2005年6月アーカイブ
この本のいうカーニヴァルは、2ちゃんねるで突発的に起きる「祭り」のような、歴史や物語とは切り離された度を過ぎた祝祭ムーブメントを指している。明確な「動機」や目指すべき「理念」、依拠すべき統一的な「物語」を欠いた祝祭が日常化することの背景と意味が考察対象となっている。
こうした祝祭ムードを醸成する重要な要素として若年層の労働環境問題が最初に取り上げられる。ニート・フリーターの増加、モラトリアム層の増加、不毛なやりたいこと探し、将来に確信が持てない状況が、若者の心に一種の躁鬱的な人格分裂をもたらしていると著者は論じている。ネットの祭りが過剰にポジティブだったり、ネガティブだったりする理由となる。
昔は家庭から会社へ一直線につながるライフコースがあって、若者は子ども時代は家庭に甘え、成長したら会社に甘えることで一人前のゲタをはくことができた。しかし経済の低成長時代に入り、雇用が減少すると会社に甘えることができなくなる。モラトリアムに入った若者は、就職面接でも聞かれる「やりたいこと」探しを始める。だが、社会と希薄な関係性しか持たない状態で「やりたいこと」や「本当の自分」を無理やり捻り出そうとしても、貧困な答えしか出てこない。そのような宙ぶらりんな若年層の気持ちのはけ口としてインターネットの匿名掲示板が使われているということのように読めた。
またカーニヴァル化を支えるテクノロジーとして、自己監視社会とデータベースが取り上げられた。監視カメラやセンサー、コンピュータとネットワークの個人情報管理技術の発達は必然的に監視社会化を強化する。また、偏在するデータベースは個人情報を外部が監視するのに使われるだけでなく、自分自身が使うものになっている。
「
気がついてみれば私たちの周囲は、データベースとの相互審問によって、自己の欲望するべきものについての理解を得るような振る舞いで満ちあふれている
」
データベースとの相互審問の事例として、よく聞いている曲のランダムリストが作成される音楽プレイヤーiTunesや、ユーザの購入状況から自動的に関連書が推薦表示されるオンライン書店アマゾンが例に挙げられている。よく聴く楽曲や、買う本をデータベースに登録する代わりに、欲望を刺激する推薦商品リストが提示されるということ。
こうしたデータベースとの審問を通じて喚起される欲望は消費スタイルを変化させる。マスメディアが、「今はこれが流行です、もっていないと遅れますよ」と宣伝して買わせる消費は、情報化の進展に伴い退潮するという。その代わり、誰かが薦めるからではなく、自分にとってネタになるかどうか、で消費するものを決める「ネタ消費」の時代に変わりつつあるのだと指摘している。
そして、現代は、歴史的な価値観を共有する共同体ではなく、
「
ある種の構造を維持していくことではなく、共同性 ーーー<繋がりうること>の証左を見出すことーーーをフックにした瞬発的な盛り上がりこそが、人々の集団への帰属感の源泉となっているのである。
」
という意味で感性を一時的に共有することを重視した共同性の時代なのだとまとめられている。
ビジネスマンとしては、こうしたキター!風のカーニヴァルの中で大量に「ネタ消費」できるモノは何か、どうしたらそれが売れるか、が気になってくる。最近のアマゾンを初めとしたWebショップの売れ筋にも、確かにネットの祭りと連動したネタ消費が上位に入っていることが多いと思う。
このブログで発生したネタ消費では、
・Passion For The Future: キッパリ! たった5分間で自分を変える方法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002147.html
これなど代表例である。この本は実によく売れた。(それ以上にコメント欄が荒れた...)。
雇用問題から、監視社会、データベース、共同体から共同性へとテーマは各章でめまぐるしく変わる。この本は、(著者自身もそのように前置きしているのだが)全体として一貫した論理にまとまっているとはいいがたいように感じた。だが、各論についてはどれもとても面白く、時代の空気を的確につかんで考察している部分が多い。ネット社会の最新のキーワードを見つけたい人におすすめ。
今日のテーマは簡単な企画書の作り方。
企画書を一度も書いたことがない学生が大半であることを前提に、まずは一度、簡単なものを作成してみることを体験してもらいました。
最初に私自身が作成し、実際に仕事で大きな目的を達成した本物の企画書を画面で紹介しました(ここには公開できませんが)。今回の授業内では、本格的な企画書ではなく、一枚企画書に取り組んでもらうことにしました。
参考書は以下のものを採用し、このフォーマットに従って個人及びグループで書いてもらいました。
・鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000575.html
1 タイトル わかりやすく
2 サブタイトル 気になるキャッチフレーズ
3 目的 結局何がしたいのか1行で
4 サブ目的 箇条書きで補足する
5 理由 数字や事実を使って根拠を示す
6 予算 いくら必要なのか、ケタを見積もる
7 現状 現状までの努力を書いて後一押しあれば
8 要望 具体的に何をして欲しいか
サンプルとして上記書評ページにある、私が作成した一枚企画書も例示しました。
今回の具体的なテーマとしては下記の状況を設定しました。これは受講生のひとりが本当に置かれている状況をモデルにしています。
WG:「こちらデジハリ放送部」
デジハリ大学にラジオ放送局を作りたい
現状は機材も予算も実績もない
未経験だが情熱ありの部員が5人
あなたは初代の部長に選ばれた
十分な予算や機材を獲得するための
「一枚企画書」を作成する
そしてグループ発表。
学生の発想としてよかったもの。
・アキバ発の萌え文化を発信するインターネットラジオ局
・英語講師と連携して日本語・英語の同時放送
・メイド喫茶番組「ご主人様、お帰りなさいませ」
・俺様を出演させろ的プレゼンテーション
はじめての企画書にしては各グループ、見所のある仕上がりになっていたと思いました。
さて、このテーマ、真面目に考えると、今話題のPodcastingと絡めたり、デジタルラジオ放送局に売り込んだりと、展開は面白そうです。デジハリといえば、こんな話題もあるのです。
・2006年デジタルラジオ開始に向け、エフエム東京ら63社がフォーラム設立
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2005/06/07/7920.html
こんなところにデジタルハリウッドの杉山校長先生が登場しています。
「
7日、「デジタルラジオニュービジネスフォーラム」が設立された。2006年に前倒
しされた地上デジタルラジオ放送の開始に向け、受信端末や新サービスについて
12月31日まで研究・開発を行なう。フォーラムには、エフエム東京やジャパンエ
フエムネットワークス、TBSラジオ&コミュニケーションズなどの放送事業者に
加え、松下電器産業や日産、本田技研など現時点で63社が参加する。
デジタルラジオは、現在アナログテレビが使用しているVHF帯の周波数を利用し
、専用端末向けに高音質なデジタル音声放送や簡易動画放送、ネットワークと連
携したサービスを提供する次世代ラジオ放送だ。
」
フォーラム代表にはデジハリ杉山氏。
ここらへんをねらうといいのじゃないだろうか、と思います。
来年からいきなり番組をデジタルラジオでもてたりして!
