2005年1月アーカイブ

・喪失と獲得―進化心理学から見た心と体
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何の本だろうかこれは?と最初は思った。

でも、とても面白い本だった。

人類はなぜいまのような性質を持っているのかについて、進化論の視点から、多様な考察を行った24編のエッセイ集である。数ページの軽いエッセイから、小論文と呼べる中篇まで形式は多様である。テーマも、言語と意識の誕生、憎悪と信仰、服従心理、病気と自然治癒能力、こどもの教育、政治、歴史と多岐にわたる。

だが、全体を通して一本芯が通っているので、通読することで著者の進化論の総体がパノラマとして浮かび上がる構造になっている。考えさせられることが多い。

■クオリアの私物化、感覚の進化、単一の自己

脳と意識の進化において「クオリアの私物化というプロセスがあるのではないかという。
クオリアとはこころに浮かぶ感覚のことである。この感覚には次の5つの性質があるとまず定義する。

1 所有者
  感覚は主体に属している
2 身体的位置
  感覚は常に指示的であり、特定の身体の部分を呼び覚ます
3 現在性
  感覚は常に現在進行中で完結していない
4 質的様態
  感覚はユニークで他の感覚と異なる
5 現象的即時性
  私の痛みは私が今そうした感覚を能動的に作り出している

こうした感覚は、単純な原始生物では、苦い成分を嫌って逃げる単細胞生物のように、ごく局所的反応をはじまりとする。やがて、進化した生物ではそれが神経で受け取られて反応を返すようになり、さらに人間では脳が受け取って情報処理行って反応を返すように進化してきた。

感覚の進化:

第1段階 刺激の部位で起こる局所的な反応
第2段階 反応は入力感覚神経を標的とするようになる
第3段階 反応は脳内で私物化されるようになる

第3段階では、反応は脳内で完結することができるのが大きな違いだ。私たちは自分で想像した何かに反応することができる。好きな異性を思い浮かべてうっとりしたり、好物の食べ物を想像してハラヘッタと思う。脳とこころによって、感覚はバーチャルなものになる。

なぜ感覚の私物化がおきたのか。それは刺激に対して短絡的に反応を返すことが、その生物個体の生存にとって妥当でない状況になったからだと著者は述べる。高等動物の生きる環境は、特定の刺激に特定の反応を返していればよいという単純なものではないからだ。この変化のおかげで、人間は仮想でシミュレーションを行ったり、不快を我慢して結果を出すことができるようになる。

そして、この諸感覚を統合する機構として単一の自己が登場する。これに対して、多重人格という症例がある。著者はこの特殊な病に一章を割り当て、単一でありながら多重の自己がありえるのか、を厳密に思考で検証していく。

■自閉症の少女が描いた絵は古代人の心を解明する鍵になる

著者は3万年前の洞窟壁画と、現代の自閉症の少女が描いた絵のタッチに多くの共通点を発見する。本書で例示される絵を見比べるとそれは一目瞭然である。どちらも拙い線画でありながら対象の動物の躍動感をとらえる自然主義的リアリズムを備えている。現代の一般の人間が描く絵とはどこかが違う。異質さが感じられる。

一般的に、私たちが絵を描くときには、まず頭で対象を言語化している。たとえばウマを描こう思ってウマらしい絵を描く。”ウマらしい”というのは、ウマというカテゴリの表徴であり、言語理解が前提となっている。個別のウマを描く前にカテゴリのウマを描くのだ。

著者は古代人と自閉症の少女は言語能力を持たないが故に、この指示的で命名的な、言語表徴の性質を持たない絵を描くのではないかと立論する。そこには訓練を重ねて獲得されるような美術的技巧はひとつもない。遠近法だとか立体感を持たせる視覚的な騙しはなく、ただ目に見えたイメージを線で表しただけである。

知能は未発達ながら天才的な芸術能力を持つ、サヴァン(白痴の天才の意)症候群の患者が描く超写実主義的な絵とも、特徴が異なると著者は指摘する。サヴァン症候群で写真のような絵を描く画家たちは、成長の過程で必ず先生に絵を習っている。サヴァンもまた自閉症の一種を伴うが、彼らは後天的に絵の技巧を学習した結果、天才的な画才を手に入れている可能性が高い。

つまり、自閉症の少女の絵は、言語や技巧と無縁の、古代人の絵と同じものなのだと著者は結論する。もしこれが真実ならば、私たちは古代人の心や、脳と意識の進化の過程を解明する極めて有力な糸口を発見したことになる。

■超美人と大天才の数が少ない理由

目の覚めるような美人や大天才はなぜ数が少ないのか。

ダーウィン進化論が真実ならば、私たちは自然の淘汰圧を受けて最適化されている。長い年月の淘汰と突然変異に磨き上げられて、今の私たちは今の環境に対して最も最適化が済んでいる完璧な生き物に近いはずである。

美人の定義は文化的な影響による変遷もあるが、つまるところ、左右対称な顔であり身体であるとよく言われる。完璧な左右対称を妨げるのは、寄生虫や病気や怪我である。逆に言えば左右対称を維持している個体はそれだけ健康で強いのだ。進化の最先端にいる私たちはみな同じように強いはずでもある。だが美人は少ない。

実は美人はあまりに容易に異性を獲得できるために、その他の能力開発を怠る傾向があるのではないかと著者は仮説を提示する。肉体的魅力の欠如は、その他の能力を伸ばす原動力になっているという説だ。社会的成功者は、これまでの進化論的に言えば、美男美女で埋め尽くされてもおかしくない。だが、実際にはそうはなっていないことからも、この仮説はなんとなく正しいかもしれないと思える節がある。

大天才も数が少ない。知力が人間社会の生き残りに重要な能力であることは疑いがなく、天才の数はもっと多くても不思議ではない。だが、大半の人類はIQ100に達しない。平均点の付近に多くの人間が分布する。

いくつかの実験で、記憶力と抽象化能力はトレードオフの関係にあるという事実が証明されたと著者は事例を持ち出す。脳の容量が少なかった古代人は見たままを記憶する能力に長けていた可能性がある。だが、たくさんのものごとを束ねて覚える抽象化の能力を発達させたグループがいて、単純な記憶力を持つグループを凌駕したというのが著者のもうひとつの仮説。

つまり、飛びぬけた美貌と、突出した知力は、実は隠れたコストがあって、その所有者たちは必ずしも進化上の勝者ではない可能性がある、というのだ。これが正しいならば、健忘症で、不器量で、鈍くさい人類が本当は勝ち組である。

■プラシーボ効果による自然治癒力

病は気からという。東洋医学だけでなく、西洋医学も、患者本人の自然治癒力の助けがなければ、直る病気も治らない。医療の本質は、身体が自ら直ろうとする力を助けることだ。偽の薬でも効くと思えば免疫系が発動し、化学物質や外科治療の介在なしに、効いてしまう(プラシーボ効果)。

では、なぜ自然治癒能力は病気になったら毎回すぐに発動しないのか?。これは良く考えると不思議な話だ。たまに深刻な癌まで直せるケースもある一方で、大半の患者は死んでしまう。誰にもある力なのに、なぜ常には使われないのだろう。

プラシーボ効果は常に外部の人間やきっかけがスイッチをオンにする。他の誰かに騙してもらわないと発動しない。

著者はプラシーボ効果の発動要因を「個人的体験」、「合理的な推論」、「外部の権威」の3つだといい、これらによって病気は必ず治るという信念をでっちあげるプロセスが必要だ。個人的体験は病気が偶然、何かのきっかけで治ることだから、確率的に滅多に起こらない。合理的な推論も一人では難しい。既に知っていることから演繹すれば、奇跡を結論しにくい。結局のところ、3番目の外部の権威が本質だという。

自然治癒力には隠れたコストがあると著者は指摘する。免疫系を病気の初期に発動させることはコストとリスクが高いのだ。放っておけばやがて直る病気に、全力で取り組むのはスペックオーバーだし、せっかくの安静必須のシグナルである痛みや不快感を、そうすべきでない時期に取り除くのは、逆効果である。いつ発動させるのが良いかは自分では不明である。進化の過程で、免疫系を過度に自己コントロールさせないように、その発動スイッチを、他人に渡しておくことになったのではないかと著者は述べている。

そして、その説を進めていくと、著者はプラシーボ効果で病人を治す、信仰療法治療家やシャーマンや占い師にも有益な役割を見出しているようだ。学者として、これはちょっとユニークだ。

■隠れたコストと冗長な進化の戦略

一見美徳で有利とされる性質には隠れたコストがあって、人類進化の能力の獲得と喪失に重大な影響を与えている、というのがこの本を通しての一大テーマといえる。

進化上、稀に先祖がえりが起きるのは、過去に喪失した性質は完全に失われたものではなく隠れているからだ。本当は遺伝子の発現スイッチがオフにされているだけで、その性質は代々受け継がれており、進化の袋小路に陥った際に、戦略的退化を行う機構を構成している。

私たちの進化機構は冗長で複雑なので、能力が最大値を取るということは、実は環境に対して最適ではない。何らかの中庸的な値に抑えておいたほうが、進化上の有利を実現できるかもしれないというアイデアを著者は展開する。(やっと西洋人も中庸に気がついたか(笑)。)

著者の進化論は、まったく新しいものではない。これはリチャードドーキンスの利己的な遺伝子論に始まる、正統派モダンな進化論の延長線上にあるバリエーションである。この本のニコラス・ハンフリーはドーキンスの正当な後継者と言えそうだ。

ポストモダンな最新の進化論の場では、ドーキンスの意見に異論の声もあがっている。そうした批判の声に対して、ドーキンスの説をさらに推し進め、現代文化のディテールの解明にまで手をつけて、いやこういう説明が成り立つと反駁もする。ドーキンスは原理を打ち出し、ニコラス・ハンフリーはそれに肉付けをしている関係。最近の分子生物学や脳科学方面からの反論にすべて答えたというわけではない(相手にしていない?)が、分かりやすさではこの本はとてもよく書けている。面白いのだ。

前書きだかあとがきにもあったけれども、新書数冊分の内容が一冊に凝縮されている。上記のキーワードのどれかが琴線に触れた人にはとてもおすすめ。

・天才と分裂病の進化論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001298.html

・気前の良い人類―「良い人」だけが生きのびることをめぐる科学
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002095.html

・イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき
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この2年くらい、私の周囲の経営者、マネージャーが話題にする本。読んだのは1年前だが咀嚼できたのが最近なので、いまさらだが書評してみる。

基本的に名著であると思う。でも結論には少し言いたいことがある。

この本の主題のイノベーションのジレンマとは、優良企業はその優良さ故に失敗するという理論だ。

優良企業の特徴:

顧客の声に耳を傾ける
求められたものを提供する技術に積極的に投資する
利益率の向上を目指す
小さな市場より大きな市場を目標とする

優良企業はこうした特徴によって市場のリーダー、大企業になる。だが、やがて成功の要因だったこれらの特徴が”破壊的技術”の開発を妨げ、新興市場への参入に失敗し、最終的には市場を奪われる理由になる、という説である。

破壊的技術とは、既存の技術の連続的な性能向上である持続的技術と対比されるもので以下の原則がある。

破壊的技術の原則:

1 企業は顧客と投資家に資源を配分している
2 小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
3 存在しないニーズは分析できない
4 組織の能力は無能力の決定的要因になる
5 技術の供給能力は市場の需要と等しいとは限らない

破壊的技術と持続的技術の関係を検証するため、この30年間のハードディスク市場が冒頭で分析されている。

当初は巨大なメインフレーム時代でハードディスクも大きな14インチドライブが使われていた。勝者の企業は14インチの性能改善に取り組んでいた。だが、一方で新興企業は当時は市場ニーズが不明だった8インチドライブ開発に取り組んでいた。やがてミニコン時代となり、小さなドライブのニーズが大きくなる。かつての勝者企業は慌てて小さなドライブの開発に取り組むが間に合わず、新興企業に市場の勝者の座を明け渡す。だが、その頃には新たな新興企業がニーズ不明の5.25インチのドライブを開発している。デスクトップパソコンの時代が到来し、またもや勝者と新興企業が立場を入れ替える。だが、その頃には後にノートPCで使えることが分かるさらに小さなドライブを開発する新興メーカーがいて...。

破壊的技術を生み出した新興企業が成長するのは、それを持続的技術として性能を向上させる組織力を持っているからである。企業の歴史の中で多くの時間は持続的技術によって成長する時間である。顧客の声を聴き、それに迅速且つ適切に応える。感度が高く、優秀で柔軟な組織が成功の鍵なのだ。

著者が言いたいのは、トマスクーンが科学の進歩に見た「パラダイム革新」と「通常科学」の関係とだいたい同じであると思う。当たり前の進歩を効率よく連続的に進める力がいつか仇になる。突発的で非連続な市場の特異点を切り抜けられい。予想して効率よく動く組織は、予想外の事態に対してとても脆いということになる。この本では、そのプロセスを優良企業の組織に内在する必然として多角的に検証している。その部分は、大変内容が濃く、ビジネスマン必読の一冊であると思う。

もちろん市場はカオスであり、特異点は、誰にもいつ発現するかは分からないが、必ずそれは現れるのもルールである。著者は既存の優良企業は、そうした仕組みの知識を持ち、それに備えることで、破壊的技術と持続的技術の両方を持つという解決が可能だと説く。100年以上市場のリーダーとして君臨し続けるような企業。ジェームズ・C. コリンズが「ビジョナリー・カンパニー」と呼び、トム・ピーターズが「エクセレント・カンパニー」と呼んだような超企業になるには、こうした木でなく森を見る目を持てということだろう。

この本を高く評価した前述の私の友人たちには共通の属性がある。大企業の社員(多くは幹部候補)か、または元社員だったというプロフィールである。逆にベンチャー企業の経営者仲間は有益な本だと評価しつつも、心からピンときている人が少なかったように思う。それは彼らが今の勝者に入れ替わろうと狙う新興企業の担い手だからだろう。

私もこれは名著であると思いつつ、最後の結論には少し違和感も持つ。大企業のイノベーションのジレンマを回復するために、それを気づいた個人が組織の内側から浸透させるコストは巨大なのではないだろうか。特に日本の伝統的企業にとっては努力の価値がどれほどあるのか、分からない。もしも、それだけの知見と行動力を持つビジネスマンならば、独立して新興企業として市場へ打って出たほうが、幸せなのではないか。イノベーションのジレンマの背後には、個人と組織のジレンマがもうひとつあるような気がしてならない。

もぐ工房:M changerのページ
http://www6.plala.or.jp/daigoro/software/mchanger.html
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・あなたの身長は何インチですか?
・あなたの体重は何ポンドでしょう?
・20マイルって何メートル?
・5ヤードって何センチ?
・華氏451度って摂氏何度だっけ?
・大正5年って西暦で何年?
・一世紀とは何時間?
・1234年の元号は?
・広さ1町って何平方メートル?
・キロ、メガ、ギガの次はテラ、ペタだけどその次は?
・100貫デブとかいうけど何キロのこと?

