「伝わる!」説明術
著者によると、人間の頭はなんでもアナロジー(類推)で理解するようにできている。「わかる」というのは、アナロジーによって物事の相互関係をわかりやすい状態にすることであるという。
「わからない」→「わかった」の間には「難しさ」という山があり、アナロジーはこの山を低くする触媒である。わからないことをわかりやすい状態に変化させる。頭のいい人・悪い人の違いは、理解のために、ものごとをアナロジーでわかりやすくする能力の差なのであると著者は考えている。
アナロジー(類推)には2段階があって、
「
類:ものごとの間に、共通する点や類似する部分を見つけ出し、そこに着目する
推:共通する部分を土台として、考えている話題について、考えを推し進めていく
」
つまり、既知の関係と似ているものとして、新しいものを説明するということだ。
アナロジーを使った説明法は私も随分考えた。たとえば自社開発した連想検索エンジンを売るために、ややこしい多次元ベクトル空間の計算ロジックを、こんな風に色に置き換えて説明したことがある。5年前のこと。
・データセクション株式会社 :: SemanticWeb Company といえばサーバ技術概要
http://www.datasection.com/index.php?page=toieba
このアナロジー説明の効果は?
まあまあだった。なぜかというと、色空間との相似はばっちりだったのだけれど、色空間自体が説明としては、複雑性が高かったのだと思う。
この本ではアナロジーの基本条件として以下の3つを挙げている。
1 おおまかにいって正しいか
2 よく知られた題材か
3 関係図を描けるか
私の色空間のアナロジーは2が怪しかったのだろう。
わかりやすい関係性はパターンがあるという。本では10パターンのアナロジーの基本形が紹介されている。どれも比較的簡単な内容だ。関係性が難しすぎてもいけないのだ。
因果関係、きょうだい関係、共起関係、じゃんけん関係、トレードオフ、ボトルネック、ピラミッド、鏡、無関係
こうした原型それぞれに自分なりの使いやすい比喩を用意しておくことで、説明の効果が高まると言う。たとえば「それは軽いギアと重いギアの関係ですね」であるとか「つまり、この二つは兄弟ではなくて従兄弟みたいな関係なんですよ」、「それはコンピュータのハードディスクとメモリーの違いです」といった調子である。
理解や説明のための、アナロジーの脳内ピースを増やしておくことが、頭の良さ、回転の速さにつながっているのだという内容であった。
もっとアナロジーのピースを増やしてみようと思う。
今、考えた。こういうのはどうだろう。
「なにかに還元できない人間のこころって”割り算の余り”みたいなものですね」
この表現、我ながら味はあると思うのだが、分かったような、分からぬような。
煙に巻くのにもアナロジーは使えるツールだ。
濫用するなとこの本にもちゃんと書いてあったのであった。
・「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000973.html
・「分かりやすい文章」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html
・「分かりやすい表現」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000451.html
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