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・広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス
知的好奇心をかきたてられて大変面白い一冊。
「みんなどこにいる?」と科学者フェルミはつぶやいた。
宇宙には無数の星が存在しているのだから、地球外文明(ETC)との遭遇がもっとあってもよさそうにも関わらず、私たちはまだ隣人の存在を一度も見つけることができていない。これがフェルミのパラドクスで、数々の科学者がこの難問に挑んできた。
発達した通信能力をもった地球外文明は銀河系にいくつあるか、を表すドレイクの公式は、このフェルミのパラドクスを解く鍵となると考えられている。
N=R×fp×ne×fl×fi×fc×L
N 発達した通信能力をもった地球外文明は銀河系にいくつあるか
R 銀河系で1年に星が生まれる確率
fp 惑星を持つ恒星の割合
ne 惑星を持つ恒星のうち生命を維持できる環境を持つ惑星の数
fl 生命が維持できる惑星のうち、実際に生命が育つ割合
fi その惑星のうち生命が知的能力を発達させる割合
fc そのうち恒星間通信ができる文化が発達する割合
L そのような文化が通信を行う期間の長さ
私もこの本を読む前にひとつ自分なりの答えを作っていた。それはこういうもの。
人類のような高度な通信技術を発達させた文明が生まれる確率はとても低い上に、その存続は宇宙の時間では一瞬に等しい。だから、稀に高度な文明が出現しても、二つ以上の文明が近接した時間と領域で通信を交し合うことは極めて珍しい。だから、まだ人類は隣人を見つけることができていない。(だが、運がよければ私たちの時代に見つかるだろう。)
さて50の理由を読んでみると、この仮説もまんざら的外れではなかったようだが、考えたこともなかった理由が3分の1くらい含まれていて、科学者たちの発想の豊かさに驚かされた。
この本では著者が選び抜いた50の理由が以下の3つのパターンに分類されている。
1 実は来ている
2 存在するがまだ連絡がない
3 存在しない
1の実は来ているでは、私たち自身がETC由来の生物だという仮説から始まって、地球はETCの動物園で観察者たちは見つからないように隠れている動物園仮説のような奇抜なアイデアもある。天空はETCによって作られたプラネタリウムなのだという似た案もある。
2の存在するがまだ連絡がないは数が多い。星の距離があまりに遠いこと、こちらに到達するまで時間がたっていない、信号は送られているが聴き方がわからない、向こうは別の数学を持っているなど。面白いところでは、ETCの多くが宇宙など興味がなく、自らが構築した仮想世界にハマっている(ネットを泳ぎ回っている)説や、皆殺しエイリアン集団に察知されるのを恐れて臆病になり通信をしていない仮説など。
3の存在しないは、そもそも人間がいるから観察できる宇宙が存在できるとする人間原理説から始まって、われわれが生命一番乗り説、生命の誕生は極めて珍しい、人間並みの知能はめったにない説、技術の進歩は必然ではない説などがある。
多くの説は、ドレイクの公式の各変数の大きさについて語っている。変数は科学的に検証すればするほど、見積もりよりも小さいことがわかっていく。地球ができて生命が生まれ、知的生命として発達し、現在の文明があること自体が極めて稀な偶然の連続の産物であり、このような状況が近隣で発生することは難しそうなことが分かっていく。
そして、この本の真骨頂は50番目の理由として著者の結論「宇宙にはわれわれしかいない」を書いたこと。著者は50の理由のうち、支持できる仮説をいくつか取り上げて、その掛け算で、ドレイクの公式を解こうとした。すると、各パラメータの数字はあまりに小さくて、答えは1。つまり、われわれしか存在し得ないという合理的な結論にたどりつく。
エイリアンはいる(いた、あるいはこれから生まれる)が、結局、私たちは会うことができない。その通信を受け取ることも永遠にない、という寂しい結論である。だが、Xファイルファンの私にもまだ希望はありそうである。
この本で面白かったのは何度も出てくる「フェルミ推定」の方法論。未知の数字のおおよその大きさを求める工夫。「シカゴにはピアノ調律師は何人いるか?」だとか、「世界中の海岸にある砂浜の砂粒はいくつくらいか」、「カラスは止まらないでどのくらい飛べるか」などの質問に対して、おおざっぱな桁レベルの答えをどうやって見積もるかのノウハウである。
宇宙についてはほとんどのことが未知なので、いかに科学的に出された数字といえど、各変数の大きさはフェルミ推定式な概算見積りでしかない。そのレベルでの概算でも、「われわれしかいない」という答えが出たというのは説得力がある。
だが、この答えを否定するのは難しいようで簡単だ。ETCの電波が今日や明日、特定されてしまえば、破られる。「宝くじに当たる確率は、当たるか、当たらないかの2分の1だ」と言った友人がいたが、この問題についてはそういう答えもありだろう。
本当は事実を合衆国政府が隠蔽しているだけなのだけれども。
The Truth Is Out There.
赤坂のホテル・ニューオータニで開催されたビル・ゲイツ講演会「マイクロソフトセミナー〜次世代検索を語る〜」に参加してきた。
講演の内容は下記のニュースサイトが詳しい。ビルゲイツが次世代検索を語るというタイトルだったので期待していたが、結局は、既に発表済みのデスクトップ検索やツールバーのプロモーションがメインだった。
・「検索はURLだけでなく“答え”を直接表示する時代に」ビル・ゲイツ氏
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2005/06/27/8170.html
講演会の後の懇親会(ビルゲイツは不参加)では、広告業界の関係者が多かったようだ。塚本事業部長からの挨拶と、日本のR&D部門のリーダー紹介(元Gooの浅川氏ら)、日本の現社長マイケル・ローディングの社長交代と本社のVP就任挨拶などがあった。社長交代については既に発表済みの事実。
・マイクロソフト日本法人の社長交代へ
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2005/04/20/7355.html
講演会では、米国の実験サイトStart.comが紹介されていた。
新しい検索技術のデモサイトStart.comはこちら。
・start.com
http://www.start.com/myw3b/
上記ページが表示されない人は、
http://www.start.com/3
から5つの質問に答える必要あり。
モジュールを編集して、パーソナライズできるポータルサイトであるが、同様のものをGoogleも最近、発表していた。自然文検索機能「MSN Answers」、地理的な条件で検索する「Virtual Earth」なども紹介されたが、これもGoogleの発表が印象にある。結局、何をやっても今はGoogleの追随に見えてしまうのが残念だった。
マイクロソフトリサーチではこれらと同種の技術のプレゼンを何年か前にやっていたものもあるし、衛星写真を使った地図検索ではTerraServerもGoogleより遥かに先行していた。デスクトップ検索にせよ、技術的には前からやっていたのに、後出しになっている感がある。
次世代WindowsのLonghornというジョーカーカードが切られるまで、当面、Google、YAHOO!、MSNの検索サービスのデッドヒートは決着しない感じである。記者の方々ともお話したが、今日の検索の講演はビル・ゲイツ登場以外ではこれといった新情報はなかった。マイクロソフトとしては、隣の会場で発表した東芝との提携ネタの方が、メインであったようだ。
・ビル・ゲイツ氏来日--まずは東芝と握手でHD DVDなど協業関係強化を発表 - CNET Japan
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000050156,20084783,00.htm
・ITmediaニュース:HD DVDプレーヤーにWindows検討 東芝とMSが協業強化
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0506/27/news061.html
検索については、私は先日、CNETのイベントで「サーチエンジン 2.0」という言葉を造ってみた。次世代検索について各社の考えをキーワードレベルで聞こうという試み。短時間だったので深くは突っ込めなかったが、各社の姿勢というか、対Google戦略における差別化手法は少し見えた気がした。
最も感動したのはヤフーの井上氏の「キーワードを入力したら、そのサイトが生成されてしまうくらいの斬新さがあってもいいのではないか」というアイデア。答えを見つけるのではなくて、答えを作ってしまうというのが、究極の答えなのかもしれない。
・国内検索事業者が語る“サーチエンジン 2.0”とは
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/event/10027.html
「
インターネットの最新動向をテーマにしたイベント「CNET Japan Innovation Conference 2005 Summer」が20日、都内で開催された。「ユーザーが求めるサービスを探る――サーチの未来」と題されたパネルディスカッションでは、業界のキーパーソンらが検索エンジンの未来像を議論した。
出席者はヤフーの井上俊一氏(リスティング事業部検索企画室長)、NTTレゾナントの国枝学氏(ポータル事業本部メディア事業部検索担当部長)、アスクジーブスジャパン取締役・COOの樋口将嘉氏の3人。モデレーターは、自身も検索エンジンの開発に携わった経験があるというデータセクション代表取締役CEOの橋本大也氏が務めた。
」
関連:
・バルマー講演で気になったことを調べてみたらMyLifeBits
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000488.html
・Photo Panorama
http://www.vector.co.jp/soft/dl/win95/art/se320426.html