これ全部にちゃんと答えるのは難しい。

M Changerは単位変換ツールで、任意の単位同士の変換ができる。対応している単位の種類がとても多い。

対応している単位:
長さ、面積、体積・容積、質量、時間、加速度、速さ、出力・仕事率、エネルギー・熱量・仕事、圧力、力・重量、周波数・回転数、角度、温度、比・割合・濃度、年号、数、接頭辞(Prefix)、2進接頭辞

滅多にお目にかからない珍しい単位もある。

たとえば、

清浄 (せいじょう)
虚空 (こくう)
六徳 (りっとく)
刹那 (せつな)
弾指 (だんし)
瞬息 (しゅんそく)
須臾 (しゅゆ)
逡巡 (しゅんじゅん)
糢糊 (もこ)

恒河沙 (こうがしゃ)
阿僧祇 (あそうぎ)
那由他 (なゆた)
不可思議 (ふかしぎ)
無量大数 (むりょうたいすう)

これは何か分かるだろうか。とても小さな数字ととても大きな数字の名前である。

物書きにとって役立つ単位が多数、登録されているのが嬉しい。

面積や高さを「東京ドーム20個分に相当します」だとか「東京タワーを60本重ねた高さ」のように変換できる。説明文章を書くときに便利だ。面積では東京ドーム、大阪ドーム、ナゴヤドーム、甲子園球場、大阪城公園、琵琶湖、日本、長さでは、東京タワー、通天閣、エッフェル塔、新幹線などが登録されている。

機能としても、

・1対1の「通常変換」と、1対多の「一括変換」の2種類の変換方法
・2 〜 36進数での基数変換
・クリップボードから値の貼り付け・クリップボードへ変換結果を出力する機能
・数値入力の際、接頭辞付きの入力 (ex. 45k) が可能

などとよく考えられて作られている。

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・安全と安心の科学
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セキュリティ、トラストワース(信頼に足る)、コンプライアンス(法令順守)、リスクマネジメントなど、近年、安全と安心は時代のテーマだと思う。これは、元東京大学先端科学技術研究センター長で現在ICUの教授の村上陽一郎氏が語る安全と安心の科学。大局的な視点で、この問題の捉え方が示されている。

■安全と安心、確率と人間心理

人間は安全であっても安心できない。あるいは安全ではないのに安心する。飛行機は落ちる確率が低いはずなのに、自動車に乗るよりも神経質になる。原子力発電所は他のどんな施設よりも安全性に配慮されているのに、危険に思われる。

現代においてリスクの大きさは、それが発生する可能性で測られる。だが、その可能性を人間は主観でとらえている。1万年に一度しか起きないことでも、明日が1万日目なのではないかと考えて、不安を感じてしまう。大隕石の落下を題材にした映画は最近だけでも何本もあり大人気だが、実際に私たちの生きている間に、それが起きる可能性はほとんどない。

逆に私たちはまったく不安を持たずに、自動車を運転したり、タバコを吸ったりしている。これで死ぬ確率は、天変地異や原発事故で死ぬ確率より遥かに高い。交通事故では毎年8000人が亡くなるが、これは阪神淡路大震災よりも多い。

メディアも人々の確率認識のズレを助長する報道をしている。原発事故や飛行機事故は滅多に起きないし、安全性も極めて高いのに、何か小さな事故が起きただけで、危険だと騒ぐ。だが、著者によるとたとえば原発の小さな事故で、多くの場合、放射能が漏れたりしないのは、安全機構がよくできている証明だと見ることもできるという。

■安全にしても危険度は変わらない「リスク恒常性」

”人は間違う”を前提とした「フールプルーフ」機構と、間違いが起きても大事には至らない「フェイルセーフ」機構が安全戦略の基本である。

しかし、安心した状態こそ危険なのだと著者はこう指摘している。


システムの中で、「安全」は絶対的な価値として追求されなければならないが、それで「安心」が保障されることは避けなければならない

過度にフールプルーフとフェイルセーフで設計されたシステムは、使う人間がそれを空気や水のように当たり前と思いはじめた途端、危険なシステムになってしまうのだ。実際、原発や飛行機などの近年の大事故は、少なからずフェイルプルーフが準備されたシステム上で起きている。

車の運転にしても、安全機構が充実すればするほど、運転手は少し乱暴に扱っても平気だろうと考えて無謀な運転をしてしまう。いくら安全にしても使う側が安心で気を抜くので、リスクの大きさは変わらない「リスク恒常性」が発生している。

組織上の改革としては、内部監査の仕組み、間違いを発見したら内部の人間が警告をする「ホイッスル・ブロウ」の重要性が指摘されている。日本社会ではホイッスルブロウは内部告発であり、裏切り者として組織から排除される傾向がある。だが、QC活動の一環として考え、積極的に取り入れるべきだと著者は提言している。

また、具体的なフールプルーフの戦略として、

1 システム全体をいつでも目に見える形で捉えられるような工夫をしておく
2 操作パネルや作業手順に十分に「人間工学的」な考慮がなされていること

を挙げている。一言で言うと「アフォーダンスに合った」システムを作れということらしい。

誤操作を回復不能にしないという意味での回復不能性も大切。この本ではパソコンのデスクトップのゴミ箱が例に挙げられていた。一度ファイルを捨てても、ゴミ箱を空にするまでは取り戻せる。このように、冗長性をもたせて保護するのが良いという。

これらはITのシステムやアプリケーションの基本設計思想として活かせそうなリストである。

■飛行機と自動車と列車で一番死ぬ確率が高い乗り物は?

私はどうしても必要に迫られない限り飛行機には乗らない。関西へはいつも新幹線に乗る。飛行機は離着陸や乱気流の揺れが不安で、落ち着かないからだ。だが、この本に書かれているように、頭では、飛行機はきっと他の乗り物よりも安全なのだろうなと思っている。

そこで飛行機の危険性について、ネットで調べてみた。こんな面白い数字が見つかった。
・市民と事業者のためのリスク・コミュニケーション・ガイド
http://tokaic3.fc2web.com/body/report/report_h14/2002Rep5.pdf

自動車、飛行機、列車の利用者数と移動距離から、死亡リスクを求めたもの。

交通機関別死亡リスク(単位)自動車飛行機列車
利用者数と移動距離あたりで計算した時(100 億人・マイル)0.550.380.23
利用者数あたりで計算した時(100 万人)0.0271.80.59

解説の引用:

車の運転中に事故にあう確率は,何人乗っているかだけでなく,運転の時間あるいは移動する距離が長ければ高くなります。そこで,交通機関による死亡リスクは,一般的に利用者数と移動距離をかけたものを分母として計算されています(表4の欄)。この方法で計算すると,自動車運転のリスクが最も高く,飛行機に乗るより危険で。しかし,飛行機の場合,事故の危険性は離着陸時が最も高く,水平飛行状態ではほとん事故は起きません。つまり,飛行機の危険性は飛行距離にはあまり関係ありません。このとを考慮して,分母を利用者数とすると,実は飛行機のリスクが最も高くなります(表4下の欄)。分母をそろえるということは,どんなリスクを考えるかということを示す一例です。

がーん。この本は間違っているのか?

移動距離では、確かに飛行機が一番安全だ。

だが、利用者数で調べると飛行機が危ないという結論。

やはり、私の新幹線の選択はある程度、正しいのではないか。安心した。これからも新幹線を使おう。

・問題な日本語―どこがおかしい?何がおかしい?
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明鏡国語辞典の編者たちが書いた問題な日本語解説。

きもい、きしょい、はずい、きょどい、おもしい、うざい、グロい、こくる、めんどい。
こういう若者言葉、時々、分からないものがある。年を取ったのだなあと実感してしまう。ときどき自分の美的センスに合わないものには不快感を感じてしまったりする。特に可能を表すのに「食べれる」「見れる」「出れる」とする”ら抜き言葉”は大嫌いだ。

一方、この本は、私よりも進歩的だ。新しい言葉遣いを国語の乱れとして批判するのではなく、むしろ、広く使われる言葉がやがては国語の本則になっていくのだ、という意識が感じられる。

■気になっていた日本語の発見の連続

それにしても発見の連続だった。そのうち調べてみようと思っていた疑問が数十個も氷解した。知らないこともいっぱいあった。

たとえば、

・「独壇場」(どくだんじょう)は許容されているが、本来は独擅場(どくせんじょう)が正しい。
 どくせんじょうという発音は聞いたことがなかった

・「全然いい」、「全然大丈夫」は間違いではない
 間違いだと思っていました。

・「人妻」は「ひとづま」だが稲妻は「いなずま」、神通力は「じんずうりき」が本則。 二つの漢字が単独で意味をなし分離可能なときに「つ、づ」となる

・「おざなり」「なおざり」は別の単語で共に正しい
 私はなおざりはスペルミスと思っていました

・「とんでもありません」は必ずしも間違いではない
 とんでもございませんの間違いと認識していました

・二十世紀は本来は「にじっせいき」だが「にじゅっせいき」が広く使われる
 そうなのか、にじっせいき、なのか

■コンピュータなのかコンピューターなのか

IT業界の人間は「コンピュータ」と書く人が圧倒的に多い。逆にデジタルに縁遠い一般世界の人たちは「コンピューター」と書いていると思う。役所、辞書、新聞では「コンピューター」だ。

この表記はずっと気になっていた。私は相手によって使い分けている。

Web上ではどう使われているだろうかとGoogleで調べてみた。

インターネット上ではデジタル系が多いせいか、

コンピュータ(コンピューターを除く)の検索結果 約 5,230,000
コンピューター(コンピュータを除く)の検索結果 約 2,080,000

で、コンピュータが優勢である。一般書籍では逆転するかもしれない。

ではユーザとユーザーではどうかというと、

ユーザ(ユーザーを除く)の検索結果 約 4,850,000
ユーザー(ユーザを除く)の検索結果 約 6,560,000

この本によると本来はコンピューター、ユーザーと書くそうだが、「外来語の表記」では「ー」は慣例に応じて省くこともできるとあり、間違いというわけではないらしい。ただ、語形が短いメーカー、シャッターなどは省かないほうがいいのではないかとまとめられている。

■リンクを張るのか、貼るのか

この本には出ていなかったが、ずっと気になっている言葉がある。リンクを張る、リンクを貼る、である。

リンクを張る の検索結果 約 169,000 件
リンクを貼る の検索結果 約 99,500 件

おそらく、張るが正しいと思うわけだが、長年、Webを作る側にいると、貼るも正しいことにしてほしくなる。特に画像でのリンクの場合、張るのでなく、貼っている気がする。文字列リンクであっても、コピーアンドペーストで「貼る」場合、感覚的には貼っているのである。張っていない。

普通に考えると「ホームページに画像を貼る」は正しいだろう。ページは紙のメタファーだからだ。「ホームページに画像リンクを貼る」も画像が主ならば論理的には正しいことになると思われる。では、文字列はどうなのか。従来は文字は筆で書くから”貼れ”ないのだが、クリップボードのあるコンピュータでは”貼る”ことができる。認めてもいいような気がする。

いまちょうど使ったが、かつて95年ごろ、ネット上では「ホームページ」論争があった。
「ホームページ」とは、本来、

1 サイトのトップページ
2 ブラウザー起動時に開くページ

であって、その他のページは「Webページ」と呼ぶべきだという議論だった。今ではそう細かい差異を気にせず使うのが一般的だと思う。私はTPOで使い分けているが、古くからの技術系ユーザの中にはこだわっている人も多い。

