もめくり、儲けを競うルールがある。プレイヤーには知らされていないが、実は赤いカードには大勝も多いが大きな負けも多い。青いカードは大勝は少ないが、負けを引いても損が少ない。だから、青を引き続ければ勝てるという、必勝法があるゲームである。人は何枚引いたらこの必勝法を見抜くものだろうか。
アイオワ大学の研究では、ほとんどの人が50枚を引いた頃に「青を引けば勝てる」となんとなく気がつくものだという。さらに続けて、80枚をめくると、なんとなくは確信に変わり、必勝の理由も説明できるようになる。これが常識的な学習である。
ところが、被験者の手に汗の出方を計測するセンサーをつけてみると、面白いことがわかった。汗の出方からはストレスの強さを測ることができる。ほとんどの人が10枚をめくった時点で、赤いカードをめくるときにストレスを感じていることが判明する。意識がなんとなく気がつく遥か前に、人は無意識的に法則を感知し、危険を回避しようとしているのだ。
この一気に結論に達する脳の働きは、適応性無意識と呼ばれる。意識が思考して正しいと判断する前に、正解を直観するひらめき能力のことである。凄腕営業マンはお客を見たとたん、買う客か、ひやかしかを見抜く。鑑定士は美術品の真贋を一目で判別できる。百戦錬磨の司令官は細かいデータがなくても戦況を瞬時に判断する。そんな第1感の成功事例が多数、紹介されている。その判断時間はおよそ2秒である。経験のある専門家は熟考を必要としない。状況の輪切りで正しく判断ができるものなのだ。
専門家の第1感は役立つことが多いが、一般人の第1感はだまされやすいものでもあることも警告される。見た目や、もっともらしさ、考えすぎ、に引きずられて、誤った選択をしてしまう。よくある、おっちょこちょいである。
米国大企業500社を調べたところ、男性CEOの平均身長は182センチだったそうだ。全米男性の平均は175センチだから、7センチも高い。背が182センチを超える人は米国男性の14.5%に過ぎないが、CEOでは58%である。188センチ以上の人は米国全体で3.9%であるが、CEOでは30%以上もいる。身長で昇進を決める制度を持つ会社など存在しないはずだが、結果は歴然だ。人々は無意識のうちに背の高い人をリーダーに選んでしまっているらしい。
人は無意識のうちに先入観を抱えてしまっている。背の高い人は有能であるだとか、黒人は犯罪者が多い(あるいは運動能力が高い)など。見た目にもだまされやすい。しばしばパッケージのデザイン印象と商品の中身の品質が同一視されてしまう。こうしたプライミング効果や感情転移現象について、事例を挙げての説明がある。
直観の正しさの根拠やそれを鍛えるノウハウが詰まっていて勉強になる本である。始めてみたときの第一印象をメモする癖がある古美術研究者の話が出ていたが、常に直観の判断をメモしておくと言うのは名案な気がした。正確ならばその後も自分の直観を頼ればいいのだし、間違ったならば自分のだまされやすさを把握できることになるから。
・瞬間情報処理の心理学―人が二秒間でできること
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000624.html
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このエントリを読んだ範囲でコメントさせて頂きます.
この本の本質には同意です.
論理的に理解する前に何となく気づくということにはあると思います.論理を作る前に一番多くあるパスで学問などでも多いケースと思います.
赤を引く時に無意識に汗をかいている->赤が期待値的に不利だと無意識に感じている
という論法には疑問です.単にいい意味でも悪い意味でも振れ幅が大きい方(赤)に緊張し,振れ幅が小さい方(青)に緊張しないだけかも知れません.また赤という色が単にショッキングだからかも知れないという難癖をつけることも可能です.
従って次のようなテストもサンプル数を多くしてしないといけません.
- 赤青の振れ幅をそのままで期待値に差がない場合
- 赤青の振れ幅が逆転して青の期待値が良い場合
- 色を逆にした同じテスト
私はこの本を読んでいませんし,著者が実際に試したか否かは未確認の上でのコメントです.
橋本です。
らきさん、こんにちは。
おっしゃることに同意です。実験したのは学者だからそのような事情を加味して検証した上で、著者がわかりやすくゲームを描写しただけだと思うんですが、実際はどうなんだろう。。。