伝わる・揺さぶる!文章を書く
■自分の立場を発見する
ブログでこうして文章を毎日書いているとたまに「感動しました!」という読者からメールをもらえる。誰かの心を揺さぶることができたときは、嬉しい。毎日そんな文章を書けたらと思うが、なかなかそうもいかない。秘訣を知りたくてこの本を読んでみた。
文章のゴールの基準を著者は
「自分の書くもので人に歓びを与えられるかどうか」
におけと簡潔にまとめている。これは心から共感した。当たり前のことなのだが、
文章を書く上での心得として「自分の立場を発見する」ことの重要性が語られている。同じ発言でも読者が違った意味にとらえる可能性があるから、関係性に注意せよというアドバイス。この部分、事例で説明されているが、私にも同様な心当たりがある。こういうことだ。
私が小学生の頃の話。
両親が友人の家族を家に招いて、母がつくる夕食で歓談した。
こどもだった私は食べ終わった後で「今日はすごい豪華なご馳走だったねえ」と何気なくお客さんの前で話した。
私は率直に「今日の料理はおいしかったなあ」の意味だったのだが、お客さんが帰ってから母に怒られてしまった。「いつもの食事がおいしくないみたいに聞こえるじゃないの」というわけらしい。お客さんや父はどう思ったのだろうか知らないが、人の受け取り方はさまざまだと思った。
同じ文章が相手から見た自分の立場で意味が変わって受け取られる。特別な意図のない言葉が、人を喜ばせたり悲しませたりする。文章がうまい、へたの前に、読者との関係性を知ることが、良い文章を書く出発点になる、という。
これも共感した。
ブログは特にこれが難しいメディアだと思う。雑誌や単行本であれば、出版社や雑誌社の文脈や全体のテーマがあるから、立場は書かずとも明確になりやすい。一方、ブログは基本がテーマのない日記だから、自分の立場が読者にみえにくい場所だと感じる。検索エンジン経由でたどりついた読者にはなおさら文脈が伝わらない。
ブログやWebでは、書き手は、突然迷い込んだ一見さんがその記事だけを読んだらどう見えるか?も意識しておく必要があるなと思った。文脈のレイアウトデザインが感動の極意だと言えそうである。
■お母さんのひと言要約
この本、核心をついているなあと感動した箇所が何箇所かあった。
たとえば、見事な要約として例示される”お母さんのひと言要約”
「
息子 「俺は、別に彼女をしばる気はないんだ。彼女は自由だし、やりたいことをやればいい。だから、彼女が留学するのは、ちっとも反対じゃない。
ただここで問題なのは、彼女の動機だよ。安易な留学ブームにのっかってるだけじゃねえか。だいたい、そんな、あいまいな気持ちで留学したって、逃げてるだけじゃ.......」
母 「淋しいんだね、おまえ」
」
そう。そうなのだ。これこそ見事な要約なのだ。
息子は淋しいという言葉は一度も使っていないけれど、淋しいが真意に違いない。学校で習う要約術では「私は彼女の自立性を尊重するが考えが甘いと思う」あたりがマルをもらえる要約なのかもしれないが、それは本当は間違いなのだ。著者は要約とは根本思想と関係性が見えるように文章を短縮せよと述べている。
この”お母さんのひとこと要約」を自分のもやもやとした想いに対して行えることが、良い文章の秘訣なのだと感じる。
この本は、お願い、お詫び、議事録、志望理由などケース別の対策や、初心者から上級者までのクラス別技法の紹介が、小論文指導のエキスパートによって簡潔にまとめられている。
関連書評:
・大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html
・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html
・分かりやすい文章の技術
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・人の心を動かす文章術
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・人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
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・書きあぐねている人のための小説入門
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・大人のための文章法
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