Googleで調べてみると、利用頻度は

ホームページ の検索結果 約 47,900,000 件
Webページ の検索結果 約 7,910,000 件

ということだった。

それぞれ本来の意味で使われたかどうかは調べていないが、なんでもホームページ派が勝ったような印象である。

言葉はよく使われれば、最初は文法的に間違い、乱れであっても、正しいと認められていく。今まではそれを一部の国語の専門家が決めていたが、この本に登場する専門家たち、結構、ネットで検索して普及状況を確認しているようだ。これからは検索エンジンが国語を決めていくのかもしれない。

毎回IDとパスワードの入力による、ログイン作業が必要なサービスは、内容がよくても縁遠くなりがちである。このAutolを使うと、ログインが必要なサイトも入力レスで、ログインすることができる。類似したものにフォーム自動入力支援ツールがあるが、大抵は確認や選択の必要がある。Autolは、それよりも簡単である。

・Autol
http://park15.wakwak.com/~n_i/xm/
autol01.JPG

まず、ログインしたいページのURLを入力し受信ボタンをおす。すると、IDやPassなど入力すべき項目がリストアップされる。項目を入力すると、まさにログインページに項目を埋めて送信を押した状態のHTMLを生成してくれる。あとは、このHTMLをブックマークに登録しておけば、ワンクリックでログインが可能になる。

HTMLにそのまま記録が残るのは危険もあるため、一応、パスワードの暗号化処理などは行うことができる。それでもオンラインバンキングなどの重要なサービスでこのツールを使うのは、絶対危険であろう。あくまでお気軽、お遊び系のサービスに限定だが、私にとってはかなり便利である。

webshot
http://phpspot.net/php/webshot/
bc219e9b4b098f2b0672db3720ab94ae.jpg

Webブラウザー(MSIE)とサーバの連携で検索ディレクトリを構築していくユニークなコンセプト。このソフトを試してみたくて個人でレンタルサーバを借りてしまった。インストールしてみた。とても満足。画期的。

MSIEのプラグイン部分とサーバサイドのWebアプリケーション部分があるので、動作環境として自前サーバ環境(PHPとMySQLが動く)が必要となる。

インストールするとMSIEにサイト登録ボタンが表示される。

webshot02.JPG

このボタンをクリックすると、現在表示中のページのスクリーンショットが撮影され、確認するとディレクトリサーバに、画像とURL、タイトル(自動取得)と説明文が登録される。

webshot01.JPG

登録されたページは未分類カテゴリに追加されていくので、サーバ側で任意の分類に変更する。するとビジュアルなWebディレクトリが構築されていく。後からのカテゴリ変更も可能なので、とにかく気になるサイトはガンガン登録していけばよい。

たとえば私の作ったディレクトリはこんな感じである。

・私のWSHOTディレクトリサンプル
http://glink.jp/webshot/webshot.php

なお、新着登録サイトの画像をJavaScriptでブログに貼り付けることもできる。

以下が貼り付けサンプル。一般的にはサイドバーに張るのがいいだろう。

このように手軽にリッチなWebディレクトリが構築できる。ビジュアルブックマークは一目瞭然のわかりやすさで、自分のみで使うにしても、魅力的である。リモートとローカルをうまく組み合わせた、素晴らしいソフトだと思う。しばらく、これでディレクトリを充実させてみよう。

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EMacromedia - FlashPaper 2
http://www.macromedia.com/jp/software/flashpaper/

‚¢‚«‚È‚èPDF FlashPaper‚̓\[ƒXƒlƒNƒXƒg‚ª³Ž®‚Ƀ}ƒNƒƒƒfƒBƒA‚̃‰ƒCƒZƒ“ƒX‚ðŽó‚¯‚āA‚±‚ÌFlashPaper‹@”\‚ð’P“ƃc[ƒ‹‚É‚µ‚½‚à‚́BƒEƒBƒ“ƒhƒE‚É•ÏŠ·‚µ‚½‚¢ƒtƒ@ƒCƒ‹‚ðƒhƒ‰ƒbƒOƒAƒ“ƒhƒhƒƒbƒv‚·‚邾‚¯‚ÌŠÈ’P‘€ì‚Å•ÏŠ·‚ª‰Â”\BMSƒIƒtƒBƒX‚Æ‚Ì“‡Ý’è‚ðs‚¤‚ƁAƒ[ƒh‚âƒGƒNƒZƒ‹‚Ȃǂ̃ƒjƒ…[‚Ƀ{ƒ^ƒ“‚ª•\Ž¦‚³‚êAƒNƒŠƒbƒNˆê”­‚ŕҏW’†‚Ì•¶‘‚ðAFlashAPDF‰»‚ª‰Â”\B

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・おまいら2chカードゲームで遊びませんか オフィシャルサイト
http://www.mb.ccnw.ne.jp/garger-studio/2chcard/main.html
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2ちゃんねるを舞台にしたカードゲーム。

2ちゃんねるのアスキーアートでデザインされたカードが山札から配られる。カードの種類には、基本となるレスカードのほか、スレッド、自作自演、2ゲット、sage進行、祭、あぼーんなどの特殊カードがある。プレイヤーは3人のコンピュータを相手に、自分のスレッドにたくさんのレスを集めて繁盛を競う。基本ルールはスレッドについた色にあったカードを出すだけだが、自分のサイトだけが賑わうように、特殊カードを使ってさまざまな得点稼ぎや妨害工作を繰り出す戦略要素がこのゲームの面白さ。

omaira2ch02.jpg

ゲームはまず各自スレッドカードを出してスレッドを立てる。そしてレスカードを出してスレッドにレスをつける。原則、スレッドと同じ色のレスカードをつける。レスカードを出すと、そのカードに書かれたレス数およびサイズがスレッドに加算される仕組み。

レスカードにはsage/ageの属性がある。sage進行が出されたスレッドにはsage属性のレスカードしか出せなくなる。祭のスレッドがあるとき、そのグループ色は祭のスレッドにしか出せない。神降臨のスレッドがあるとき、すべてのカードはそのスレッドにしか出せない。虹色のレスカードはどのスレッドにも出せるが、自分がオーナーとなっているスレッドには三回までしか出せない(自作自演)。などなど、2ちゃんねるを知っている人にはニヤリとさせられるルールばかり。

omaira2ch03.JPG

山札が0になったらゲーム終了。その時点で最もレスを集めたプレイヤーが勝ち。ジョークソフトに分類されると思うが、ゲームとしてちゃんと作られていて、とても遊べる仕上がり。

検索プログラムのSufaryはときどきデスクトップで使っている。先日、作者のたつを氏がこんな実験をしていた。

・[を] 自分マイニング! - Blogでよく使うフレーズは?
http://nais.to/~yto/clog/2005-01-18-3.html

自分のブログの記事から特徴的な言葉遣いを抽出するテキストマイニングの実験。

・SUFARY
http://nais.to/~yto/tools/sufary/
Unix用だが、Windowsでもコンパイルできる。

Safaryは検索するだけでなく、文書の索引データをn-gramで高速に作成できる。

n-gramとは言語処理の手法の一つで、nの部分には数字が入る。文章を1文字ずつずらしながらn文字分のパターンを抽出する。

たとえば、「こんにちは」を3-gramで処理すると、

「こんに」
「んにち」
「にちは」

というパターンを切り出せる。(厳密には日本語文字は1文字2バイトなのでこの例は6-gram)。

この機能を使って、私のブログの過去ログ520日分すべてを対象に、パターン分析を行った。

・日本語(2バイト)文字のみを対象とする。
・言語処理におけるゴミ(記号や修正不能な文字化け等)を除外する
・明らかにひとつの単語である場合は重複を削除。
 実例:
 「132 ュニケーション」 「132 ミュニケーショ」 「132 コミュニケーシ」
 の場合、回数が同一で「コミュニケーション」であると特定できるので、先頭語を含む「132 コミュニケーシ」を採用し他を捨てる。

こうした処理の結果、以下のようなことばの登場回数ランキングが発見された。

■3文字のランキング

1位 955 がある
2位 950 います
3位 876 ではな
4位 874 サイト
5位 859 されて
6位 839 ていた
7位 812 った。
8位 806 ない。
9位 781 ネット
10位 770 ように

3文字ではまだ実際にどのような文章の一部だったのか特定が難しい。とりあえず、カタカナとしてサイトとネットは多く使ったようだ。

■4文字のランキング

1位 877 っている
2位 856 である。
3位 825 れている
4位 711 います。
5位 702 されてい
6位 612 ではない
7位 575 ることが
8位 503 すること
9位 482 いうこと
10位 463 るという

トップは「〜と、なっている」「持っている」「分かっている」のような使い方の一部だった。2位は文末の「である」。

■5文字のランキング

1位 462 されている
2位 430 ということ
3位 410 ことができ
4位 404 している。
5位 377 れている。
6位 331 ています。
7位 301 のではない
8位 287 ることがで
9位 286 ネットワー
10位 279 もしれない

「されている」、「ということができる」、「している」、「かもしれない」。5文字と次の6文字くらいが語尾の結び方の特徴が顕著に現れている。

■6文字のランキング

1位 287 ることができ
2位 278 かもしれない
3位 273 ことができる
4位 251 ンターネット
5位 251 インターネッ
6位 230 と思います。
7位 226 のではないか
8位 215 されている。
9位 208 ネットワーク
10位 204 コミュニティ

「〜することができる」、「〜かもしれない」、「〜と思います」、「〜のではないか
」、「〜されている」、インターネット、ネットワーク、コミュニティ。よく使うフレーズの数々。

■7文字のランキング

1位 250 インターネット
2位 184 ることができる
3位 152 かもしれない。
4位 144 ことができる。
5位 135 アプリケーショ
6位 133 マーケティング
7位 132 コミュニケーシ
8位 130 インタフェース
9位 125 のではないかと
10位 113 することができ

「インターネット・アプリケーション・マーケティング」が私のカタカナ3種の神器だと判明。そういうタイトルの本でも書いてみようか...。それが売れたら2冊目は「ネットワーク・コミュニティ・インタフェース」で決まり。

なお2文字の漢字単語を調べたところ、以下のような状況になった。

■2文字の漢字単語

1位 867 会議
2位 728 検索
3位 649 世界
4位 616 著者
5位 556 時間
6位 555 技術
7位 544 自分
8位 513 研究
9位 485 科学
10位 460 紹介

「会議」は昨年の無敵会議の影響。「著者」は書評内でよく使うため。


典型的な私の文章というのは、


インターネット検索の技術は、コミュニティのマーケティングに利用することができるアプリケーションなのかもしれない、と著者は世界会議で自分の研究を紹介している。」

こんなかんじであることがわかる。そのまま過去に書いていそうな気もする。

この調査、最初は自分の文章の癖が分かって面白かったのだが、だんだんと「自分らしさ」に自家中毒を起こしそうな気分になってきた。もっと語彙や文体に広がりを持ちたい今日この頃である。

・ソシュールと言語学
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現代言語学の祖で、構造主義思想の祖でもあるソシュール入門書。

ソシュールとレヴィストロースは学生時代に夢中になって読んだ。当時、既に構造主義思想も古典だったわけだけれど、あれから10数年、今はどういう扱いになっているのかなというのが手に取った動機。

■ラングとパロール、シニフィアンとシニフィエ、体系と構造

第1章「ソシュールはこう考えた」はソシュールの言語学と構造主義のやさしい入門ガイド。分かっている人にとっては軽いおさらいだが、著者の見解も織り交ぜられている。

要約。

ソシュールは言語の本質とは何か、その構成最小単位は何かをまず考えた人である。言語行為をラングとパロールに分割し、言語学の対象をラングに限定することから、ソシュールの仕事は始まっている。

ラングとは同じ意味を話し手から聞き手に伝える仕組みのこと。同じ意味が伝達されるには、この言葉はこの意味を表すという社会的な約束が必要である。音声と意味の対応関係を知らない人は、外国人と同じで、聞いても意味が分からない。人類共通の単語と意味の対応リストなど存在しないわけで、音声と意味は本質的には無関係(恣意的な関係)だとする。

これに対して、パロールは具体的な意味の伝達に関わらない要素を指す。たとえば具体的に発声された音声などである。ラングは抽象的だったが、パロールは具体的で観察可能である。だが、パロールだけを見ていても、意味をみつけることができない。だから、言語研究はラングから手をつけるべきだとしたのがソシュールだった。

そしてラングが伝達する言葉は記号であり、記号はシニフィアン(表示部、意味するもの、知覚できる音や図形の集合)とシニフィエ(内容部、意味されるもの、事柄または事物の集合)の対であるとした。両者は別物であり、ある表示部が、ある意味と結びついているのは、ある時代の社会的な約束事でしかない。つまり、単語と意味は、本来は無関係で恣意的な結びつきでしかない、というのが第一原理「言語記号の恣意性」である。

第二原理「言語記号の線状性」とは、言葉とは単語が一列に並ぶことで意味を表すものだという原理。そして、その並び方に規則があり、伝達される意味はその規則を変えると変わってしまうということ。