普通の写真を引き伸ばして、パノラマ写真風に変形させるフリーソフト。ただ横長に引き伸ばすのではなく、画面を細かく分割し、伸縮しても目立たない箇所を指定して引き伸ばす。小さな被写体のない箇所や、斜めの直線のない箇所等が良いらしい。
伸縮させたくない箇所にロックをかける、伸縮の率を平滑化する、などの機能もある。こうして調整を行っていくと見事に普通の写真がパノラマ化する。画面の端の風景は引き伸ばしても、ほとんどわからないことが多い。プレビューでうまく処理できたら最後に横幅を指定(160〜3200まで指定可能)すると、JPEGファイルが保存される。
使用前
使用後
デジタルカメラ写真に迫力が足りないときに使ってみるとよさそう。
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http://www.kmonos.net/lib/orimado.ja.html
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EFold n' Drop Page
http://liihs.irit.fr/dragice/foldndrop/
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「組織の常識は世間の非常識」という状況になぜ陥ってしまうのか、理論的でありつつ、やさしく解説した組織論の本。最近のNHKや三菱自動車、社会保険庁のような組織の常識の破綻がなぜ起きるのか、不確実な現代を生き抜く強い組織はどういう組織かを適応のモデルを使って論じる。
■頑健な共有意味世界に生きる組織と適応性
まず組織の必要条件として「意味世界の共有」があると定義される。
「組織が共有する意味世界は、それに関与する人びとの交代によって左右されないいわば頑健性がある」
それは一般に組織の中で、常識と呼ばれ、具体的には
「常識とは、”かなり共通の対人経験”を有する人びとが客観的だと同意する事柄である」
とされる。ただし、この常識は外部の現実世界のそれと異なる。組織はそれが生きる環境自体を仮想的に創造して、組織の常識を作り出し、その内部に生きるという。
「
組織によって主体的に想像された環境像が実際の環境を創造し、その創造された環境が今度は組織を拘束するのである。これが常識の環境捏造性である
」
「
動植物が環境に受動的に適応するのに対して、人間組織は自らが捏造した環境に適応するのである。
」
組織の常識に反する新しい事態が起きると、不安になり、コミュニケーションが常識を疑う相互了解を形成する。その結果、常識の信頼性が下降して、捏造された環境自体が力を弱める。逆に言えば捏造環境が成長している間は、組織の常識も成長する。これが組織の適応モデルだという。
■未練のハードルと臆病のハードル、組織に4分類
しかし、組織が長年かけて築いた常識を、一度限りかもしれない新しい事態をきっかけにそのたび作り直していては、組織は安定することができない。過去の成功から学び取った知識はまだ有効であるかもしれないからである。そこで、組織の適応には二つの機制が存在する。
1 「未練のハードル」
不安が増大してもとりあえず今の常識を信頼しようとする機制
2 「臆病のハードル」
今の常識が軽々しく疑われたり批判されるのを避ける機制
この二つの機制により「適応は適応可能性を排除する」のである。
そして著者は、適応のハードル1と2をXY軸にして組織を4つに分類する。
この4類型からどの適応モデルが望ましいものかを決めるには、最大利得または最小損失を理想とする意思決定論ベースの現代経営学では不足であると著者は論じる。利得の確率が不明な不確実な状況下では、どの適応モデルも同様に長所、短所があり、優劣が決定できないからだ。
そこで、著者は意思決定以前の認識の段階での適応モデルの強さを考えるべきだとし、
・組織は多様性に富んでいなければならない(必要多様性)
・よく行為する組織はそうでない組織より認識に優れる(行為の重要性)
という二つの着眼点から、現代の組織として望ましいのは試行型、性急型、慎重型、鈍重型の順であると結論した。つまり、矛盾、言行不一致、ちゃらんぽらんが、首尾一貫、言行一致、真面目に勝るということになる。
過去の経験から学びすぎず、適当に”遊び”のある組織が適応上は強いのだ。いろいろな意見を内側で活発にぶつけながらも、同時に半歩先を行く取り組みには速い、そんな組織が理想だというのは、かなり妥当な結論だなと思った。
今回のテーマは「グループで考える技術」でした。
内容は以下の通りで、
・前回のアイデアマラソンは主に個人の発想メソッド
・今日はグループでひとつの問題について考える方法を知る
・代表的な技法「ブレインストーミング法」を身近なテーマで体験する
授業時間に著名な映画「キューブ」監督が来校しており、出席者を奪われるという困った状況でもありましたが、授業後アンケートは比率ベースで、過去最高(前回)の満足度記録を塗り替えたので、まあよしとしましょう。
メインはブレーンストーミングを本当に体験してみるというセッションでした。テーマは以下の通り。
・「デジハリ大学向上委員会」
ブランド価値を高める戦略
目的:デジタルハリウッド大学のブランド価値を向上させる戦略を考える
内容:デジハリのブランド価値に関係する要因を自由に発想する
ブレーンストーミング法の体験
各グループともに30から50個のブレストリストを25分間でリストアップできており、優秀でした。内容も皆さん、関心が深かったのか、授業後に結果を書いた模造紙を大学事務局に渡したところ、スタッフの方々に感心して眺めて頂きました。
ブレーンストーミングは、一般的なルールを採用し、
・基本ルール
他人の意見を批判しない
自由奔放に発想する
質より量を重視する
他人のアイデアを発展させる
でしたが、ブレストのリストが出来上がった後に、一人当たり25ポイント(一項目当たり上限5ポイント)を自分が重要だと思う項目へ割り振り、合計ポイント上位5つをカードに書き出し、各グループリーダーに発表してもらいました。ブレスト後に何をすれば良いかの体験でした。その他の応用事例としてSWOT分析とシナリオプランニング法の概略を説明しました。
最後にその他の多様な発想法や支援ツールをざっと紹介して授業は終了。使ったプレゼン資料を以下に公開します。
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http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/
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・パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す
■パーソナルブランド(自分ブランド)の時代
著者はパーソナルブランディングのセミナー(2日で30万円)を年100回開催している、この分野の第一人者らしい。
・Personal Branding - Personal Marketing - Peter Montoya
http://www.petermontoya.com/
この本においてパーソナルブランドは、価値、能力、行動を象徴するものであり、「あなたは誰なのか、あなたは何をしているのか、あなたが他人と違うところ、あるいはターゲットとするマーケットに対してどんな価値を提供するのか。」を伝えるものであると定義される。
「ブランドを明確にすれば、ブランドはあなた自身を明確にする」
そしてパーソナルブランドは次の3つの印象をターゲットに与えるものとされる。
1 差別化
2 優位性
3 信憑性
パーソナルブランドに力を与えるものは、
1 感情的なインパクト
2 一貫性、
3 時間
で、つまり、肯定的な強い印象を引き起こすブランドメッセージを、一貫して長期間にわたって、繰り返し送り続けることが大切なのだそうだ。
この本のメインは成功するパーソナルブランドの作り方で、それは以下の8つのチャネルの使い方ノウハウでもある。
・得意先からの紹介
・プロフェッショナルからの紹介
・ダイレクトメール
・ネットワーキング
・セミナー
・PR
・ウォームコール(電話)
・ウェブサイト
企業と同じように個人のパンフレットやロゴも作れという。プロフェッショナルであれば能力があるのは当たり前で、能力よりも、他者に与える直感的な印象や、人間関係を重視すべきだとする。
そして、自分のパーソナルブランド構築にどれだけの費用を投じるべきか?。答えは収入の15-25%。かなり大きな比率である。
■ブログはパーソナルブランディング・メディア
Webサイトやニュースレターの話もでてくるが、ブログこそ、パーソナルブランディングのメディアなのではないかという気がしている。
ブログを書いたからといって大きく儲かるわけでもない。出版やテレビ出演のように有名になれるわけでもない。この本では「パーソナルブランドがなしえないこと」として以下の3つが挙げられていた。
・能力不足を補う
・有名人にする
・パーソナルブランドのみによって目標に到達する
だが、確実に「あなたは誰なのか、あなたは何をしているのか、あなたが他人と違うところ、あるいはターゲットとするマーケットに対してどんな価値を提供するのかを伝えるもの」としては機能する気がする。
まだIT業界に限られてしまうのかもしれないが、大企業に勤務しながら、ブログで活躍し、会社ブランドよりも個人ブランドで仕事上、名前が出てくる人も登場している。ブログが形成する個人ブランドは転職や独立後も引き継げる。名刺や履歴書以上の有効なビジネスツールとなってきていると思う。企業が「ビジネスブログ」をするだけでなく個人が「個人ブランドブログ」をする方法論もそろそろ誰か本にまとめてくれないかな。
・ドローエディタ ディスカス
http://www.ican.zaq.ne.jp/rex/
ビジネスのプレゼンテーション作成に向いているドローお絵かきツール。
四角や丸の枠を配置し、線でつなげて概念図を作成する標準機能に加えて、ビジネスシーンで使いやすいイメージ画像が多数、収録されているのが便利のポイント。テーマ別に画像セットが登録されたステンシルから、必要な素材をドラッグアンドドロップするだけで、なんとなく描きたい図が見えてくる。
