大型店とまちづくり―規制進むアメリカ,模索する日本

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大型店とまちづくりの日米比較。

1990年に大型店は全国に2358店舗あり、2003年には4111店舗に増えた。この間に店舗数は1.7倍に拡大した計算になる。特徴としては大型スーパーが増えており、逆に百貨店はやや減っている。そして大型店は増えたにもかかわらず、その全体の売上高は1997年から2003年の期間で7%以上も減っている。店舗が増えたのに全体の売り上げが減っているのだから、一店舗あたりで計算すると27%の売り上げ減という深刻な状況にある。

小売の全国の売り場面積に占める大型店の面積比率は2002年に44%。売上高比率では32.4%に達するという。地域社会の生活や経済に多大な影響力を持っている。特に最近の出店は郊外、ロードサイドに集中している。

大型店は売り上げが落ちた店舗は即刻閉店し、閉店数を上回る数の新規出店を続けることで収益を確保しようとする(スクラップアンドビルド)。大型店が郊外、ロードサイドに開店すれば地方都市の中心市街地の商店街は客を奪われ大打撃を受ける。

地方都市郊外や周縁部、そして中心地でも大型店が閉店したまま建物が放置されている「グレーフィールド」が増えている。私も関東と関西でいくつか事例を知っている。建物を壊した空き地のままの数も入れると閉店店舗例の40%を超えるらしい。

売り上げが落ちると閉店し、別の場所へ出店する大型店の「焼畑商業」が街のイメージダウンや失業者の増加、治安の悪化、経済の落ち込みの大きな原因になっている。スプロール開発(低密度土地利用による土地浪費型、かつクルマ依存の郊外開発)も、地域社会にとってマイナスになる。

大型店を誘致する地方自治体には「雇用機会の増加」「買い物機会の拡大」「市税の増収」の3つの期待があるとされる。しかし、実際には郊外出店により中心地の商業の壊滅による地価の下落、固定資産税の減収につながってしまう例が続出。閉店によって失業者増加、利益は域外の本部に吸い上げられ地元経済には落ちないなどの見込み違いが起きる。
米国のシンクタンク、シビックエコノミクスの調査によれば、域外商店に比べて地元商店のほうがはるかに地域経済に貢献することがあきらかにされている。試算では地元商店で1ドルの消費があると、平均73セントの地域経済効果がある。これに対して域外商店で消費があっても平均43セントの効果しか得られない。

そこで米国では「小さな町」コンパクトシティの計画が積極的に各地で展開され、一定の成功をおさめはじめている。米国の多くの街はロードサイドに同じような大型店舗が並び、均質的な街並みが多いが、さすがにそれでは

米国の地域自立研究所による「我々の小売店」論は、大型店に変わる3つのモデルを提唱している。

・食料品を中心にした消費者共同組合
・地元起業家によるコミュニティ・ビジネス
・州民を対象に株を発行し、プロが経営する店舗

そして、ウォルマートのような低所得者層、失業者、年金暮らしの高齢者の多い地域に大型店を出店し、低賃金で住民を雇用することで、低所得のままにしておき、納入先にも無理な低コストを要求するひどい仕組み「毛沢東理論のウォルマート版」だと強く批判したジャーナリストもいる。

この本の最後では、日本における大型店の規制条例の制定や、街づくりをみなおして地域の活性化で成功し始めた自治体の事例がいくつも紹介されている。経済的費用だけではなく、社会的費用まで考えると、トータルでは大型店よりも、地元商店を活性化させたほうが住民にとって恩恵が大きいということを考えさせられる本であった。

理屈ではわかるのだが、地方都市に住んでいる一消費者としては、地元商店街を応援したい気持ちもありつつ、魅力的な店舗が少ない現実があるなと思う。イトーヨーカドー、ダイエー、トイザラス、郊外のショッピングモールなどは、品揃えや集積メリットなどを総合すると便利であり、やはり足がそちらへ向いてしまう。

昨年、気になった地元の活性化企画にこんなビジネス発想コンテストがあった。藤沢市は全国的に見れば悪くない方だと思われるが、「商店街にある休眠中の店を、斬新な発想と感性で再生させる新ショップ開発の部」という項目があり、グレーフィールド問題は身近でも問題であるようだ。

・湘南藤沢商店街活性化・アイディア大募集!ビジネスコンテスト 結果発表!!
http://www.cityfujisawa.ne.jp/~shouren/busicon/

実は私も一夜で書いたおもいつきを応募していたのだが入選はならずであった。結果発表を見ると、古着のリメイクショップが入選。私の案はちょっとひねりすぎていたらしい。今年もあったらわかりやすいアイデアでまたチャレンジする予定。

こうした発想の取り組みの中からこの本にでてきた「我々の小売店」の魅力の具体例が示されれば、大型店とまちづくり問題の解決につながっていくのかもしれない。

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このページは、daiyaが2005年11月 3日 23:59に書いたブログ記事です。

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