知の編集術
編集工学の大家、松岡正剛著。
入門書の体裁をとる割に懇切丁寧な説明は少ない。だが編集とは何かについて考えたことのある人なら、深めるヒント、素材に満ち溢れている本だと思う。
■遊び、編集
編集について冒頭でこんな定義をしている。
編集は遊びから生まれる
編集は対話から生まれる
編集は不足から生まれる。
と生まれる場所をまず並べ、その特徴として
(1)編集は「文化」と「文脈」をたいせつにする
(2)編集はつねに「情報の様子」に目をつける
(3)編集は日々の会話のように「相互共振」をする
を挙げる。
編集とは照合であり、連想であり、冒険である。
という。
この本のいう編集とは編集者の仕事だけではなく、旅行の計画を立てることや、デザインをすることや、対話をすること、あるいは生きることそのものを含めた大きな意味での編集行為である。
短い言葉だが深さを感じる要約だ。
著者によれば、生まれる場所として最初に出てきた「遊び」こそ編集の本質である。遊びには「自己編集性」と「相互編集性」があるからだ。非常に興味深いカイヨワの4分類が紹介されている。世界中の遊びの要素を4つに分類したもの。
・カイヨワの遊びの4分類
(1)アゴーン 競争
(2)アレア 運と戯れる
(3)ミミクリー ごっこ遊び
(4)イリンクス 眩暈、痙攣、トランス状態
こうしたやり方で、自分や他社と戯れることに編集の基本があるのだと説明されている。
■編集の極意のリスト
この本の面白さは箇条書きになっているこうしたリストにあると思う。
たとえば、情報を要約編集するモードには以下の6つがある。
エディティングモード
重点化モード ダイジェスト
輪郭化モード アウトライン
図解化モード 2,3枚の図
構造化モード 考え方の関係
脚本化モード 別のメディアに変換
報道化モード ニュースとして伝える
「らしさ」を伝える略図的原型には
ステレオタイプ(典型性)
プロトタイプ(類型性)
アーキタイプ(原型性)
の3タイプがある。(これも深い)
プレゼンのスタイルには、
言明型のプレゼンテーション・スタイル
暗示型のプレゼンテーション・スタイル
という2種類があるし、
ジョージ・ルーカスの定番プロットは結局、
原郷からの旅立ち
困難との遭遇
目的の察知
彼方での闘争
彼方からの帰還
なのだと看過する。
圧巻は、「編集8段錦」、「12の編集用法」に続く「64の編集技法の作法」。この64項目に及ぶ編集技法はおよそ情報に対して人間が行える操作のすべてを網羅していると思った。ちょっと感動して長時間眺めていた。こうしたリストもつまりは遊びなのかもしれないが、何かを生み出すための知識として貴重だと思う。
この本はあまりに多い情報量を新書の紙幅で提示したため、編集の神様の仕事とはいえ、理解しやすい教科書としては完璧とは言いがたい気はする。だが、懇切丁寧に教わるより、ヒント、素材を受け取って、あとは自分で考える方が実りが多いということ、なのかもしれない。
そうか、これは問題集なのだと途中で気がついた。課題提示も多い。
各章で気づきがあり、結局30枚以上のポストイットでマーキングだらけにしてしまった。編集や企画で悩んだことのある人ならば、ピンとくる内容が散りばめられていると思う。
緻密で大きな編集工学の体系をそのまま受け取るのではなく、自分なりに編集して学ぶことができるように著者が深い配慮で編集した、なんていうのは、ちょっと傾倒、深読みしすぎであろうか(笑)。
・ 書評「千夜千冊」、新書マップ、Amazon Search
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001824.html
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こんにちは!
なかなか奥が深そうな1冊ですね。
ブログとはいえ、毎日何かしら書いていると、
興味の世界がどんどん広がっていきます。
長いお休みで挑戦してみようかなと思います。
すみません。
「看過」→「看破」
ではないでしょうか。