ウィンドウのキャプチャ画像に吹き出しコメントを書き込んで、アプリケーションの説明を作成する。だとか、アンチエイリアスや半透明、グラデーション、ベジェ曲線、図形をグループ化といったドローツールの機能を使って、年賀状の絵を描くといった使い方も可能。
図はページ管理することができ、全画面実行も可能なため、パワーポイントと同様のプレゼンをおこなうことができる。
UMLのステンシルも用意されており、本格的なビジネスプロセスやプログラムの仕様も設計することができる。
出力はSVG形式に変換することも可能なので汎用性は高そう。ディスカスのビューアは無料で配布されている。
パワーポイントとは一味テイストの違うプレゼンがしたいときに便利だ。1980円のシェアウェア。
・Pivot Stickfigure Animator
http://www.geocities.com/peter_bone_uk/pivot.html
人間や動物の線画が動くGIFアニメーションを簡単に作成できるフリーソフト。
作成方法はとてもシンプル。線画の人や動物の関節ノードをマウスで少しだけ動かしたら、次のフレームボタンを押す。また少し動かしたら次のフレームへ。これを繰り返すことでアニメーションが作成できる。あらかじめ人間や動物の原型はプリセットされている。もちろん、ゼロから骨格を描くこともできる。
これはとても単純なサンプル。実際には多数のプリセット素材が用意されているのでちょっとした短編ドラマをつくることもできそう。プレゼンのアクセントに。
・Batchrun
http://www.outertech.com/index.php?_charisma_page=product&id=1
バッチ処理ファイルを簡単に作成できるフリーソフトウェア。GUIで実行ファイルとパラメータ、実行時の優先レベルなどを指定すると、専用バッチファイル(DOSのバッチファイルではない)を生成してくれる。内部コマンドとしてRun, Copy, Rename, Makedir, Delete, DelTree, End Processといったコマンドも利用できるので、ちょっとしたプログラミング環境といえる。ファイル指定ではワイルドカード、日時指定タグをサポートしている。
DOSのコマンドラインプログラムや、CygwinのUNIX互換コマンド群を組み合わせれば、複雑高度なプログラミングができそうだ。
バッチファイルの中身は、ブラウザでヤフーを開いた後、秀丸テキストエディターを開く処理の場合、以下のようになっていた。わかりやすいので手作業での修正が容易。
「
Batchrun 3.0
C:\Program Files\Internet Explorer\iexplore.exe
C:\Program Files\Internet Explorer
http://www.yahoo.co.jp
0
Normal
C:\Program Files\Hidemaru\Hidemaru.exe
C:\Program Files\Hidemaru
0
」
・VECTOR MS-DOS汎用プログラムディレクトリ
http://www.vector.co.jp/vpack/filearea/dos/
・Cygwin Information and Installation
http://www.cygwin.com/
・Windowsキーワード : Windowsコマンド集
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NT/WinKeyWord/20040805/1/
・【特集】コマンドで操るWindows XP - CUIのアドバンテージを堪能しよう (1) Windows XP時代のCUIメリットとは (MYCOM PC WEB)
http://pcweb.mycom.co.jp/special/2002/xpcommand/
一味違う会議ノウハウ本。
ダラダラ続いて結局何も決まらないダメ会議。日本の古い村社会の寄り合い文化を受け継ぐこのやり方は、欧米流効率重視の考え方では無意味に思えるが、実は「納得によるコミュニケーション」を重視した日本の会社風土に適応したノウハウなのだというユニークな分析がまず提示される。
伝統的な農家の村落共同体では、田に水を流すにせよ、稲刈りするにせよ、構成員全員の意見の一致が必要で、多数決では決められない。だから、会議では、「納得とまではいかないけれどまあしかたがないか」的了解に全員が達するまでダラダラする。
「ダラダラ続くダメ会議は、日本人に備わっていた気質が生み出した、構成員全員に仕事について納得させるための場だったのです」と著者は効用を肯定する。つまり、会議は結論を出す場ではなく、納得を作る場だという考え方。ダラダラ会議は誰かリーダーが結論を決めてしまうのではなく、ひとつの文章を共同で作り上げる共創プロセスであると高く評価される。
そしてダラダラ会議にも効用はあるのだから、それを否定するのではなく、「ダメ会議に利用されている人」から「ダメ会議を利用する人」になることが日本の会社社会で出世して、幸福に過ごす近道なのだと、会議での立ち回りの方法論を説く。
具体的には、
(1)会議では1年黙っていること
(2)「自分は納得できない」と発言し続けること
(3)たったひとりを納得させればいいこと
という3つの戦術が詳しく解説されている。
この本の内容はこれまでの会議マネジメントの本と180度違うので、かなり衝撃を受けたが、実際、こういうダラダラ会議はなくならない以上、その土壌の上でどう振舞うかを戦略的に考えてみるというのは、個の視点としては有益だなと感じた。
無論、いくら日本的寄り合いといってもことなかれ主義に徹していては出世は望めない。だから、この本のノウハウは、孤立することなく、周囲に受容される異議申し立ての方法論が主体となっている。「それは違うと思う」をどう言い出すかのメソッドである。そうすることで全員が納得し、会議後の団結と実行効率が高くなる。
まあ、ダラダラ会議がいくら長いとはいえ半日や1日だろう。その後のプロセスがきちんと動くようであれば、ダメ会議も価値があるということか。
日本の共同体の意思決定方法をめぐり多様な考察がある。会議論というより日本文化論になっている。最近、人気の「すごいやり方」、「すごい会議」の対極にある独特な一冊。
・すごい会議−短期間で会社が劇的に変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003427.html
・すごいやり方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001597.html
・会議が絶対うまくいく法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000203.html
今週のテーマは「知識インタラクションと発想の技術」。ゲスト講師としてアイデアマラソンシステム(IMS)創始者の樋口健夫さんと、このメソッドを実践されている川井拓也さん(デジハリ大学院教員)をお呼びしました。
本日の内容は、
「
リサーチ&プランニングで大切なのは発想が豊かなこと
アイデアを生み出し続けるにはどのような方法があるか、を知る。
アイデアを20万件以上発想し記録した世界で唯一の達人からノウハウを学ぶ
」
という趣旨で、樋口さんにアイデア発想法の極意をご講演いただきました。その後、IMSを実践している川井さんにご登場いただきました。
樋口さんは、30年以上、毎日、何十ものアイデアを発想しては300冊を超えるノートに20万件以上を書き綴った、発想の世界チャンピオンのような方です。内容は盛りだくさんで、受講生のアンケート結果も最高レベルの濃い授業になりました。アイデアを日常生活の中でいかに発想するかのノウハウが何十も公開されました。
・アイデアマラソン
http://www.idea-marathon.net/
授業内容については樋口さんのオフィシャルサイトや過去に私が書評した関連書籍が詳しいです。
・企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000904.html
本日使った私のパワーポイントのみ公開します。ここに私の理解したアイデアマラソンのポイントも最後にまとめました。
この資料はパワーポイントを「いきなりPDF FlashPaperでFlashに変換しています。PDF版はこちら。
面白い。
数学の上達ノウハウ本ではなく、数学能力をかなり科学的に分析した研究本。
■計算には運動性が伴う
1,2、それ以上はたくさん、と数える民族は実際にいるらしい。私たちは数を指折り数えるがこれだと、片手で5、両手で10が限界である。さらに足の指まで動員すると20まではいける。パプアニューギニアのユプノ族は、左手→右手→左足→右足→左耳→右耳→左目→右目→鼻→左の小鼻→右の小鼻→左胸→右胸→へそ→左の睾丸→右の睾丸→ペニスまで身体の部位に数字を割り当てることで33まで数えるそうである。複数人数で数えることでさらに大きな数を数える民族もあるという。
こうした数え方は文化によって違う。だが、違わない部分が発見されている。脳の中に、人間が生物学的に受け継いだ数の認識モジュールがある。このモジュールは4つくらいまでの数を認識できる。この本で紹介された実験では乳児でも、4つくらいまでの数を見分けている。
そして、数のモジュールの計算には上述の指折り数えることが深く関わっているのではないかという仮説が示される。指の数など身体部位の認識ができなくなるゲルストマン症候群の患者は、計算もできなくなる。計算には身体イメージや運動性が深く関わっていることが分かってきたという。
脳に損傷を追った患者をたくさん調べていくと、特定の部位を損傷することで、足し算だけできない人、引き算だけできない人、もしくは掛け算、割り算だけできない人がいることが判明する。数の大小や順序が分からなくなる人もいる。基礎的な計算能力については脳にビルトインされた専用回路がいくつもあるようだ。
しかし、数学的天才はこの数のモジュールの性能が高いから、天才であるというわけではないことが後半で示される。
■生物学的な「数のモジュール」と文化的な「概念ツール」
数学者ガウスは子供時代に教師から「1から100までを順に足したら合計はいくつか」という問題を出されたとき即答して周囲を驚かせたそうだ。
彼は、
1+100=101
2+ 99=101
3+ 98=101
...