二つの原理はあまりに当然のように思えるが、世界の言語すべてが普遍的に持っている性質として、はじめて見つけたのがソシュールだった。

そして、どの言語にも数万から数十万の単語があるが、ひとつとして完全に同じ意味を表す単語はないとソシュールは考えた。完全な同義語がないということは、あるひとつの単語の意味を決めるには他と違うということを考慮しないといけないことになる。つまり、言語には、単語の意味を他の単語との関係で決定する「体系」がある。

「体系」内の要素の価値(意味)を決める要素(単語)が線状に並べられて、形成される「構造」にソシュールは言語の本質を見出した。そして、この発見は、そうした体系と構造の性質が、言語だけでなく、婚姻関係や神話の物語構成、経済交換など、人類の文化に普遍的に認められるものであるということが分かり、構造主義の時代が到来した。

要約終わり。

■ソシュールに続いた直系の研究とソシュール礼賛

第2章「ソシュールの考えはどう継承されたか」では、音素に注目したプラハ学派、関係性を重視したコペンハーゲン学派などソシュール直後の継承者たちの研究が取り上げられる。

第3章で「花開くソシュール」は、ソシュールの考えの不足を補ったり、別のユニークな考えを持ち込んで、構造主義言語学を発展させた研究がいくつか紹介される。具体的言語事例を使って構造主義アプローチを実践したバンベニスト、コトバは経済的にできているという機能主義を提唱したマルチネなど。

マルチネは面白い。言葉は記憶や発話の負担が少ない方向に変化していくという機能主義は、言語を物理や経済的に考える仮説。「パーソナルコンピュータ」は長いので、使われているうちに発話しやすい「パソコン」になる。だが、短い言葉は同音異義語が重なって理解しずらくなったりするので、すべてが1文字とか2文字の単語になると脳の負担が増える。ふたつの経済性の均衡で言葉は変化していくという話など。

著者はソシュールは言語学を、疑いえない原理だけを基準に科学にしたとして高く評価している。

「その意味で構造主義の方法こそが、ソシュール以来の健全な科学的分析の伝統を受け継いできているものと確信します。コトバの本質を解明することを目的とする言語学で、構造主義の考え方がこれまでにもまして多くの研究者によって踏襲されていくことが、研究の結果を安心して受け入れることができる学問分野としての発展につながるのです。」

ソシュール絶賛の結論でこの本は終わる。

今、インターネット関連の研究の世界には情報系の人と言語系の人がいると思う。情報系で自然言語処理やセマンティックWebをやっている人は意外にソシュール言語学や構造主義を知らない気がする。コンピュータで言語を扱いやすくしたチョムスキーの言語学ばかりが取り上げられている気がするが、大元の哲学を知るにはソシュールから入るほうが得るものが多いのではないかとこの本で復習して、思った。

時間の分子生物学 時計と睡眠の遺伝子
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講談社出版文化賞科学出版賞 受賞作品。睡眠のメカニズムを遺伝子レベルに探る。

■10分を検出できる体内時計

時計がなくとも朝は目覚め、夜は眠くなる。

脳の視床下部にあるSCNという器官に、24時間周期の生物時計(いわゆる体内時計)があるという。SCNの神経細胞はガラス板の上で培養しても、24時間周期の電気活動リズムを維持して変化するそうで、機械の時計のように自律的な発振器の役割を果たしている。この生物時計は概ね正確に24時間周期で動いているが、狂うこともあり、その場合には朝に強い光を浴びたりすることで調整が可能になっている。

この時計は案外高い精度で働いている。たくさんの被験者に、指示した時間に起きてもらう依頼をした実験結果が紹介されていた。朝6時に起きろといわれた集団では6時に、8時と言われた集団でも8時に、だいたい多くの被験者は起きることができている。そしてこのとき被験者の身体では、起床1時間前からコルチゾールというホルモンの量が増加していた。これは起きる準備が1時間前から始まっていた事実を示す。正確な起床時間は生物時計が10分から15分程度の時間経過を、睡眠中も感じることができるという証明になる。目覚ましが鳴る直前に目が覚めるという人の場合には、分単位で時間を感じている可能性もあるそうだ。

■なぜ眠るのか、なぜ眠くなるのか

人はなぜ眠るのか?その理由はいまだ分かっていない。だが、生存に不可欠であるのは明らかで、医師である著者は不眠症の患者に「眠らなくても死にはしませんから」と慰めたりするそうだが、本当は寝ないと死ぬのだそうだ。動物を眠らせないでおく断眠実験を行うと1週間から数週間で、衰弱し多臓器不全で死んでしまうそうだ。免疫系を損傷するのが原因であるらしい。

では身体の疲労回復のために眠っているのかというと、そうでもないようだ。横になって眼を閉じただけの安静状態の方が、実際に睡眠に入るよりも、代謝率が低い。身体の休息という意味では睡眠より安静にしているほうが良い戦略かもしれないという。睡眠は身体ではなく脳の休息が本質的な目的なのだ。

なぜ夜になると眠くなるのか?も完全には解明されていない。最新の理論では脳に睡眠物質が増えるから眠くなるのではなく、生物時計が発信する覚醒信号が夜になると弱まるからなのではないかと著者は考えている。これは夜型体質の改造に役立つ知識だ。覚醒信号を制御する生物時計を朝型に調整するには、朝の強い光を浴びることがまず有効なので、夜型を朝方に直すには「早寝、早起き」ではなく、「早起き、早寝」が正解だという。いくら早く寝ても生物時計を調整することはできないからである。

オレキシンという脳内物質が覚醒効果の原因であることが近年発見されたらしい。オレキシンは食欲と睡眠に同時に影響する。これは生きるために食物を探せるように覚醒レベルを上げておく、ということと関係がある。夜中にお腹がすいて眠れないのも、食べ過ぎると眠くなるのもオレキシンが原因のようだ。

いくつか本に出てきた睡眠のついての知識を引用してみたが、睡眠は意外にも謎だらけのようである。私は子供の頃、眠る瞬間を意識でとらえたいと思って毎晩のように、眠気と戦ってみたことを覚えている。当たり前だがいつのまにか眠りに落ちてしまう。睡眠に入る境界はみつからなかった。なんてバカな実験をしてたのだろうと大人になってから思ったのだが、訓練次第では夢を覚醒しながら見る覚醒夢というのがあるそうだ。あのまま続けていたら夢を制御できるようになったのだろうか。惜しいことをした。

・ヒトはなぜ、夢を見るのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001062.html

・人はどうして疲れるのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000877.html

・朝10時までに仕事は片づける―モーニング・マネジメントのすすめ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000651.html

・アメリカ 最強のエリート教育
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■少数エリートの米国、まだまだ横並びの日本

日本経済新聞が発表した2004年3月期の日米上場企業報酬調査が紹介されていた。結果は「主要百社の従業員の平均給与は年間で八00万円、役員報酬はその4倍。米有力企業の経営トップの報酬は平均で九億円とされている」であるとのこと。だいたい日本の一般労働者と大企業社長の給与格差は20倍程度であるのに対して、アメリカでは200倍以上の格差になるという。

米国でのこの大きな収入格差は人生の早い時期にだいたい決まってしまうという。

それには、

・名門の家柄出身である
・私立のプレップスクールに通う
・アイビーリーグなど一流大学を卒業する
・トップクラスの専門職大学院を卒業する

といったことが強い条件となる。

米国というと自由競争、能力主義の国という印象が強いが、エリート中のエリートについては、実態は必ずしもそうなっていないようだ。年間2万ドル、3万ドルの私立校の学費を支払える家庭から、生え抜きのエリートが登場している。

アメリカの公立中学、高校は学区制であるが、教育レベルの差は地域によって歴然とした差があるらしい。これは学校運営の財源が学校区の固定資産税でまかなわれるためで、裕福層の住む学区は財源が豊かで質の高い教育が提供される。これに対して低所得者層の多い地域では日常的にドラッグや学校内犯罪が蔓延しているとのこと。

頂点と底辺の格差が早い段階で決まってしまうため、一部の極めて優秀な例外を除いて、ふたつのグループが競うことはない。これに対して日本では、特に高度成長期には大学を出ていると大抵は課長に昇進できだし、50代くらいまでは誰が部長や役員になるかが完全には分からず、出世競争が長く続くということが指摘される。

米国人のいう平等は「機会平等」でチャンスは誰にでもあることを意味するが、日本人にとっては「結果平等」であるという違いがある。だが、結果の格差の大きさを見ると、米国の機会平等はかなり過酷なものであることがうかがえる。

■アイビーリーグ、ザ・テン・スクールズ、専門職大学院

「アイビーリーグ」という言葉はよく聞くが具体的には以下の8大学を指している。この本には私立の名門高校「ザ・テン・スクールズ」もリストが掲載されていた。

アイビーリーグ
 ・ハーバード大学
 ・イエール大学
 ・ペンシルバニア大学
 ・コロンビア大学
 ・プリンストン大学
 ・ブラウン大学
 ・ダートマス大学
 ・コーネル大学

ザ・テン・スクールズ(7,8割は寄宿舎生活)

 ・チョート・ローズマリー・ホール
 ・ディアフィールド・アカデミー
 ・ヒル・スクール
 ・ホッチキス・スクール
 ・ローレンスビル・スクール
 ・ルーミス・シャフィー・スクール
 ・フィリップ・アンドーバー・アカデミー
 ・フィリップス・エグゼクター・アカデミー
 ・セント・ポールズ・スクール
 ・タフト・スクール

これにビジネススクール、ロースクール、メディカルスクールの専門職大学院のトップクラス数校が、エリート養成装置として機能しているという。

この超エリート層には、自分たちが社会の各分野をリードしなければならないという責任感と、ノーブレスオブリージュ(高い地位や身分に伴う義務を果たす意識)という価値観を持ち、決して威張らず謙虚に振る舞い、社会に貢献する活動に情熱的に取り組む人たちも多いという。

この本で著者はエリート層との華麗なつきあいを次々にと披露して実体験に基づく話をたくさん提示している。関係があるが故に、米国の最強エリート層は抜群に頭がよくて、人柄も優れている、非の打ち所がないと、美化しすぎな部分を感じるが、日米の寄付金の比較や、トップ大学のノーベル賞受賞者の在籍率などを見ると、確かにそうした面はあるのかもしれないと思った。日本のエリートというのは高い地位を約束した社会に対して、責任を果たしていない。

ただ、日本の場合、米国のような本物のエリートが誰なのか分かりにくいという面がありそうだ。名門高校と東京大学くらいは、ああ、エリートだなと分かるわけだが、決定打ではないし、米国ほどのバリエーションもない気がする。また、日本の場合、エリートは官僚や大企業の幹部候補になるわけだが、トップに到達するまでにはかなり長い時間がかかる。組織の頂点として目立つ期間が短いせいか、あまり目立っていないイメージだ。

この本は米国のエリートが受けている教育について、ちょっとミーハー視点で総括する。著者の思い入れが偏っているような気もするが、情報としては結構、面白い本だ。米国人が自己紹介したときに、ちゃんと反応してあげるべき?キーワードが参考になった。

・プロマネは見た!
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主人公は架空のIT企業グローバルシステムズ(社員1万人)に転職したばかりの新任プロジェクトマネージャ。現場の日常の中で体験する、ヒトと組織の困った問題を33のストーリーで指摘する。

つぎつぎに出てくる、いやーな話。

・上司と部下の関係にこだわる
・責任を問われないエリート社員の失敗はなかったことに
・掲示板やMLを使って議論を始めるSE
・何でもメールで連絡してくるSE
・権力や地位に弱い事業部長

私は大企業の社員として働いた経験がない。大企業のプロジェクトに参加することはあっても、立場が「プロマネ」でなくて「社外コンサル」である。この本に書いてある風景は、ときどき見るなあ、と思いつつ、当事者でないので、疑問や怒りもわかない。ただ、大きな組織の中の論理って複雑だなと思う。社外コンサルとしてはそうした事情も理解しておかねばならないわけで、この本は勉強になった。

私が頻繁に遭遇し不思議に思うのは、プロジェクトの顔合わせで、大企業の社員同士またはグループ内同士で名刺交換をする風景だ。確かに初対面だから名刺交換してもおかしくはないのだけれど、挨拶含めて長時間に及ぶこともある割に、実は名前を覚えられなかったりする。

あれは方程式にするとn×(n-1)だ。10人、20人いたらば大変である。10人×(10-1)枚で90枚の名刺が飛び交う。20人だと380枚だ。あれはやはり無駄なんじゃないかなあ。その後もメーリングリストも作るの決まってるわけだしって、いや、私がわかってないのかもしれないが...。あ、その名刺は再生紙でしたか。失礼。

と、あまり、こういう話を広げて書くと隊長(先日の某所での再会と楽しい懇談とネクタイ批評ありがとうございました)風になるので、ここらへんで提言に向かうとして。

名刺の交換でなくてポジションペーパーの交換に変えてみるのはどうだろうか?。

・ポジションペーパ方式
http://eto.com/d/0403.html#1-wx_JFWRdTXUHIYPZXc3g
一緒に中国を旅したエトさんの説明。

- ポジションペーパとは「立場表明書」を意味する。
- 参加者各自が現在の自分の立場をA4一枚にまとめ、配付する。
- それぞれが5分づつ、そのペーパーを元に発表を行う。
- 参加する全員が配付し、発表することが重要。あらかじめ人数分コピーする。
各自がA4一枚の大きさ内で自分が今考えていること,みんなに伝えたいことを
まとめて,それを全員に一枚づつ配付する.(名刺代りにもなっている.)
こうすることによって,各自が考えていることをコンパクトに伝えられる.

