駅伝がマラソンをダメにした
「お正月はどう過ごされるのですか?」と聞かれるのだが、私の場合、まったく面白い答えができない。子供の頃からずっと、家族と紅白歌合戦を見て、行く年来る年を観て、年越しそばを食べて寝るだけの、典型的な日本の年越しスタイルを何十年も続けているのだから。
そして2日、3日は何をするのかというと、家から歩いて1分の国道に出て、箱根駅伝の往路復路を応援するわけである。走者を見送ったら、母校の応援者が集まる場所があるので、そこへ行き、校歌を歌って帰る。新聞社の配る旗ももらって喜んでいたりする。同じような過ごし方をしている近所の友人知人や親戚と顔を合わせたりもする。
お正月の風物詩に欠かせない駅伝なのだけれど、真剣にスタートからゴールまで観ているわけではない。だらだら観ている。駅伝という競技についても詳しいことは知らない。背景がわかったら面白そうだなと毎年思っていたのだが、いい新書が刊行されていた。
この本はジャーナリストの駅伝論。内容のほとんどは箱根駅伝の話である。駅伝批判かと思わせる題名であるが、著者は駅伝大好きな人間で、駅伝の魅力をたくさん語っている。あまりに駅伝が魅力的なのでマラソンをダメにしてしまった、という程度の意味である。
箱根駅伝は1987年に日本テレビが中継を開始してから、「甲子園化」したそうである。陸上の長距離の選手たちは、全国放送される駅伝に憧れて大学に入ってくる。かつてはマラソンなどの選手が息抜きに箱根を走っていたそうだが、90年代に入ってからは、男子マラソンが衰退し、駅伝が長距離のゴールになってしまったそうだ。
大学としても1月は入試の願書の受付時期である。テレビでの選手の活躍は大変な宣伝効果を持つ。特に知名度の低い新興校にとって意味は大きい。ケニア留学生を起用して箱根の常連になった山梨学院大学などは、駅伝をうまく宣伝に使った例であるが、最近では伝統校までも、駅伝強化に乗り出し始めているらしい。
主要各校の歴史や近況が細かくまとめられている。なんといっても注目は4連覇を達成し5連覇に挑戦する駒澤大学の動向であろう。立役者である大八木監督の指導方法や戦術が分析されている。今年も強そうである。復路を重視しているらしいので、今年は注目してみよう。
長い練習の期間をチーム一体となって頑張るのためには監督の役割は大きい。著者は主要校の出場選手の髪の長さを調べた話が面白い。すると髪が長いロン毛派が11校、短髪派が8校という結果になった。そして優勝記録との関係を分析すると、
「
このロン毛派と短い派の比較に何の意味も見出せない人もいると思うが、日テレ時代になってからの優勝校を振り返ってみると、ロン毛校の学校は、1990年、91年に連覇した大東文化大と、96年優勝の中大しかない。そのほかはすべて短い派の大学が優勝しているのだ。
」
髪の長さや服装には指導者の個性が表れるからだと著者は説明している。長距離の世界では、監督が食事や睡眠も含めて生活全般を管理できなければ、強い選手が育たない。髪の長さと優勝回数の関係は偶然ではないはずだという。髪の長さを気にして、今年は観戦してみよう。
さて、観戦には日テレの中継映像を見ながらNHKラジオの中継を聴くのが著者のスタイルだと紹介されていた。CMの中断がなく、NHKが独自の中継者を走らせているため、情報も濃いらしい。今年はそうしてみよう。ちょうど忘年会議のおみやげでYahoo! Japanさんからラジオをもらったし。
・SAIJO'S箱根駅伝・金利HOMEPAGE
http://www31.ocn.ne.jp/~j_saijo/
駅伝に大変詳しいサイト。通過時刻予想があるため、沿道の応援者にも参考になる。
『東京箱根間往復大学駅伝競走』
http://www.ntv.co.jp/hakone82/main.html
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生島 淳 駅伝がマラソンをダメにした 確かに著者が言いたいことは分かります。 でも自分は箱根駅伝を楽しんでいて、楽しみにしている一人だしね、 ちょっと論拠が苦しいかもと読み終わって感じた。 まぁ、タイトルは皮肉ってぽく付けられてるんだ 続きを読む
デジハリ大学が駅伝に出場したら盛り上がること間違い無しです!