だから、101×50が答えになることをその場で思いついたか、知っていた。
計算の天才マーティン・ガードナーは777の二乗を計算するとき、まず777に23を足して計算しやすい800にした。彼は100までの二乗ならば答えを暗記していたので23の二乗は529だとすぐに分かった。
そこで、
(777+23)×(777-23)+529
=(800×754)+529
を計算し、603729という答えを瞬時に計算した。
800×754は3桁の掛け算だが、実際には8×754を100倍するだけなので暗算も易しい。方法は違いそうだが、ガードナーは5桁の掛け算も似たようなトリックで、瞬時に計算できたらしい。
累乗計算の世界記録保持者ウィム・クラインは100桁の数の13乗を2分以下で行うことができるという。彼は150までの整数の対数を丸暗記してこの計算に用いている。
膨大な量の答えの暗記、計算の分割方法の知識が計算速度を飛躍的に高める文化概念ツールとして機能していると著者は指摘する。日本の珠算の上級者は暗算のときに頭の中でソロバンを動かすらしいが、これもツールの例といえそうだ。
つまり、生物学的な数のモジュールの能力個体差は小さいが、概念ツールを持つ人、持たない人の能力差は歴然としてしまうということ。数学の天才は概念ツールが生み出している可能性があるというのがこの本の見解。
最近、数学の国際コンテストで上位の中国では、日本とは違った九九の記憶法が取り入れられているらしい。1を掛けるものは省略。3×5と5×3は、3の段でやったら5の段では同じことなので省略し、5×5からはじめる。これによって九九の暗記項目が81個から36個に激減すると同時に、掛け算の処理の内容の理解が深まるという。数学に強いインドでは力技で20×20まで暗記させるというが、こうしたツールの有無が、日本が追い抜かれた理由なのかもしれない。
■一人で取り組んだ時間
数学の達人を作り上げたのは、一人で意図的な訓練に取り組んだとんでもなく長い時間であるというのがこの本の結論である。達人はそうでない人に比べて圧倒的に、練習時間が長く、無数の概念ツールを暗記していたり、組み合わせて使う工夫の知識を持っている。
音楽大学における調査では、天才的奏者は1万時間の練習を経ているが、平凡な奏者は4千時間程度だったそうだ。そして大抵は、天才たちは好き好んで一人で練習している。同じように、教育においては数学の学習を楽しく行うことで、上手になる循環環境をつくることが大切だとする。
伝説のインドの天才数学者ラマヌジャンは、貧乏で進学できなかった子供時代、一人で分厚い数学の辞典「純粋数学および応用数学における基本結果概要」にでてくる5000の公式、方程式を丸暗記していた。あるとき、彼は自分の数に関する考えを手紙に書いて、ケンブリッジ大学の数学教授へ送る。これを書いた人物が天才であることは間違いないと判断されて、大学への道が開かれたそうだ。好きで一人で取り組むことが、天才への道らしい。
この本の後半では数学的思考を説明するための問題がいくつか登場する。電車の中で意味を一人で取り組んでみた。30分以上も考えて、やっと納得した問題が以下。
「
スミス夫妻には子どもが二人いる。ひとりは男の子だとわかっている。ではもうひとりが女の子である確率は?」(双子ではありません)
答えは3分の2
「スミス夫妻には子どもが二人いる。上の子は男の子、では下の子が女の子である確率は?」(双子ではありません)
答えは2分の1
二つの似た質問に対してなぜ答えがそうなるのか、異なるのか、直感的に分かる人は数学的思考ができる人なのだろう。どちらも2分の1だと思ってしまった私はまだまだダメでした。
ASTERIAは企業内の異種システムを上流で統合するEAI (Enterprise Application Integration) ツールの一種。会計システム、販売システム、生産管理システム、購買システム、社内イントラなどを連携させるプログラムを開発する。
・ASTERIA(アステリア)【データ連携・システム統合プラットフォーム】
http://www.infoteria.com/jp/product/asteria/index.jsp
ASTERIAの最大の特徴はこうしたEAIアプリケーションをアイコンを並べて線でつなぐビジュアルプログラミングによって短期間に開発できること。パワーポイントでシステム図を描く要領で、コンポーネントアイコンを並べてシステムの構成を作り、処理手順通りに線でつなげ、パラメータを設定するだけで、プログラミングが完了する。
あらかじめ、多様なシステムと連結するためのインタフェースや、出力フォーマット(RDB、XML、CSV、EXCELやPDFなどもある)が大量に準備されている。ASTERIAでは、設計すること=開発することであり、設計者はコーディングの高度な知識を必要としない。純粋にビジネスロジック部分の開発に集中できる。
最も便利なコンポーネントは「マッパー関数コンポーネント」と呼ばれるデータ変換機能。このコンポーネントでは左側の入力の項目に、任意の変換操作を行った後、右側の出力の任意のフィールドに差し込むことができる。こう書くと分かりにくいが、要はインプットとアウトプットの間のデータ処理をすべて記述できるわけだから、ほとんどのデータ処理プログラミングはこのマッパー上で作ることができる。
条件分岐や制御構造、サブフローや並行処理、例外処理もビジュアルで表現できる。システム構成と処理フローが図として残るから、膨大な仕様書は不要である。この図そのものがシステムの仕様になるのだから。
この本には試用版CDが付属していたので早速試してみた。ASTERIAはサーバとデザイナークライアントに分かれており、サーバはWebベースで管理することができる。クライアントはWindowsデスクトップアプリケーション。多少はルールを覚える必要があるが、CSVファイルに記述された顧客マスターデータから、特定の属性のお客さまリストを抽出して、メールを送るプログラム程度は30分もあれば完成してしまう。
大規模なEAI用途というよりは、むしろ、個人の定型業務の自動化に向いているようにも思った。単純な順次実行のバッチ処理ではなく、ある程度複雑な条件判断が必要なエージェントプログラムを、アイコンを線でつないでいくだけで手元で作ることができるのは、便利だ。
最終章にASTERIAの設計思想が開発者によって書かれているが、
「95点ルールと70点ルール」
「変わらないものから変わるものへ」
というお話がある。
世の中には、財務会計や生産管理のように間違いが許されない95点を求められるシステムと、うまくいかなかったら失敗から学んで次のフェイズで片付ければいい70点システムがあるという。一般にシステムの精密度は50点を70点にするのは簡単だが、80点を90点に、さらには100点に近づけていくには膨大なコストがかかる。すべてを銀行の基幹業務システム並みの完成度にすることは効率が悪い。
特にナレッジワーカーが日常使う情報系システムは、非定型的で変化要因が多い。95点のツールを完成させても、時代遅れのシステムでは成果が出せない。70点のシステムをすぐさま状況に応じて設計できることは大きなメリットになる。ASTERIAの活躍の場は、変化の速い、70点でも動くシステムが求められている場なのだと結論されている。
まったくその通りで、私の日常の情報処理も、まさにそうした70点ツールがいっぱい欲しい。今は暇を見つけてはPerlやPHPなどのスクリプト言語で、自分専用の自動化ツールを開発したりしている。だが、やりたいことに追いついていないし、情報のターゲットがしばしば変化してしまうので、やり直しが多い。
たとえば、一般の検索エンジンや、ECサイトのデータベース、ソーシャルネットワーク、ソーシャルブックマークなどのWebアプリケーションから情報を取得したいのだけれど、先方の仕様は良く変わる。一度ツールを作成しても数ヶ月で動かなくなってしまったりしている。作り直しはコードの読み直しになる。ただでさえその場しのぎのスパゲッティコードなので、再度、全貌を理解するのにも時間が掛かる。そのうち、メンテナンスをあきらめてしまう。引継ぎなど不可能だ。
ASTERIAのように図面設計すること=開発することになるツールであれば、修正も容易だ。ビジュアルプログラミングは、作ってみようかの心理ハードルも低い。まさに個人のナレッジワーカーにとって強力な味方になりそうだ。
ただし、ASTERIAの最大の欠点は価格だろう。販売代理店の情報を見ると300万円近くするようだ。現在はEAIツールとして、ある程度大規模な異種システムの上流統合の市場を対象としているらしいが、本当の需要は個人のナレッジワークにこそあると思った。
また、完成したアプリケーションをPerlなどのスクリプト言語にエクスポート(そしてインポート)する機能もあると、今までの開発スタイルと連続できてさらに便利になるだろう。これができればノンプログラマがプログラマと協働することが可能になる。
と、いろいろ感想を書いてみたけれど、ビジュアルプログラミングで情報業務系を簡単開発できるツールは、今まさに企業のナレッジワークの現場に特に求められていると思う。
・今日のイベントはどうでしたか?とアンケートメールを参加者に送り、サーバで結果を集計してEXCELファイルとしてイントラにアップロードし、担当者が開く
くらいのアプリが、必要なときにすぐ作れるASTERIAは便利である。こうした芸当を5人、10人がこなせるような会社であれば、導入の検討余地がありそう。
関連:
・ズバリ自動化 Waha! Transformer Personal
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003267.html
■カミングアウト。実はファンなのです。
テレビに出ない、ライブをやらない、J-POPの原型アーティストZARDの初ライブツアーDVD。
「2004年3月から行われたZARDの初のライブツアー“What a beautiful moment”の模様をオープニング映像からドキュメント映像に至るまでを収録した初映像作品。オープニング曲「揺れる想い」などヒット曲21曲を収録するほか、特典ディスクも付いた2枚組。」
歌詞が全曲テロップ表示されます。女性ファンのカラオケ対策としても有効。
収録曲:
1.揺れる想い
2.この愛に泳ぎ疲れても
3.もう少し あと少し…
4.あの微笑みを忘れないで
5.世界はきっと未来の中
6.You and me(and…)
7.もっと近くで君の横顔見ていたい
8.明日を夢見て
9.瞳閉じて
10.心を開いて
11.あなたを感じていたい
12.愛が見えない
13.Today is another day
14.来年の夏も
15.My Baby Grand−ぬくもりが欲しくて−
16.君がいない
17.マイフレンド
18.負けないで
19.Pray
20.止まっていた時計が今動き出した
21.Don't you see
【ポイント 1 歌が上手】
まず、感動したのは、ちゃんと歌える歌手だったということ。ZARDがライブをやらないのは、坂井泉水がスタジオでしか歌えないアーティストだからなのではないか、とずっと疑っていたのですが、はっきり違うことが分かりました。CDの声と同じように、きちんと高音まで伸びていて拍手です。何回かギターやピアノ伴奏だけで歌うシーンも収録されています。