この本、軽い読み物として楽しめたが、プロマネをやっている人にはただ日常が書いてあるだけ?

・情報と国家―収集・分析・評価の落とし穴
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■データ、インフォメーション、インテリジェンス

戦争が起きるとよくテレビに登場する軍事問題評論家 江畑謙介氏。この人、普段は何を考えているのだろうと気になって手に取った本。イラク戦争や北朝鮮問題をめぐる主要国家の情報戦略を事例をあげて説明していく。

まず国家が情報を収集し評価分析し意思決定を行う際の、3つの単位を定義する。

データ 
 断片的でそれだけでは何を意味するか分からないもの

インフォメーション
 データを種類ごとに集めたもの

インテリジェンス
 インフォメーションを分析、評価したもの

インテリジェンスのための国家の情報収集手段には、次のような手法があると説明されている。

人的情報収集(HUMINT) スパイ、内通者を潜入させたり、亡命者から聞き出す
映像情報収集(IMINT) 衛星による高解像度画像の分析
通信情報収集(COMINT) 電話など通信の傍受
電子情報収集(EMINT) インターネット、デジタル情報を分析する
信号情報収集(SIGINT) 電磁波情報から移動車両や武器の所在を割り出す

日本はこうした情報収集活動を行う専門組織をほとんど持たないが、近隣周辺諸国の情報収集は、ラヂオプレスという組織が一手に引き受けているという。

・財団法人 ラヂオプレス
http://www.koueki.jp/disclosure/ra/radio/

この財団は外務省の情報部ラジオ室海外放送受信部を前身とし、当初は英語放送の受信と分析を行っていたが、大戦後に民間組織となったらしい。今でも外務省国際情報統括官組織第1国際情報官室の管轄下にある。北朝鮮の情報などはこの組織が入手しているのだという。

そして、こうして集めた複数の情報を統合、分析することをマルチ・インテリジェンスと呼び、現代の情報戦略の主流となっている。

■公刊情報中心のインテリジェンスの時代

国家の情報収集といえば、連想されるのはスパイの諜報活動であるが、そうした隠れた情報がインテリジェンスの中心の時代は終わっているそうだ。現代の政府の情報収集は公刊情報(公開された情報)が中心であり、テレビやラジオ、出版物、インターネットなどから情報を引き出し、分析することで、意思決定の9割近くの判断材料を集めているのだという。

そして公刊情報中心の活動になると、情報がないことが問題であることは少なく、情報が多すぎてどれが信頼できる情報なのか分からないことが、大きな問題になっているという。これはITの普及で一般人も同じ感慨を持っているだろう。

米国CIAは衛星やハイテク装置による技術情報収集に頼る部分が大きく、スパイや内通者との取引による人的情報収集は得意ではないらしい。著者によると、イラク戦争で実在しなかった大量破壊兵器の存在を、米国は本気で信じていたらしいのだが、これは人的情報収集が弱かったが故の判断ミスであるらしい。

機械的に集めた情報だけでは、判断を見誤ることがあるわけだが、逆にこの曖昧さを政治に使うのが米国は得意でもあるようだ。

・Space Imaging
http://www.spaceimaging.com/高解像度衛星イコノスの写真をビジネスにする米国企業。

■国家の情報戦 結論ありき、映像情報は出したもの勝ち、真実を見ない組織

高解像度の画像を撮影する衛星を保有する国は少ないため、米国は衛星写真を国家間の情報戦で強引に活用している、という。例えば政府の広報が「これが敵国の毒薬と爆薬の製造基地の衛星写真です。ここに3トントラックとクレーンがあります」などと発表する。だが、衛星写真レベルでは建造物や車両があるのは分かるが、専門家でもそれが何なのかを特定することはほとんど不可能なのだという。数少ない他の衛星保有国の諜報機関はその嘘に気がつくことがあっても、特別な利害関係がない限りは、間違いを指摘して米国と対立する判断は取らない。結局、米国は写真を出せば国際世論を動かせる出したもの勝ちな状況にあるそうだ。

電話傍受の録音資料も同様で、大抵は文脈が不明な会話の断片を自国に有利に引用しているだけで、決定的な内容であることがほとんどないという見方をする。確定的なことはなくても情報の政治的価値があれば使われる。

この本に引用されたマイヤーズ米統合参謀本部議長の言葉が印象的だ。


インテリジェンスは必ずしも真実であることを意味する必要はない。インテリジェンスはその状況における最良の推測であればよい。最良の推測とは、事実である必要を意味しない。要するに、判断決定ができればそれでよいのだ

最初に「イラクをぶっつぶす」決定ありきなのだ。上がってくる情報のうち、イラク戦争肯定に役立つ情報だけを吸い上げていく。こうした上層部を持つ諜報組織のメンバーは、次第に上司の気に入る情報しか報告しなくなっていく。

著者によると、フセイン政権はまさか米国が本気で攻めてくるとは信じていなかったのだという。米国以上にイエスマンだらけの部下を持つフセインは裸の王様で国内も把握できていなかった。米国侵攻があれば国民が立ち上がって徹底抗戦すると疑わなかったらしい。どんなに先端技術があっても、情報を扱う組織が真実を求めていなければ機能しない。これが国家レベルの情報戦略の問題であるとこの本は結論している。

■北朝鮮弾道ミサイルの性能、ノドンの数

第3部は北朝鮮の兵器の配備状況に関するインテリジェンスを分析する。兵器の専門家である著者の知識が一番、活躍するところだ。北朝鮮が発射し日本を飛び越えて太平洋に落ちたとされる弾道ミサイルについて、メディアは脅威と報じたが、そうではないのではないか?という。ミサイルの弾頭はできても、実用精度で弾頭を飛ばすには別の技術が必要で、弾道弾の実験一回程度では兵器としてはまったく完成できないのではないかという。米国が調査したノドンの配備数も情報の出所が非常に怪しく、信用できないものらしい。
もし今後、北朝鮮に大量破壊兵器の保有を理由に有事が発生するとしたら、イラクのときと同じ間違いを起こすということになるだろう。米国の大本営発表しかないとしたら、日本や小国も追随して判断を間違うことになる。

著者は日本政府が専門の情報収集部門を持たないことを批判しているが、これは一理あるのかもしれない。情報がなければ私たち国民も、判断をすることができないわけだから。
感想としては、国家の情報収集というのは企業や個人の情報収集とは目的や評価の軸がまったく違うのだということ。意外に国の秘密というのは外からはつかめていないものなのだなあという意外性。

画像詰め込みEXE
http://comet.endless.ne.jp/users/tuno/soft01.html
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本来の用途が何なのか分からないが、使い方によってはとても効果的なプレゼン、発想支援ツールになるソフトを発見。

画像詰め込みEXEは指定したフォルダ以下の画像の大きさを自動判定しながら、可能な限り多数の画像を詰め込むレイアウトを探して、一枚の巨大画像として出力してくれるソフトウェア。

私のブログで最近使った画像のフォルダを対象に1600×1400の大きさで詰め込んでみた。書籍の表紙イメージやアプリケーションの動作画面など。

・クリックすると実物大へ拡大

自分が何らかの作業で使った画像や写真が一覧できると、いろいろなことを思い出す。記憶が掘り起こされ、類似した要素がつながりを見せ、発想が広がってくる。ハードディスク上の画像を週単位で詰め込んで”今週の画像”として保存していったら、情報密度の濃い記録になりそうだ。

もっと真面目な用途としては、Web制作の際に使うデザイン素材の候補一覧を作って詰め込み画像をつくり、結果を画面や紙に出力して、皆で眺めながら選ぶのにも使えそうだ。小さな素材をひとつひとつ見るよりも、一覧で比較やバランスを確認できるので実用的だろう。

毎月、買ったものの画像を集めておいて詰め込み画像化するのもいいかもしれない。1年分を合体させれば、自分の関心やお金の使い方の把握ができる。

まだまだ詰め込み画像はアイデア次第で使えそう。このツールは面白さ先行なので、本末転倒のようだが、用途を探そう。

大好き (D@isuk1)
http://members.jcom.home.ne.jp/dvsoft/
daisukicap03.JPG

Internet Explorerのツールバーとして動作する表示倍率変更ソフト。

たとえばYAHOO!JAPANのサイトは通常このように表示されているが、

daisukicap01.JPG

倍率を高めると次のように表示される。

daisukicap05.JPG

逆に倍率を最小まで下げてみると縮小もできる。

daisukicap04.JPG

文字や絵が小さくて見えないときに、このツールが活躍する。最大・最小の倍率や表示レイアウトは設定で変更が可能。標準倍率に戻すにはツールバーをダブルクリックすれば良い。

・福祉工学の挑戦―身体機能を支援する科学とビジネス
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著者は福祉工学研究35年、現在、東京大学先端研の教授。

福祉工学とは、「失われたり衰えたりした感覚や手足、脳の機能を、機械で補助・代行する工学分野」で、近年、社会の高齢化によって、障害を持つ人たち以外にも、ニーズが広がることが予想されている。

英語ではAssistive Technology(支援工学)と呼ばれる。人間の改造を中心とする医療工学とは区別され、人間の非改造を基本として、人間の周辺を改造するという立場をとる。具体的には人工聴覚や人工視覚、看護の支援ロボットなどの開発が含まれる。著者の研究室にそうした技術の具体例が多数示されている。

・伊福部・井野研究室 ホームページ
http://www.human.rcast.u-tokyo.ac.jp/index.html
  ・触覚を利用した聴覚補助装置(タクタイルエイド,タクタイルボコーダ)
   http://www.human.rcast.u-tokyo.ac.jp/topics/01tactile.html
  ・人工喉頭
   http://www.human.rcast.u-tokyo.ac.jp/topics/02yourtone.html
  ・人工内耳
   http://www.human.rcast.u-tokyo.ac.jp/topics/04interear.html
  ・音声-字幕変換システム
   http://www.human.rcast.u-tokyo.ac.jp/topics/03onsei-jimaku.html

■福祉工学とビジネス 地域の特殊性、対象への愛着がカギ?

福祉工学とビジネスの関係もこの本のテーマのひとつとなっている。

身体の障害は人それぞれであるため、応用製品は多品種少量生産にならざるを得ない。だから、大企業よりベンチャー企業や町工場が得意とする分野であるかのように思える。しかし、実際にはベンチャーが製品化に成功してしばらくすると、大企業が参入してきて市場を独占してしまうことも多いらしい。著者の関係したコンピュータ操作支援ソフトでの苦い体験も綴られている。

この本で福祉工学のビジネス化についての目の覚めるような解決策というのが提示されるわけではないのだが、いくつか考えるヒントになる提言があった。

ひとつは地域性の特色を活かせということ。北海道大学に長く滞在していた経験からの言葉だが、北海道の場合「寒さ」「積雪」「広域性」の3つが地域の特色である。温度差による人体影響の研究や、積雪時にも使える車椅子、点字タイルの開発などは北海道でなければ長期間研究ができなかったはずだと言い、中央でないからこそ、生まれる研究成果を大切にせよとアドバイスしている。

もうひとつ面白かったのは日本のロボット工学がなぜ世界の先端を進めているのかの分析。日本人はロボットを鉄腕アトムのような人間の味方として愛着を持つ人が多く、それが研究が盛んな理由なのではないかとする考察。

・森山和道の「ヒトと機械の境界面」バックナンバー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/backno/kyokai.htm
ロボットとヒトの関係について詳しいサイエンスライターの森山氏のサイト

■五感で感じ取れるようなものが発見につながる

地域の切実な需要だとか、愛着を持っている対象というのは、”本物”のニーズであり、競争力のある研究になる可能性が高いということかなと思った。このほか、五感を大切にするといいという指摘もあった。

著者の長い研究史を眺めると、意外なところに発見があるものだと感心する。九官鳥、インコ、コウモリ、腹話術の研究が、人工声帯の開発に役立ってしまったりする。きっかけは予算で九官鳥を消耗品として購入して研究室で飼う、コウモリを洞窟へ捕獲しに出掛ける、腹話術の大会で講演するなど、机上にとどまらない行動だった。見事に研究の突破口につながっていく。


手に取れるような等身大のもので、五感で感じ取れるようなものからの発想が意外と役立つ場合がある

というのは福祉工学に限らず研究の極意のように思えた。

■生体機能から生活機能の支援へ。移動、コミュニケーション、情報獲得

著者は、障害者支援を「特殊な境遇の人のための特殊な領域」と見るのではなく、高齢者・病人・幼児などの身体的弱者を支援する社会システムの一つとして考えようとする、世界保健機関(WHO)の提言を支持している。そして、生体機能の障害を補助するという観点から、活動や参加といった、生活機能の充足を実現するための技術開発という方向性が必要だと唱える。

