数学的思考法―説明力を鍛えるヒント

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・数学的思考法―説明力を鍛えるヒント
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■論理と背景で説明力を鍛える

世界のソフトウェア企業ランキング上位100位の半数近くがインド系企業だという数字とその理由が考察されている。日本では9×9までの掛け算の暗記を、数学大国インドでは20×20まで覚えさせるという有名な話がある。だが、単に暗記量が多ければよいということならば、数学者は皆、桁数の多い掛け算を暗記しているはずだし、暗算が得意なソロバンの使い手もインドのように優れたソフトウェア開発者になっていておかしくない。
インドの教育では、たくさんの計算結果を暗記させると同時に、その理由や説明もたくさん考えさせているのが、数学教育で成功した理由なのだとする。日本の教育では、できるだけ少ない計算例から「やり方」だけを抽出しようとしている。インドでは多数の計算例から「論理」や「背景」を学習させている。だから日本人は「やり方」を忘れてしまうと問題が解けなくなってしまうが、インド人はやり方を忘れても一から考えて答えを出すことができるようになる。

「ゆとり」の確保のために暗記量を減らして少数の結論だけ暗記させても、自分で考えることはできるようにならない。暗記や計算練習を通して目指すものは計算力ではなくて、それがどうしてそうなるのかを説明できるようになることだというのが著者の見解である。

日本では1と2とnの場合で考える。しかし、1と2と3とnくらいまでの場合を常に考えてみるのが、説明力強化につながるのではないかという。

■ひらめきの法則

ひらめきについてなるほどというまとめがあった。


結局のところ、他人には偶然性を強調して格好良く話している「ひらめき」でも、実際のところはさんざん考え抜いた蓄積のほんの少し上に、ふっと気がつく一瞬のことを言うようである。

思わぬ出会いや失敗から何かを偶然に発見したというセレンディピティも、本当は偶然ではないはずだという指摘。日常試行錯誤を繰り返している人が、単純なミスや人との出会いという決定的な刺激を得て、大きな発明や発見を達成している。ただ偶然を待っていてもひらめきは訪れない。「しばらく考えた経験」があると点や線が面として見えるようになるから、大切なのはできなくても考えておくことなのだという説。

■じゃんけんをするとき、人間が出すのはグーが多くチョキが少ない

著者が実験室で725人の学生に延べ1万1567回のじゃんけんをさせて作成した統計では、

グー  4054回
パー  3849回
チョキ 3664回

という状況であったらしい。じゃんけんでは有意水準1%でグーが多くてチョキが少ないのだ。

理論上はじゃんけんの統計はグー、チョキ、パーが3分の1ずつ出されるはずである。だが実際にやってみると違う。人は他人を目の前にすると警戒して拳を作る傾向があることや、チョキの形の手はグーやパーよりも作りにくいことなどが影響しているのではないかと理由が挙げられている。

こうした現象を説明する際、数字のデータ(証拠)と、その理由(論)はどちらも大切で、必ずしも「論より証拠」ではなく「証拠より論」が有効なときもある。データだけ分かっていても本質的な対策が講じられない。論と証拠の両方から面として説明することが重要である。

他にもたくさんの数学的な思考の応用が紹介される。

要旨は試行錯誤と説明力が大切だということ。

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このページは、daiyaが2005年5月15日 23:59に書いたブログ記事です。

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