録音も音質を重視しており、音楽だけiPodへ持ち込みたい気分です。
【ポイント 2 初々しい】
芸歴が長いアーティストなのに久々のライブで緊張しているのが丸見えで初々しい。最初から最後まで表情は硬く、姿勢も直立不動です。
MCはほとんどありませんが、
・「桜が満開できれいですね」と無難すぎる挨拶
・「良かったら一緒に歌ってください」というありがちな呼びかけと危うげなフォロー
・歌詞を間違って舌を出す癖
・後半でイヤホンの音量が弱いのか耳を押さえた後、不安そうにサビを歌う
など初々しさは見所。
特に特典DISCのEXTRA SHOT Part1は歌詞間違いのハプニング集になっており、必見です。何十回間違えたのでしょうか。会場からは思わず「頑張れー」という声が聞こえます。涙目になっているように見えるシーンもあり、頑張ってます。
【ポイント 3 素顔が分からない】
このDVDの唯一の欠点で最大の特徴は坂井泉水のアップショットが皆無であることです。坂井を今まで通りミステリアスなままにしておく演出のようですが、これはネット上の評価は当然賛否両論あるようです。私はむしろこれでよかったのではないかと思いました。今更、本当の坂井のキャラクターがどんなものであれ、映し出されてしまうと、多くのファンは違和感を持ってしまいそうです。
最後に一言。
構成としてはヒット曲ばかりの曲目、初日と最終日、各地のアンコールを収録しています。バックのバンド(一部はZARDメンバー)の見せ場もたっぷり用意されています。10分近く坂井泉水なしで会場を盛り上げるシーンも良かった。アンコールを普段着っぽい白いセーター姿で歌うシーンはファンならドキっとするでしょう。
丁寧に編集されていて全体としてはすばらしい完成度。ファンなら絶対に買うべきです。
■ZARDのファンにお勧めの他の邦楽と洋楽
私は基本的には洋楽派で邦楽で聴くZARD、夏川りみ、AIKOが例外的な存在なのですが、要は少し甘めで澄んだ高音の女性ボーカルには弱いのです。他のアーティストのリコメンド。
・以前書いた好きなアーティスト評:私の好きな音楽たち
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000742.html
・夏川りみについて:文書アウトライン作成支援ツール iEdit
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000317.html
夏川りみはシングルコレクションCDが出ていますが、沖縄のルーツを味わうにはこのCDはおすすめ。森山良子作でドラマ主題歌にもなった「5.さとうきび畑」と、ヒット曲「涙そうそう」を森山良子、BIGINとの共演によるボーナストラックがベスト。
ZARDと対照的なライブ派のAIKOのDVD。関西人のノリの良さ全開。バラード「カブトムシ」ももちろんいいですが、やはりファンならば「5.アイツを振り向かせる方法」、「12.ミックス・ジュース」、「13.イジワルな天使よ 世界を笑え」でしょう。
甘めで澄んだ高音の女性ボーカルとして、洋楽ではデビー・ギブソンが大変、おすすめです。
米国におけるDebbie Gibsonの評価は良く分かりません。90年代に米国オレゴン郊外のショッピングモールでBGMとして掛かっていて「おや、やっぱり有名なのか」と思い、去年11月に中国北京のデパートでも流れていて「今頃中国で?」と不思議に思ったりしました。
アイドルとアーティストの中間的存在のようです。Debbie Gibsonの魅力を伝えるアルバムとしてはベスト盤よりもこれがいいでしょう。ただし恐らく彼女の代表曲「Lost In Your Eyes」はここにはありません。気にしませんが。
1 For Better or Worse
2 Didn't Have the Heart
3 Will You Love Me Tomorrow? (Carole King-Gerry Goffin)
7 Think With Your Heart
おすすめ曲は上記のバラードで、3曲目はキャロルキングの名曲カバーです。
甘め、高音の女性ボーカルの皆さんのおすすめを教えてください。
■おまけ、森山良子
上記で森山良子の「さとうきび畑」が出てきたが、これが使われたのはこのドラマ。
最近、原爆や沖縄戦のドラマをいくつか紹介したけれど、明石家さんまと黒木瞳が夫婦を演じるこのドラマも良かった。
・「アトミック・カフェ」と「美しい夏 キリシマ」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003460.html
・父と暮らせば
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002020.html
そして森山良子といえば、「あなたが好きで」。これもドラマ「夫婦。」の主題歌に使われたそうですが、コンサートではアンコールで歌う隠れた代表曲だそうです。
私がこの曲を知ったのは昨年のTBS番組ミュージックフェア21。
頼りなく歌いだしたので森山良子の声もさすがに年齢には勝てないか、と油断していたら全体を盛り上げるための見事なダイナミクスの計算で、歌詞のドラマへぐいぐい引き込んでいき、
「
あなたを愛して 私は生きてる
あなたと出逢って 私は生きてる
」
のサビの絶唱で思わず身震い。このオバチャンやはりタダモノでないことを思い知らされた次第。これといったヒット曲もないのに紅白に連続出演しているのも伊達ではないのでした。さすがJ-POPの元祖!
・Poderosa
http://ja.poderosa.org/
Poderosaはタブ型GUIを備えたターミナルエミュレータ。
オープンソース形式で開発されている。機能は豊富。
「
・タブ式の GUI
同時に複数の接続を開いて作業を行う際に便利です。また画面を分割してそれぞれに別のタブを割り当て、2 つの接続を同時に見ることもできます。さらに、3 分割画面にも対応しています。
・多様な接続方法
Telnet,SSH1,SSH2 はもちろん、シリアルポート接続およびローカルの Cygwin シェルや Microsoft Windows Service for UNIX シェルのホストもサポートしています。
・エスケープシーケンス対応
VT100 と xterm のエスケープシーケンスのほとんどをサポートし、罫線等の表示や UTF-8 エンコーディングも対応しています。
・充実のオプションとツール
SSH2 ポートフォワーディングツール、SSH 鍵作成ウィザード、SOCKS サポート、IPv6 サポート、ログファイル名自動付加をはじめ、ターミナルの作業を楽にする多くの機能が搭載されています。
・強力なマクロ機能
JScript.NET などの .NET 対応言語でマクロを記述することができます。ターミナルを使ったいろいろな作業を自動化できます。マクロで JScript.NET および .NET Framework のすべての機能が使えるため、外部のファイルやデータベースへのアクセス、正規表現、例外処理など強力なマクロを記述できます。
↑
」
個人的にはタヴ型GUIとCygwinシェル機能が便利だと感じている。
長い間使っていたターミナルエミュレータ TeraTermともそろそろお別れかもしれない。
・CygwinシェルをTeraTermで使うCygterm
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001755.html
・添付ファイル便利ツール プラグイン for Becky!2
http://www.vector.co.jp/soft/win95/net/se202664.html
メールソフトは長年Becky!を愛用している。
このプラグインは長い間、これができたらと思っていた機能を実現してくれる。
それは、
・過去に受信した添付ファイルの一覧リストを作成する
機能である。
メールに添付されたファイルは受信したときに別に保存しておかないとなくなってしまいがちだった。大量の過去メールから探そうとしても、標準機能では添付ファイルだけをリスト表示することができない。検索が難しい。「ご無沙汰しております」というタイトルメールに「決算書」という添付ファイルがついている場合のように、メールのタイトルとは無関係な重要添付ファイルがあったりするので困っていた。
そこで、このプラグインをインストールしてみた。
一覧を作成したいメールのフォルダ上で右クリックすると現れる添付ファイル便利ツールのメニューを選択すると、自動的に過去に受信したファイルの一覧が表示される。HTMLメールを除外する設定ができるのは助かる。ファイルサイズや日付でソートすることも可能。これで添付ファイルがどこかへ行ってしまう問題は無事解決できそうだ。
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http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002020.html
・インターネット広告革命―クロスメディアが「広告」を変える。
この本の主題であるインターネット広告革命の内容とは、
1 広告表現革命
ブロードバンドに対応した音声や映像によるリッチメディア広告や、ユーザとインタラクションするインタラクティブ広告など、広告表現の多様化。
2 ターゲッティング革命
ユーザの閲覧履歴分析やテキストマイニングの技術を使ってユーザの関心を割り出したり、配信時間帯を制御することで、視聴者層を絞り込む。
3 メディアプランニング革命
メディアミックス(異なる媒体の加算効果)からクロスメディア(媒体効果の乗算)によるメディアプランニングへ。
という3つのインターネット広告の変化から構成される。
ポスト・クリックだけでなくポスト・インプレッションも重視したブランド形成型の広告戦略が必要だという分析がある。
従来のWebマーケティングでは、投下した広告予算の効果を計測する指標はクリックレート(クリック数÷露出数)であった。つまり露出(インプレッション)しただけではダメで、即時にクリックされなければその広告の効果は評価されなかった。
しかし、最近のユーザの動向をWeb視聴率会社の調査データやアクセスログのデータから分析していくと、広告が即時にクリックされなくても、露出後一ヶ月以内に広告主のサイトへユーザが訪問する率が高いことが発見されたという。つまり、インターネット広告にもテレビCMのようなブランド認知の効果があり、露出効果も含めての広告戦略が必要になってきた。
具体的には米国ダブルクリック社のデータによると、2003年第2四半期から、
1 クリックスルー率
広告をクリックしてから広告主指定ページを訪問した比率
2 ビュースルー率
広告を見ているが、その場ではクリックせず、30日以内に広告主サイトを訪問した比率
の2つの指標で、後者が前者を上回る状況になったそうである。