著者の在籍する東大先端研では生活するうえで最も必要な支援技術として、

・移動
・コミュニケーション
・情報獲得

の3つを重点課題として設定しているという。行く、話す、知るということが、活動や参加の原点で、生活の質を引き上げる主要素だということだろう。

引き上げる、支援するだけでは終わらないかもしれないとも思った。障害者があるが故にその他の感覚が研ぎ澄まされて、いわゆる健常者にはない能力を得るケースもあるようだ。全盲の人の中にはモノの気配を感じ取って衝突を避ける能力がある人がいるらしい。この本で紹介された研究によると環境音の反射からモノの位置を割り出すことができるという。耳が聞こえない人の中には読話術といって口の動きから会話を推定する能力を持つ人もいる。マスクをしていても高確率で分かるとも言われる。

こうした技術を突き詰めていくと、まるで超能力のような、まったく新しい能力の開発やロボット開発にも福祉工学は寄与するかもしれないと感じた。

■Windowsのユーザ補助機能

福祉工学と言えるかどうかは知らないが、Windowsにもコントロールパネルを開くと「ユーザ補助」の機能設定パネルがある。ここには普段見慣れない設定が多数用意されている。

例えば視覚が不自由なユーザのために、画面コントラストを大きくする機能。このチェックボックスをオンにすると、

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このように、

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大きなフォントで白黒のユーザインタフェースに変化する。他にもマウスをテンキ操作できるようにしたり、サウンド再生時に画面を点滅させる機能などがある。場合によっては障害がないユーザでも使えそうな機能だなあと思った。

身体が不自由な人にも、そうでない人にも便利な支援アプリケーションは市場が大きそうだ。音声認識、画像認識、読み上げ、その他、チャンスはどこらへんにあるだろうか。

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http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000180.html

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http://www.nikkei.co.jp/nikkeiinfo/guidej/enkaku.html

・封印作品の謎
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・ウルトラセブン 第12話 「遊星より愛をこめて」
・怪奇大作戦 第24話 「狂鬼人間」
・映画「ノストラダムスの大予言」
・ブラックジャック 第41話「植物人間」、第58話「快楽の座」
・埼玉県監修のO157予防ゲーム

これらは世に出ることがない封印作品である。

国が発禁処分にしたわけではなくて、その他の何らかの理由で自主的に封印されている。記事を書いただけでライターとして業界出入り禁止をくらう特撮作品。大作として一般公開されながら二度と公開されない映画。自治体が公開直前に差し止めたゲーム。各業界はこれらの作品をどうしても隠したい、なかったことにしたい理由がある。

元全国紙の新聞記者だった著者は、自分の書いた記事が原因となって、あるゲームが封印されてしまったことに問題意識を持った。そして記者経験で培った取材力を使って、作品封印のメカニズムを広く探り始める。

隠したいと思う関係者ばかりだから取材は当然難航する。著者は諦めずに当事者を探しては、粘り強く食い下がっていく。あとがきによると、この本を書くために記者を辞職し、自動車を売った100万円で銀行預金とにらめっこしながらの執筆活動だったそうだ。かなり大きな人生の賭けだっただはずだ。その緊張感がこの作品を光らせている。

取材を進めていくと、背後にある大きな業界構造、社会構造の暗部が浮かび上がってくる。隠したがっているのは誰で、何が理由で、どのような権力を背景に封じようとしているのか。業界の専制企業、裏社会、圧力団体、封印するものと著者は正面から向き合う。ときに日本の戦後史に関わる思わぬ大物を釣り上げてしまったりもする。

要するにこの本に登場する封印作品の謎の中身は、原爆や精神病や差別問題、18禁テーマに触れたことに始まる。だが、触れただけなら大した問題にならない。問題箇所のある作品は表現を修正削除して再公開されることが多いからだ。ここで取り上げられた作品はそれも許されなかった。

以前、書評した「放送禁止歌」でも、放送禁止の最大の理由は外部の圧力ではなかった。封印が長く続く作品にはもっとドロドロした本当の理由が内部に隠されているのである。著者はその内幕実態を、新聞社の名刺ではなく、フリーランスの肩書きで、取材活動を通して明らかにしていくことに成功した。困難な取材プロセスの臨場感、著者の封印解明への熱意が、読むものに生々しく伝わってくる。新聞記者を辞めてこそ書けた作品だろう。血の通ったドキュメンタリになっている。それが抜群に面白い。

・放送禁止歌
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001449.html

言論の自由を大上段から振りかざさないネット的スタンスもいい。この著者は前書きで告白しているが、大学時代に"酒鬼薔薇聖斗"の顔写真をネット公開して社会的議論を巻き起こしたサイト「反動!」の運営者である。その後、全国紙記者になっていたのには驚いたが、辞職してこの本を書いたのはこの人っぽいなと思う。

2004年10月25日に初版発売で、既に5刷出ているから、相当売れているようだ。記者時代はインターネット担当だったこともあるらしい。次はインターネット関連の封印を見つけて解明して欲しいなと思った。安藤氏にしか書けないテーマがありそうだから。

キーワードの入ったメールだけをデスクトップに表示するメールdeメモ

メールチェックをすべきかどうか、それが問題だ、という状況はよくある。

気の向かない急ぎの仕事をしているときは、「もしかして担当者から連絡がきているのでは?」を口実にメールソフトをチェックしてしまうことが多い。これが大抵、間違いで無関係なメールを読んで時間を無駄に費やしてしまったりする。

直近の仕事に関係するメールがきているかどうかだけをチェックできたらいいのに。

そんなありがちな状況を解決するエージェントがメールdeメモ。

・メールdeメモ
http://members.jcom.home.ne.jp/elzeard/soft/mailmemo/mailmemo.htm
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メールdeメモはユーザに代わって自動的にメールを受信する。内容の表示はしない。件名が登録キーワードで始まっているものが、受信したメールに見つかれば、デスクトップにタイトルだけを付箋紙のように表示する。

逆にメモのデータベースとして使うこともできる。例えばアイデアを思いついたときに携帯から自分にキーワード入りのタイトルでメールしておけば、会社のPCのデスクトップで確認することができる。

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メモを直接書く機能やカレンダー表示機能、簡易スケジューラ機能、検索つき日記記録機能も付属している。日付入りのメモやカレンダーに登録された情報は当日になるとデスクトップに表示される。

このソフトは常駐せず、Windowsの壁紙に情報を書き込むだけの軽いソフトなのも使いやすい。

デスクトップメジャー『測ルンです』
http://onegland.hp.infoseek.co.jp/help-h/help.htm
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便利なデジタル地図をさらに便利にするデスクトップものさしソフト。デスクトップ上の二つの点を指定すると距離を表示する。2点間の直線距離だけでなく複数の点をつなげて経路全体の距離を計算する機能もある。測定単位はピクセル・ミリ・ポイント・インチ・Twip(VisualBasicユーザ用)・尺度。目測に便利な方眼線も単位毎に3段階のサイズで引く機能もある。

画面上で見ているものの大きさが何センチ、何ドットなのか知りたい場合に使うツールだが、日常的にはコンピュータで地図を見るときにも、たいへん便利だ。

例えば地図サービス、マピオンのオンライン地図上で、このソフトを使って2点間の距離をメートルで出せる。やり方は簡単で、地図とツールの尺度をあわせてから測ればよい。

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しかも、その距離の、徒歩、自転車、自動車、任意の移動速度による所要時間まで教えてくれる。

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連続測定で直線をつなげて測れば、歩いたら何分くらいかな?がすぐ解決する。

フォルダ階層でファイルの一覧を作成するツール。

・WinTree のダウンロードページ http://www.hs-jp.com/aska/wintree/
ソフトウェアの配布、開発物の納品、バックアップ等の際に、ファイル情報一覧をつけられると気が利いている。WinTreeは指定したディレクトリ以下のフォルダとファイル情報を読み取って、見やすいテキスト(あるいはHTML)として出力してくれるフリーソフト。 使い方は簡単で対象フォルダを指定して実行ボタンをおすだけ。

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表示項目の設定の設定

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表示形式の設定

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その他の詳細設定。

すると、以下のようなテキストやHTMLが出力される。

テキストの出力イメージ。



出力をHTMLに設定すると以下のようになる。

HTMLの出力イメージ

以前紹介したFilistryよりシンプルでビジネス用とに向いていそうだ。

・ファイル索引ページの自動生成ツール Filistry http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002391.html

・ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論
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素晴らしい!名作が多いピーター・アトキンスの著著の中でも代表作になるのではないか。年始に読んだ最初の一冊だが、いきなり今年ベスト1候補。書名から一般向けのやさしい科学書が連想されるが、決して入門にはとどまらない深い内容がある。

たまには科学知識の頭の整理をしておこうと思って、事典として買ったつもりが、意外にも伏線だらけのストーリーになっていて、引き込まれた。

■10大理論による壮大な科学パノラマ

古代から現代までサイエンスの世界に革新をもたらしてきた10の理論を、1章各30ページ程度で解説する。好きな章から読んでも良いと前書きにあるが、この本の妙を味わうには絶対に順番に読むべきだ。著者は綿密に10の理論を話す順序を設計しており、章を進めるごとに読者の視野が広がっていくように構成している。

1 進化 ─── 複雑さの出現
 進化は自然選択によって生じる

2 DNA ─── 生物学の合理化
 遺伝形質はDNAに暗号化されている

3 エネルギー ─── 収支勘定の通貨
 エネルギーは保存される

4 エントロピー ─── 変化の原動力
 いかなる変化も、エネルギーと物質が無秩序へと無目的に崩壊した結果である

5 原子 ─── 物質の還元
 物質は原子でできている

6 対称性 ─── 美の定量化
 対称性は条件を絞り込み、指針となり、力となる

7 量子 ─── 理解の単純化
 波は粒子のように振る舞い、粒子は波のように振る舞う

8 宇宙論 ─── 広がりゆく現実
 宇宙は膨張している

9 時空 ─── 活動の場
 時空は物質によって曲げられている

10 算術 ─── 理性の限界
 算術は、無矛盾ならば不完全である


各章はテーマが違うが、科学史の整理、基本事項の確認から始まって、パラダイムシフトを起こした中心理論の解説、その後発見された課題、最新の仮説、これからの展望と続く。科学者の興味深いエピソードも随所に織り込まれるが、理論の理解という本筋を邪魔しないように、慎重に配置される。

■下の次元から上の次元を想像する科学

この本で面白かったのは、時空の章ででてくる高次元の理解の仕方。

絵画の遠近法は3次元の世界を2次元に投影する。同じように4次元を理解するには、3次元に投影してから、さらに2次元の図として表現する方法があり、時空理解のツールとして説明されている。4次元の長年の研究者になると、ある程度直感的に高次元の形をイメージできるようになるらしい。パラダイム革新というのは、今いる次元より、高い次元を想像することから始まるのかもしれないと感じた。

理論は複雑とはいえ、科学で世界を理解できることの不思議さについて著者の述べた見解も興味深い。数学体系や物理法則は人間の脳が理解できる体系であるが故に、それを公理として記述した世界は理解できるのだという仮説。

理解可能なものだけを理解するのだとすれば、私たちは無数にある事象のうち、ほんの僅かな部分しか、意識していない可能性がある。それ以外(理解不能な事象)は存在に気づきさえしないのだ。

だから、パラダイムシフトを起こすには、公理系を組み替える必要がある。そうすることで、今は理解できないことを理解可能にすることが必要になる。それは高次元を低次元から想像するということに近いのではないか。

量子論、ナノ、バイオ、脳科学、複雑系、時空など、先端サイエンスの対象は、科学者でない一般人にとって、見えないどころか、想像さえ難しい領域へと突き進んでいる。こうした事象を説明するには、要約や比喩も万能ではなく限界がある。

私たちの一般的な学習は周知の公理の組み合わせでできる定理の数を増やすことでしかなかったように思える。だが、先端科学の応用技術が社会に多大な影響力を持つようになった今、一般読者の公理系のアップデートが必要とされているような気がする。この本はまさにそれを仕掛けている本だ。

■真のテーマは万物理論

この本の本当のテーマは万物理論である。

最終章では、数千年の科学知識を集大成した結果、今日の私たちは世界をどのように理解できるようになったか、が語られる。最新の万物理論に近づこうとしている。より広い意味での万物理論が完成したことは歴史上、何度かあったのではないかと考える。アリストテレスの哲学、ニュートン力学、アインシュタインの相対性理論といった大物理論の支配期間は、やがて人間はすべてを理解し、制御できると信じることもできた。例えば、粒子の位置と速度が分かればあらゆる未来を正確に予測できる、と勘違いした時代があった。

万物理論の完成はルネサンスであると同時に「科学の終焉」が近いことを意味するのだと思う。その後には技術の歴史しか展開することができなくなる。閉塞の中から、パラダイムシフトが生まれて、古い万物理論を根底から破壊してきた歴史が、この本の内容でもある。

逆に現代は万物理論がない時代だろう。以前と違うのはゲーデルの不完全性定理や、ハイゼンベルクの不確定性原理によって、算術や物理の不完全さが証明されてしまったことにあると思う。次の万物理論の構築は不可能か、可能だとしても相当とらえどころのないものになる可能性が高い。

最終章では未来の科学のパラダイムシフトを著者が予想する。10大理論の中で著者が最も大きな破壊力を持つとみなしているのは、やはり量子論であるようだ。量子論は確かに科学の考え方を変えたし、量子論の成果は経済の3割を既に占めているとされる(例えば半導体産業)、影響力の大きな理論である。「第一のパラダイム・シフトは重力理論と量子論の統一がもたらすだろう」とし第2のパラダイムシフトとして物理的実在の根源を説明する、究極理論が遂に登場するだろうと予言する。

科学の未解決な問題のうち最も重要なものとしては、宇宙の起源と人間の意識のふたつをあげている。このふたつは意外にリンクしているのではないか?と読み終わって考えた。人間中心主義宇宙論や、量子論における位置と運動量の不確定性などの考え方は、客観と主観の間に真理をみつけようとする方向のように思える。

究極の万物理論の最終回答は「ビッグバンは私の心の中で始まった」なんていうオチでもおかしくないような気がしてきた。SF小説の読みすぎだろうか。

しかし、まあ、よくこれだけ広い分野を一人で理解し、格調高く説明できるものだと驚く。著者は天才だ。

・昨年度マイベストSF 大作は「万物理論」、中短編は「あなたの人生の物語」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002774.html

年末年始気分でいつもと違う風味の記事を続けます。

2003年度の無敵会議ベストサイト「FuturePlanningNetwork」がこんな企画を実行している。「未来を創造するのに役立つブログ」、「ビジネスパーソンに影響を与えているブログ」を読者投票で決めようというオンラインイベント。

日本のアルファブロガーを探せ2004
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=311
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回答フォームから


(1)「会社のオフィスでは『3つだけ』しかブログを読んではいけない」と言われたら、どれを読みますか
 ・ブログ名1と(簡単な理由)  
 ・ブログ名2と(簡単な理由)
 ・ブログ名3と(簡単な理由)

(2)上記の3つのブログを除いて、2004年にあなたが最も影響されたブロガーの記事を教えてください。
 ・URL
 ・簡単な理由

という質問に答えると投票に参加できる。ブログを持っている場合にはトラックバックでも有効。

無敵会議が終わった後、一昨年の優勝サイトのFPNが、こうした企画をやっていただけるのは、遺志を継いでいただけた気がして(死んでないけど)とても感激。

■アルファブロガー?主観と客観

アルファブロガーという言葉は誰が言い出したのか調べてみると、米国NewsWeekらしい。ネットにトレンドを生み出す先端ブロガーのこと。私も参加しているNECのヌーベルブログの目指すコンセプトはアルファブログそのものだったことに気がつく。

・MSNBC - The Alpha Bloggers
http://www.msnbc.msn.com/id/6693381/site/newsweek/

・ネット世論・ネットのトレンドを生み出すアルファブロガー [絵文録ことのは]04-12/23
http://kotonoha.main.jp/2004/12/23alpha-blogger.html

・Ad Innovator: アルファブロガーの台頭
http://adinnovator.typepad.com/ad_innovator/2004/12/post_2.html

FPN - ニュースコミュニティ- アルファブロガー企画にあたって。
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=317


影響力のネットワークを分析するという意味では、社会ネットワーク論やシステム論の方面では古くから研究が行われている。次の2冊の本など人間関係の本質を知るのに参考になった。

・書評:人脈作りの科学―「人と人との関係」に隠された力を探る
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002338.html

・書評:つながりの科学―パーコレーション
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000406.html

・JSAI2004 Human Network
http://www.carc.aist.go.jp/HUMANNET/
人工知能学会の論文・プロジェクトの共著、共同関係を分析して影響力ある研究者を特定した試み。

また、ブログについては引用関係を抽出しやすいため、Blogdexのようなランキング自動作成サイトが、毎日、客観的なデータを発表している。

・blogdex - the weblog diffusion index
http://blogdex.net/
ブログの引用状況から最も影響力のあるブログを毎日計算して発表する老舗ランキングサイト。

・blogmap - トップページ
http://1470.net/bm/
Blogdexの日本語版のようなもの。

・feed meter - ブログ RSS フィードの人気度と更新頻度を計測するメーター
http://feedmeter.net/
RSSのダウンロード数、引用関係から人気ブログランキングを発表する。


だが、今回のアルファブロガー企画は、主観で選ぶのが基本であるようだ。人間の関係において主観というのは非常に大きな影響要素だと思う。機械的計算では選び出せないブログが発見されると面白い。20日まで投票を受け付けているが、その後の発表が楽しみ。

■私の投票サイト

さて、私も投票してみる。毎日読むのは海外のブログが多いので、日本のサイトは良く知らないのだが、3つならば書ける。

(1)「会社のオフィスでは『3つだけ』しかブログを読んではいけない」と言われたら、どれを読みますか
 ・ブログ名1と(簡単な理由)

・優雅なブログが最高の復讐である
http://d.hatena.ne.jp/walkinglint/

長文引用と大量の短評。私の代わりにブログを読んでまとめてくれる超高性能ブログリーダーエージェントソフト(?)として活用させていただいているから。ここ一箇所読めば10や20のブログを読んだのと同じ。

 ・ブログ名2と(簡単な理由)

松岡正剛の千夜千冊
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya.html

1000冊を超えても続く編集の神様松岡正剛氏による書評ブログ。あまりの読書量と背景知識にめまいがする。憧れ。だが、濃すぎるが故に毎日は読まない(読めない)。

 ・ブログ名3と(簡単な理由)

www.textfile.org - テキストとプログラミングの寡黙な情報集
http://www.hyuki.com/tf/

寡黙の裏にある抜群の技術センスと洞察力。相当たくさんの候補から選んで慎重にコメントしているはずだと推測。考えるきっかけ、深く調べる起点を与えてくれる。


 (2)上記の3つのブログを除いて、2004年にあなたが最も影響されたブロガーの記事を教えてください。

 ・URL
 ・簡単な理由

・いやな法則
http://namazu.org/~satoru/misc/nasty-laws.html

他のどこにも書いていない真実だから。年下なのだけれど著者の高林氏の瞬間洞察力は(たまに)非常な尊敬に値すると思うから。何日か昨年は行動を共にして本物と確認できたから。

PSPを発売日12月12日に入手していたのですが、諸事情あって、触ったのは年末休みに入ってからでした。2ちゃんねる等のコミュニティでなぜか散々叩かれているPSPですが、個人的には、かなり良くできていると驚きました。

■第一印象

・PSP バリューパック
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年末年始でいじりまわしての感想は、

・画面が明るく美しい
 4.3インチ 16:9 ワイドスクリーンTFT液晶
 480x272 ピクセル、1,677万色
 最大200cd/ m2(輝度調整付)

・多彩なインタフェース
 無線LAN、赤外線、USB、メモリースティック、
 ヘッドホン/マイク/コントロール 一体型端子
 UMDディスク 片面2層 1.8GB

・3D描画能力が想像以上に高い

という高評価ですが

・ソフトウェアがないためポテンシャルを十分に引き出せていない

のが最大の欠点です。無線LANはインターネット接続可能な仕様でありながら、対応ソフトがないため、まだゲーム以外で使えません。USBもPCと簡単なファイル同期ができる程度。これは今後に期待です。

ゲームソフトについては、これから十分期待できるわけで、ゲームをする人であれば間違いなくおすすめ。Webブラウザーやメールソフトが登場すれば、無線LAN経由でメールやテレビ番組表をチェックする家庭内モバイル端末として活躍してくれそうです。

■ゲーム2本

ゲームは以下の二つを入手。

・RIDGE RACERS
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PSPの3D描画性能を味わうのにはベストチョイスだったと思いました。カーレースを存分に味わえます。非公式ながらインターネット対戦が可能。

・METAL GEAR ACID
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メタルギアソリッドがカード戦略ゲームになったというので、名作「カルドセプト」のような内容を期待したのですが、そこまでの中毒性はないですね。先へ進んでいくとカードのコレクションと戦術の面白さがでてきました。

■周辺ツールでモバイルAVプレイヤーとして使うツール紹介

さて、実はゲームなんてどうでもよかったのです。

私はいじりがいのある携帯AV端末として購入しました。

早速、512メガバイトのメモリースティックDUOを購入。

SONY MSX-M512S ニュー・メモリースティックPROデュオ 512MB
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テレビ録画やDVD、Webでダウンロードしたビデオファイルなどを再生しています。変換の手間がかかりますが、十分に鑑賞に値します。ただ、電車で観ているとまだ注目されてしまうのが難。テキストを画像化して読むこと、iTunesと同期して音楽を聴くことも以下のツールでできるようになりました。

・Image Converter2
http://www.jp.sonystyle.com/Nws/Software_dl/Pc/Software/Haa/2105710294200.html
PSP用のMPEG-4変換ソフト「Image Converter 2」が販売開始
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20041213/sony.htm

公式の映像・画像変換と転送ツール。PSPの再生形式MP4へ変換。1000円。購入して使っています。現状、最も手軽で確実にこの目的を実現します。

ですが、以下の二つのフリーソフトを組み合わせることで、機能的にはImageConverter購入は必要なくなります。

・動画変換君
http://www.nurs.or.jp/~calcium/3gpp/
動画ファイルをPSP、携帯用に変換するフリーソフト。

・PSP動画転送君
http://homepage2.nifty.com/YOSHI787/odeen/freesoft/PSP.html
MP4ファイルをPSPに認識可能なディレクトリ、ファイル名にして転送するフリーソフト。
・PSPSync
http://samurai.pose.jp/ryn/products.php
iTunesのプレイリストとPSPのプレイリストを同期するソフト 。iTunesのプレイリストを選択してPSPへMP3ファイルごと転送可能

・Text To JPEG files for PSP
http://www.fumi2kick.com/jpegbook/index.html
テキストを画像化してPSPのフォトアルバム機能で閲覧可能にするソフトウェア。


今年はPSPHacksの年になるのは間違いなさそうです。

・Webブラウザ
・Linux等OS
・Perl/Ruby
・PCによる制御系
・各種ビューア(オフィス系、PDF、Flash)
・Perl/Ruby等スクリプト言語系

等、Hackする入り口が現れれば、一気に流れが加速しそう。

関連情報:最新情報は個人とコミュニティによる、この二つを見ておけばよさそう。

・PSP情報局
http://blog.livedoor.jp/lets_caitsith/

・PSPwiki - PspWiki
http://psp.holybell.to/

昨年末の超忘年会議冒頭に出演させたりしましたが、私の息子も1歳5ヶ月になりました。本好きになるといいなあと思いつつ、絵本を与えていたら、我が家はちょっとした図書館のような状況になりました。買った絵本が100冊は超えていることでしょう。

息子の反応を見て、絵本のベスト3を0歳代と1歳代で作ってみました。どれも何度も読んでくれとせがまれたり、彼が一人でじっくりと眺めて、しばしの解放、休息を私と妻に与えてくれた名作ばかりです。

0歳から1歳のこどもを持つ方に自身を持っておすすめできる作品集。

■0歳児代のベスト3

1 がたん ごとん がたん ごとん 安西 水丸
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乗せてくださ~い。ガタンゴトン。乗せてくださ~い。ガタンゴトン。の繰り返しでしかないわけですが、彼を絵本好きにさせた名作中の名作。ついでに電車好きにしてしまいました。超忘年会議の翌日は秋葉原の交通博物館に連れて行ったら、鉄道関連の各展示の前でへばりついて離れなくなってしまいました。これがテクノロジーへの好奇心の第一歩だといいのですが、単なる鉄道マニアになったらどうしよう。

・交通博物館 TRANSPORTATION MUSEUM JAPAN
http://www.kouhaku.or.jp/

男の子率高い。私も幼児の頃、祖父に連れてきてもらった微かな記憶がありました。30年ぶりの訪問時は親になっていました。帰りは向かいの万世で食事、その後アキバへ直行。

2 じゃあじゃあびりびり まつい のりこ
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イヌは「わんわんわんわん」、水は「じゃあじゃあじゃあ」、紙は「びりびりびり」。擬態語と単純な絵だけの本。ストーリーなどないわけですが、彼は大喜びで手をたたいて喜んでいる本です。背景なしのシンプルな絵と、コントラストの高い配色、こどもの発音しやすい擬態語の組み合わせパワー。

3 にこにこひよちゃん アランジ アロンゾ
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アランジ アロンゾは別の分野でファンだったのですが、こんな絵本も作っていたなんて驚きました。発見もあった本でした。まだ息子が生後数ヶ月で何も話せなかった頃、この絵本をよく読み聞かせていました。言葉を覚え始めた頃、花を見ると指差して「ぱっ、ぱっ」と言うのです。花はまだ教えていないのに、なぜ「ぱっ」なんだろうねえ?と妻と一緒に考えてみたら、この本でした。この本に「にこにこひよちゃん にこにこにこ ぱっ」といって花が咲くシーンがあるのです。言葉が分からないからといって油断して親が会話していると乳児は実は良く聞いていて、発音できるようになると使い始めるという怖い事実がその後、わかっていくわけでしたが...。