即時にクリックされなければならない広告は、私流にわかりやすく言えば「ポン引き」みたいなものだと思う。その場でクリックさせる工夫はいろいろある。たとえば古い手法なら、バナー広告を押しボタン風にするとか「クリック」という文字を入れるだとか、破線で囲ってみるなど。こうした小手先の工夫のトレンドはめまぐるしく変化するが、それほど難しいことではない。
しかしネットユーザもリテラシーが高まってきてポン引きを見抜くようになったし、クリックしたからといって買うわけでもない。ポン引き広告の限界がきたのだと思っている。これは私自身も感じていて、たとえばよく知らないWebショップの商品広告バナーを見て商品がほしくなった場合、まず行くのはその知らないショップではなくて、アマゾンや楽天などの既に知っている「有名サイト」である。
以前、書評した「けなす技術」の中で切込隊長氏が、マス広告が消費者に選択肢を与え、選択肢からの決定にはネットが大きな影響力を持つ、ネットだけではマーケティング効果は期待薄だと書いていた。この本のメディアミックス(異なる媒体の加算効果)からクロスメディア(媒体効果の乗算)へというメッセージはそれに近いメッセージである。
テレビのようなマスメディアと、インターネットメディアを組み合わせて、ブランドを作ったうえでポン引きもやるのが賢いということなのだと思う。
・けなす技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003238.html
テレビとインターネットを融合させた広告キャンペーンが効果的と結論されている。
ネット上でのブランド認知という点では、ユーザに強い印象を与えるリッチメディアやインタラクティブ広告が、効果が高いとされていた。BMWのショートムービー広告キャンペーンの成功などが語られている。
最新の広告事情がわかって面白い本だったが、著者は博報堂資本の大手ネット広告代理店の副社長であり、要旨はもっと幅広く広告を出しましょう、特にネット広告の比率を上げましょうという結論だから、ある程度割り引いて考えないといけない部分もあるなと感じた。
特に映像や大きなサイズのFlashを多用したリッチメディア広告については、その商品に強い関心のある人には効果が確かに高いのかもしれない。たとえば今ならスターウォーズの予告編ムービーが3分間も見られるビデオ広告があったとしたら、私も見たい。クリックもするし商品も買うかもしれない。しかし、通常はそこまで強い関心を持つユーザにターゲッティングしマッチングを成功させるのは至難の技なのではないか。スターウォーズのようなロイヤリティが確立されたブランド商品は数が少ないのだから。
むしろ、インターネット広告の未来は、リッチメディア広告のように”ユーザを捕まえる”ものではなくて、アドセンス、アドワーズのように広告であることをなるべく感じさせず、そのページの情報価値を高める(関連度の高い広告情報表示)ことで、”ユーザが捕まえる”ものであるような気がしている。
サイトを見て何かを買うというプロセスの間に、何らかの広告があったことをユーザが意識することがない、というのが究極的なインターネット広告ではないだろうか。
この本の一節によると、現在のインターネットのトラフィックの4割から6割がファイル交換ソフトによるものだそうだ。その内訳は動画が38%、音楽20%、画像17%。インターネットは実は動画をP2Pで交換する用途に一番使われているのだ。これにはちょっと驚く。
■P2Pという概念の整理
かつてナップスター全盛の頃、IT業界ではそこかしこで新型P2Pのアプリケーションについてブレストが行われていた。参加者はP2Pを音楽ファイル交換以外で使う方法を考えるわけだが、
・P2Pで2ちゃんねる形式の掲示板
・P2Pで楽天
・P2PのWeb検索エンジン
・P2Pで分散スーパーコンピュータ
・P2Pで電子メールのやりとりができるアプリケーション
などなど、アイデアは次々にでてきた。
だが、99.9%のアイデアは、それってP2Pでなくても良いのでは?とか、それはP2Pと違うのでは?などの理由で却下されていき、最後は皆で「そもそもP2Pってなんだっけ?」というオチにはまり込み、こんがらがったままタイムアウトするのが常だった。
パソコン同士をLANで相互に接続するのもP2Pだし、インスタントメッセージを送りあうのもP2Pだし、音楽ファイルを共有するのもP2Pである。SkypeのようなP2PでIP電話を実現するケースもあるし、宇宙からくる電波を分散コンピューティングで解析するのもP2Pだった。P2Pという言葉にはいくつもの異なる意味が混在している。
P2Pという言葉の意味をこの本はうまく次の3つに整理している。
1 Peer to Peer(PCとPCをつなぐP2P)
2 Person to Person(人と人をつなぐP2P)
3 People to People(利用者の利用者によるP2P)
この定義では、クライアント/サーバ型のシステム上で実現されていても(たとえば電子メール)、2や3であればP2Pである。実現技術の仕組みに限らず、もっと広くP2Pをとらえようとしている。そして、P2Pファイル共有アプリの著作権侵害の問題や、セキュリティの問題についても考察されている。P2Pの全体像を知らない人にも伝わるように、包括的に書かれていて、参考になる。
■P2Pアプリの最新事情をわかりやすく
後半は具体的に最近流行しているP2Pアプリケーションを紹介している。動画配信のKontiki、巨大ファイル配信のBitTorrent、P2P電話のSkype、写真交換のHello、音楽コミュニティのMercora、コラボレーションツールのGrooveなど。P2Pアプリケーションについてはヘビーユーザ向けのIT雑誌以外では真面目に内容が説明されることが少ないので、こうしたビジネス書で丁寧に説明してもらえるのは、ネットのマニア層ではないビジネスマンにとっては特に助かるだろう。
(幸か不幸か私はマニアだったため...)多くのアプリについては実際に使ったことがあったが、ひとつ知らないアプリの名前が出ていた。調べてみたら大変興味深いものであることがわかった。P2Pで地震情報を共有するアプリケーション。
・P2P地震情報 - 地震情報を自動でチェック
http://www11.plala.or.jp/taknet/p2pquake/
「
当サイトでは、次の3つを「P2P」によって実現しよう、という試みを行っています。
気象庁の地震情報を自動でチェック(P2Pで伝達することで気象庁Webサーバーへの負担を減らす)
ユーザーによる「揺れた」という情報の発信・共有(より早く地震発生を知る)
地震に関する情報の共有
いわゆる「地震情報チェッカー」です。普段はタスクトレイに隠れているので、常駐させておいても邪魔になりません。また、P2Pだからといって「怪しい」「違法」といった心配はなく、むしろP2Pによる様々な利点を感じていただけると思います。
」
この仕組みを使うと気象庁の発表よりも早く実際の地震発生を知ることができるという。気象庁の公式大本営発表と草の根の地域報告を融合させた点がP2Pらしくて面白い。
■P2Pグループウェアの可能性?
もっと真面目に考えてみると、Grooveのような実名グループ内ファイル共有は、現在のクライアント/サーバ型から置き換えられる可能性があると感じている(3ヶ月使ってみての感想)。アリエル・プロジェクトAのような、各自の手元の最新情報を全員が同期するスケジューラーやグループウェアもP2P移行がありえるのではないだろうか。
・Groove Virtual Office
http://www.groove.net/home/index.cfm
マイクロソフトに買収されたP2Pグループウェア。共有フォルダがユーザ間で同期する。ファイルをアップロード、ダウンロードという概念がなく、放っておけばグループ全員のフォルダの内容が同じものになる。
・複数プロジェクトを一元管理できるプロジェクト管理ソフト「アリエル・プロジェクトA」- Ariel Networks
http://www.ariel-networks.com/product/project_a/index.html
ファイルや情報をサーバに登録する手間、ファイルを指定して送りあう手間がなくなるのはとても便利だ。マイクロソフトはGrooveを買収している。Windowsの”マイ フォルダ”の隣に”アワ フォルダ”などというフォルダが登場する日も近いのだろうか。
・P2Pビジネスブログ
http://www.ariel-networks.com/news/
著者の徳力さんは、P2Pコラボレーションソフト開発のアリエルネットワークスのメンバーで、P2Pビジネスの充実したブログを運営している。必見。
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http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002154.html
世間で広く使われている心理テストの多くが根拠のないニセモノで当てにならないことを説明してくれる本。誰もが就職の適性検査や性格診断で一度は受けたことがあるような有名なテストが次々に槍玉に挙げられる。
そうか、やっぱりあれは嘘なのかと納得。
■統計的に嘘だらけの心理テスト
1 血液型で性格を分類する「血液型人間学」
2 インクのしみを見た感想で精神状態を分析する「ロールシャッハ法」
3 単純な大量の足し算の出来具合から性格を分析する「内田クレぺリン検査」
4 質問にYESかNOで答えさせ性格を分類する「YGテスト」
5 血液型人間学が嘘というのはもちろんわかっていたが、
こうした心理テストは意味がないのだと著者ははっきりと述べている。血液型人間学でA、B、O、AB型はそれぞれの特徴的な性格を持つとされる。だが、実際の性格特徴と血液型の相関関係を調べてみるとほとんど一致しない。ただし、調査数が多いとたまに有意度5%の相関が見出せることがあるが、これは当然の確率で発生する誤差に過ぎない。
スポーツ選手や政治家にO型が多いというような調査データにもとづく、職業と血液型の証明についても、毎年調べると、その年が例外であったことがわかる。血液型人間学の支持者たちはたまたま多かった年度だけを取り出して根拠としているだけなのだ。
血液型人間学や占星術のようによく知られたテストでは「知識の汚染」も発生する。被験者が既にA型らしさやてんびん座の性格を知っているために、答えが誘導されてしまう。就職試験では望ましい答え方を受験者は知っている。本当の性格がテストに現れないことが多い。
■バーナム効果のまやかし
YGテストのように
「あなたは人に好かれ、尊敬されたいという強い欲求があります」
「あなたは自分自身を批判する傾向があります」
「あなたには使われていない潜在能力がたくさんあります」
というような記述に自分が当てはまるかどうかを答えさせる心理テストは多い。
そこでは誰もが当てはまるような一般的な性格記述を自分だけに当てはまるとみなしてしまう現象が起きる。占いの診断結果を信じてしまうのと似ている。