・アランジネット
http://www.aranziaronzo.com/
公式サイト。

・アランジ・アロンゾの「わるい本」はよい本
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■1歳頃のベスト3

1 しろくまちゃんのほっとけーき
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「1970年の発売以来ロングセラーを続ける「こぐまちゃんえほん」シリーズのなかでも、特に人気の1冊。」ということで、私の幼児時代もあったはずなのですが、私は読んだかどうか覚えていません。こぐま社のシリーズはどれもアットホームでいい感じですが、とりわけほっとけーきがいいのじゃないでしょうか。しろくまちゃん万歳。

2 さよならさんかく
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2位もこぐま社。「しかくはなあに」「しかくはとうふ」「とうふはしろい」という風にモノと色・形の対応関係を学習することができる本。これでだいぶ言葉を覚えてくれました。いまでは「だえん」「ながしかく」まで学習。次は平行四辺形とか台形あたりいってみますか。しろくまちゃん無敵、

2 おててがでたよ
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この本のおかげで服に手足を通してくれるようになり、着替えが楽にできるようになりました。

■30歳代のベスト3

息子の反応はともかく私が気に入っているのが以下の本。

安野光雅という絵本作家の作品

・旅の絵本 安野 光雅
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世界中の街や田園を描いた風景画集で、額に入れて飾ってもインテリアになりそうですが、なんの説明もなしに、いろいろと仕掛けが隠されています。小さく描きこまれた絵の片隅に有名な民話やおとぎ話や歴史的人物が溶け込んでいて、それを探すのが楽しいです。これは大人のための絵本といってもよさそう。

もりの絵本 安野 光雅
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これも安野 光雅氏。森の風景を良く見るとたくさんの動物が、木々の陰や枝葉の向こう側から浮き上がって見えてくる不思議な本です。1ページに驚くほどの隠し絵があることに驚かされます。それでいながら、絵としても完成されている。この作家はすごいですね。

でこぼこフレンズ DVD
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DVDですが。「おかあさんといっしょ」でこぼこフレンズ。12人の外観も性格も異なるキャラクターが繰り広げる数十秒のコント集。最初この番組を観た時には、なんじゃこりゃ?と思ったわけですが、だんだん私も分かってきました。この番組のメッセージは深いですね。

このDVDにも収録された主題歌。


ぼく と きみ はじめてあった
こんにちわ こんにちわ
ぼく と きみ さんぽして
ちいさな きのみを みつけたよ
ぼくが おいしそうっていったら
きみは きれいだねって いったよ

<中略>

ぼく と きみはちがうから
きみを すきに なるのかな

そうか、今の子供たちは「みんな一緒」で始めるのではなくて「みんな違う」から始めるのですね。違いを肯定するこの歌詞、フルコーラスではじめて聞いたとき感動してしまいました。今では息子とともにファンの番組です。


■番外編 

そして昨年度の子育てコミュニティで話題をかっさらったベストセラー絵本。愛子さまの愛読書。以前、私はそれと知らず、家族で上野の国際子ども図書館(国立国会図書館の支部)に遊びにでかけた際に、棚で偶然発見。これはいいねえと言っていたら、やはり名作でした。

・うずらちゃんのかくれんぼ
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その後、これも当然、買いました。

絵の配色が素晴らしく美しい。ストーリーはオチもいいですね。

・ようこそ!国際子ども図書館
http://www.kodomo.go.jp/
世界中の絵本を自由に読む部屋があります。動物園の帰りにおすすめ。

年末年始の特別企画ということで普段は書かない小説の書評。

大作と中短編を一冊ずつ。

・万物理論
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現代SF最高峰の呼び名高い、グレッグ・イーガンの最新邦訳。

年末に読んだのだが2004年度の最高SF小説作品だと思った。感動。

本の扉の紹介文。


すべての自然法則を包み込む単一の理論、“万物理論”が完成されようとしていた。ただし学説は3種類。3人の物理学者がそれぞれの“万物理論”を学会で発表するのだ。正しい理論はそのうちひとつだけ。映像ジャーナリストの主人公は3人のうち最も若い20代の女性学者を中心に番組を製作するが…学会周辺にはカルト集団が出没し、さらに世界には謎の疫病が。究極のハードSF。

現代の物理学の世界には、世界を構成する4つの力、すなわち電磁気力、弱い力、強い力、重力の4つの力を、ひとつの方程式で説明しようとする統一場理論がある。今のところ、最新の超ひも理論仮説では、この4次元宇宙(3次元空間+時間)は、本当は10次元である。隠れた6次元は”折りたたまれて”人間には見えないことになっている。そして、複雑怪奇な10次元折り紙の、皺が量子として観測可能となり、世界の最小構成単位として、質量のある物質を形作っていく。だが、まだ4つの力の成り立ちや量子の振る舞いについては謎が多い。

この小説の舞台は2050年。人類は統一場理論を超えて、ついに天才科学者によって、宇宙の成り立ちすべてを説明する万物理論が発表されようとしている。自然科学の頂点に立つ究極の理論。その内容は、実際に読んでいただくとして、万物理論の内容自体が小説のプロットと深く絡み合っているのが見事だ。情報理論と物理理論の統合のその先に人類を待ち受けているものは?。

この小説には、今後50年の人類の技術の進歩を予測する記述が無数にある。主人公は映像を視神経に接続したカメラで記録し、腹腔に内蔵した記録装置に蓄積する。情報を身体にインプラントしたエージェントソフトウェアから引き出す。バイオ、ナノ、ネットワーク技術がこれからの50年間でどう人類の社会に影響を与えていくのかが、筋とは無関係に詳しく語られるのも興味深い。グレッグ・イーガンの予言はどこまで当たるのだろうか。

コンピュータ産業の未来に関連する記述が見つかった。筋とは関係ない部分なので、長めに引用してみる。


シドニーち近郊の人口の中心は、少なくとも半世紀以上前からパラマッタ地区より西にあるし、たぶん現在はブラックタウンにまで移っているが、都心部の衰退が本格的にはじまったのは二〇三〇年台、オフィスや映画館、劇場、物理的実体をもつ美術館、公立博物館などがみな、ほぼ時を同じくして廃れたころのことだ。広帯域光ファイバーは一〇年代から大半の居住用建造物に接続されていたが、ネットワークが成熟するにはその後二〇年を要した。コンピュータと通信の世界における世紀末の遺物が堆積させた、互換性のない標準、非効率なハードウェア、原始的OSといった不安定な体系が、二〇年代に完膚なきまでに破壊され、そのときはじめて ─── 長年の時期尚早な誇大宣伝や、それが招いた反感から来る皮肉や嘲笑の末に ─── ネットワークを利用したエンターテイメントやテレコミュニケーションは、精神的拷問の一形態から、以前ならオフィスや映画館等々へ出かける必要があったケースの九割の、自然で便利な代用手段へと脱皮できたのだった。

なるほど。OSが退治されるのは2020年代か。

技術だけでなく、政治や宗教、環境、ジェンダー、医療といった分野でのイノベーションも多数登場し、未来史を読んでいる気分になる。

かつてSF小説といえば、古くは海底や地底、その後は宇宙や時間旅行が主なテーマだったと思う。最先端の作家グレッグ・イーガンはこの小説以外にも、情報理論や量子力学をテーマにした作品を幾つも発表している。人類の本当のフロンティアは宇宙から、内なる情報の地平へと動いてきているということなのかもしれない。

文庫本とはいえ600ページの大作で理論説明の記述も多いため、読了するまでかなりの時間を要するが、その価値は十分にあった。究極のハードSFの呼び名に恥じない大作。おすすめ。

#ところで読んだ方にしか分かりませんが、この小説には情報カルト?みたいな宗教がいくつか登場します。どうやら私は”AC主流派”です。


そして、もう一冊。こちらもヒューゴー賞、ネビュラ賞を何度も受賞したテッド・チャンの中短編集。

・あなたの人生の物語
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地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当した言語学者ルイーズは、まったく異なる言語を理解するにつれ、驚くべき運命にまきこまれていく…ネビュラ賞を受賞した感動の表題作はじめ、天使の降臨とともにもたらされる災厄と奇跡を描くヒューゴー賞受賞作「地獄とは神の不在なり」、天まで届く塔を建設する驚天動地の物語―ネビュラ賞を受賞したデビュー作「バビロンの塔」ほか、本邦初訳を含む八篇を収録する傑作集。
全8編だが、受賞作を3作抜き出して紹介すると以下のようなラインナップ。

・「バビロンの塔」
バビロンの塔の建造末期に働いた職人が見た宇宙の不思議。

・「あなたの人生の物語」
宇宙人とコンタクトした言語学者が綴った新しい世界理解の物語。

・「地獄とは神の不在なり」
天使の降臨を目撃した人たちが神を愛する意味を求める物語。


テッド・チャンは中短編の中に壮大な奇想を組み込んで提示してくる。中心となるのは理解の不可能性。神や異星人を私たちは理解しようとするが、高次の神や異星人は私たちを意識さえしていないのではないか?というようなテーマ。グレッグ・イーガンの万物理論がすべてを知ることがテーマだとすれば。テッド・チャンはすべてを知ることの不可能や無意味さで読者を突き放し、ゾクゾクさせる。こうした神の顕現は映画「プロフェシー」にも共通するものがあるなあ。

この二人の新世代の作家が今年はどんなものを書いていくのか期待。

 新春のお喜びを申し上げます。

 旧年中は大変お世話になり、

 誠にありがとうございました。

 今後とも宜しくお願い致します。

戦争と災害で暗いニュースが多かった2004年ですが、今年は良いことがいっぱいだといいですね。

さて、日経新聞者が早速、今年も、識者21人に2005年の

2005年IT展望 :ITビジネス&ニュース
http://it.nikkei.co.jp/it/column/enq05.cfm

昨年に続いて今年もマルコフ先生に登場していただき、2005年の識者の意見を要約してもらいます。

・マルコフ連鎖による作文。
http://www.cc.rim.or.jp/~knagasa/jmarkov/jmarkov.html

原理は上記のページの通りです。原文テキストを学習データとして与えると、文章の要素を分解して、ありがちなパターンで並べ替える、と言う人工知能的の自動作文ソフトです。現実の人間の話を聞いて、それっぽい文章をしゃべるというわけです。

早速21人分の「Q2 2005年、ITにおける注目のテーマやトレンド、キーワードは? 」の回答部分だけを集めて、学習データとして、マルコフ先生に渡しました。先生は21人の英知をひとつの文章に自動要約してくれました。これで21人分読まなくてもよいはず。

今年のテーマ、トレンド、キーワードはこんなかんじです。


生活者が持つ情報機器の間での情報の交換・取り込め詐欺」そして「振り込め詐欺」そして「振り込め詐欺」の廉価システム登場による小規模店舗への普及、「Wikinews」が期待される。多くのユーザーに受容されるためには「今までのやり方よりも、便利で簡単、お得」ということが条件になると思われる。「Felica」の廉価システム登場による小規模店舗への普及、「バーチャルをリアルな世界に引き続き各種のブレークスルーが生まれてくると思う。エンタープライズソフトの分野では、9.11報告書が公表されて以来、IT分野でもサイバーセキュリティーの一層の強化が課題。鉄道、電力、航空などすべての重要インフラの基盤となる通信インフラのセキュリティー対策とサイバー空間におけるセキュリティー対策とサイバー空間におけるセキュリティー対策は、ネット時代の、自分の人生の主役の座をITに明け渡すのではなく、あくまで自己決定のための道具として、IT分野でもサイバーセキュリティーの一層の強化が課題。鉄道、電力、航空などすべての重要インフラの基盤となる通信インフラの基盤となる通信インフラの基盤となる通信インフラのセキュリティー対策は、ネットで音楽をダウンロード購入して様々なプレーヤーで聞きたいという期待は顕在化していたが、著作権問題がネックになり、なかなか本格的普及フェーズに至らなかった。「おれおれ詐欺」は普及が進む状況のもとで、開発拠点などの一部をコストの低い海外へ移転することは必然の流れであろう。オフショアリングが、5年間で5億ドルという破格の契約金で衛星ラジオ業界への転身を発表したことも、大きな追い風になると考えられます。コミュニケーション ビジネス界でも一般生活の中でも、コミュニケーションをバーチャルの世界に引き続き各種のブレークスルーが生まれてくると思う。エンタープライズソフトの分野では、ITビジネスマネージメント、サーチエンジン半導体関連はデジタル家電、ホームネットワーク、ITビジネスマネージメント、サーチエンジン半導体関連はデジタル家電、ホームネットワーク、IT部門をビジネスユニットとしてとらえてその効率化、自動化、意思決定支援をサポートするITビジネスマネージメント(ITBM)関連のソリューションが面白い。ウォルト・ディズニーがブルーレイディスク陣営に支持を表明したことで両者ほぼ互角状態。このまま互換性のない両規格が併存するようなことになったらどうだろう。消費者視点から申し上げるならば規格統一を切に願うばかりである。デスクトップサーチ&パーソナルサーチ 上記のブログ等の浸透と重なって、個人の情報接触フローが大きく変わるきっかけでしょう

なんとなく、わかったようなわからない気がしますが、つかみどころのない時代を象徴しているということかもしれません。

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