明らかに間違っている心理テストがなぜか現場では当たっているように思われる理由のひとつが、誤診率と基礎確率の問題にある、という説明は面白い。たとえば70%の誤診率で精神病者を見分ける心理テストがあったとする。そのテストを精神病院が採用し、90人の精神病者と10人の正常者がやってきてテストを受ける。
すると27人の精神病者が正常者と診断され、3人の正常者が精神病者と診断される。3割は誤診である。一方、心理テストを使わず100人全員を精神病者だと決め付けた場合、誤診は1割である。バーナム効果を持つテストを使うと、全員がイエスと答える結果になるわけだから、決め付けたときと同じで高い精度のテストのように見えてしまう。
ポイントは精神病院には高い基礎確率で精神病者がテストを受けに来ることにある。そのような環境では自分だけに当てはまるように思える一般的記述のテストは、成功しているように見えてしまう、まやかしが生じる。これをバーナム効果というらしい。
テスト業者が儲けるのはともかく、こうした無根拠で当てにならない心理テストで、就職や昇進が左右されるのは大きな問題だと著者は指摘している。
・SETUNA Easy Scrapping
http://www.clearunit.com/clearup/setuna/
デスクトップ画面の任意の領域を画像ファイルとして簡単に情報スクラップとして保存できるツール。今表示している画面のこの部分だけを置いておきたい、誰かに送りたいという時に、画像化は手っ取り早い。文書に貼り付け再利用するのもるのも用意になる。
Setunaを起動したらCTRL+1キーを押すと範囲選択モードになる。任意の領域を矩形選択するとスクラップが行われる。切り取った画像はデスクトップ最前面に表示される。あとは右クリックメニューで保存やクリップボードへコピーできる。
気が利いているのは特に指定しなければ保存を選ぶだけで、ファイル名、スクラップの日時がファイル名として保存されていく点。ファイル名を考えないで良いのでどんどんスクラップできる。
最前面に表示されるスクラップは表示倍率変更で、縮小してデスクトップに置いておくこともできる。複数のWebページに解説文章を書くような作業で使うと、完了したスクラップから消していけば、デスクトップ作業の進捗が目に見えてわかって便利だろう。
シンプルで使いやすい。
・キャプチャツール:キャプラとCaptureStaffLight
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002447.html
・Webを連続キャプチャして画像化するWebSwoon
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002619.html
来週、NetWorld+Interop Tokyo 2005が日本コンベンションセンター(幕張メッセ)で開催されます。12年目となる今年は、“ユビキタスを支えるインターネットテクノロジー”をテーマに、300社を超える出展企業による、最先端のインターネット技術が一堂に会します。
・NetWorld+Interop Tokyo 2005
http://www.interop.jp/index.html
6月8日(水)のカンファレンスプログラムのひとつとして「インターネット検索技術にせまる!」という8時間に渡るセッションがあります。この中で約90分ほど「検索の未来」というテーマで講演させていただくことになりました。
ビジネスカンファレンスということで、参加費用はコンファレンス 1日間コース通常料金39000円〜と企業参加向きの価格設定となっていますが、日本の検索技術の最先端を知ることのできる1日になると思います。ご関心のある方のご参加をお待ちしています。
■インターネット検索技術にせまる!
- ネットから価値を引き出すあの技術,この技術 -
Information, Searching Technology in the Internet
・コンファレンススケジュール6月8日(水)W16
https://ssl.medialive.jp/ni2005fm/conference/schedule.html
Moderator / Speakers
【Moderator】
外村 佳伸
NTTコミュニケーション科学基礎研究所
【Speakers】
奥村 学
東京工業大学 精密工学研究所
http://www.lr.pi.titech.ac.jp/~oku/
竹野 浩
NTTレゾナント株式会社
相良 毅
東京大学 生産技術研究所
橋本 大也
データセクション株式会社
世界中のWeb情報に容易にアクセスできる時代となった現在,その情報を活用する新しい技術,サービスが次々に生まれつつあります.WEB技術はインターネットの急成長を演出したいわゆるキラーアプリケーションといわれています。 WEB技術の普及に伴い、インターネット上の計算機が相互接続されるだけではなく、各計算機が持つデジタル情報の共有が可能となりました。 その結果、莫大な量のデジタル情報を、インターネット上のどの計算機からもアクセスすることができ、かつ収集・加工することが可能となりました。 その結果、このような莫大な量のデジタル情報から、必要な情報を検索しユーザに提示する「インターネット検索技術」が必要になったのです。YahooやGoogle、あるいはGooなど、最先端の情報検索技術を駆使した検索サイトや検索エンジンの研究開発と商用展開が行われています。
本ワークショップでは,最も基本となる検索エンジンの仕組みから,マルチメディア検索などの最近の高度化技術,さらに検索結果をもとにした情報抽出や自動要約などの検索応用技術,サービス実験などについて,研究や技術開発の一線で活躍している専門家が解説を行います.さらに,インターネット検索技術が今後どのように進展していくのか、あるいはどうあるべきかなどについての将来展望をユニークな視点から展望します。
1.インターネット検索の概要
・インターネット検索の動向(グローバル指向と特化型指向)
・最近のトピック(blog,RSS、デスクトップ検索等)
2.検索エンジンの世界
・検索エンジンの仕組み、機構(ロボット型、ディレクトリ型)
・高速化技術の概要
・マルチメディア検索技術の概要
3.検索応用
・情報抽出技術、マイニング技術、等検索応用技術全般
・アプリケーション事例(地図情報を活用したサービス実験)
4.検索システムの将来像
・インターネット検索技術の将来展望
・ユーザの視点から見た希望、指摘等
・検索技術の仕組みに興味のある方
・実際に検索技術を必要としている方
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http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002440.html
今週のテーマは「パーソナルナレッジベースの構築と運用」。さまざまな情報収集手段を使って集めた情報を手元に取っておく方法論についてです。Webやメールで見つけた雑多な情報メモをデータベース化する方法にはまだこれといったやり方や定番ツールがありません。
この授業ではそうした知識のデータベースをパーソナルナレッジベースと呼びました。それにはどのような機能が必要であるかを、考察しました。
今回はまず
「
設問:あなたはホームページで面白くて役立つ情報をみつけました。
1 その情報を「忘れない方法」を各自10個以上考える
2 グループ内発表、ベスト10アイデアをカードに記入する
3 グループ成果を全体に発表する
」
というワーキンググループを行いました。忘れない方法を事前に考えることでナレッジベースに求められる要素を考えてみようという狙いがありました。
この記事の最後に発表されたリストをつけました。たくさんのユニークなアイデアが出ていました。
この後、講義。プレゼン資料を公開します。
この資料はパワーポイントを「いきなりPDF FlashPaperでFlashに変換しています。PDF版はこちら。
・デジハリ大学「リサーチ&プランニング」 第1回講義録
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003335.html
・デジハリ大学「リサーチ&プランニング」 第2回講義録
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003378.html
・デジハリ大学「リサーチ&プランニング」 第3回講義録
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003409.html
・デジハリ大学「リサーチ&プランニング」 第4回講義録
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003440.html
■学生が発想した「忘れない方法」60件。
グループA
種類別に貼り出す
料理の情報 → 冷蔵庫
本の情報 → 本棚
体で覚える
日記やブログに書く
整理する
ケータイで送る
未来日記
検索で上位に出るようにする
他の人に話す
デスクトップに貼り付ける
印刷して郵便で自分に送る
グループB
空間に配置する
みんなに覚えさせる
メールやポップアップが毎時表示される
情報を他と関連づける
スクリーンセーバとして表示する
壁紙として表示する
サーバに保存
紙に印刷しておく
セックスの最中に記憶する
グループC(アナログ、デジタル、アナログ+デジタル、で分けた)
アナログ
毎日、その面白くて役立つ情報の要点を手で1回書く癖をつける
ファン要素の付加価値をつける
オウムに要点を吹き込ませる
脳の働きをよくするドーピング(ドコサへキサエン酸)
刺青に要点を入れる
何かに関連つけるスイッチ(たとえば、おいしいオレンジがあったら、デジハリと関連付ける)
-----------------------------------------------------
デジタル
パソコンがスタートした直後にワードを起動するように設定して、その中に要約した情報を書いておく
目覚まし時計にボイスで吹き込んでおく
ランダムで、その情報の要点が書いたメールが送られるように設定する
-----------------------------------------------------
アナログ+デジタル
面白くて役立つんだからその役立つ情報を実践してみる、そして、その実践してみたことをブログに書く(共有)、面白くて役立つんだから誰かしらかフィードバックが得られる、記憶に定着する。
グループD
知り合いに話をする(アウトプット共有化)
形で残す(写真やコピーなど)
実際にその情報を使ってみる
その情報の中でさらに詳しく調べたいものを調べる、発信する
ページをお気に入りに追加
携帯電話の待ち受け画面に書いておく
異性に耳元でささやいてもらう
世界の中心で叫ぶ
その情報を絞り込む
グループE
友達にも教える
紙にメモを書いておく
その役立つ情報を使って何かやってみる
寝ない
プリントアウトしてトイレに貼る
デジカメで撮る
HP、ブログを使って一般に公開する
メールのタイマー機能を使って思い出したい日時めがけて自分の携帯に送信する
他のメディアにバックアップをとる
情報にイメージをつけてセットで覚える