書評力:6万クリックのユーザ行動解析 営業力のある書評とは何か?
ブログで書評をはじめてから1年3ヶ月の期間に、ユーザが記事を読んでアマゾンへ移動した6万件のクリックのデータを解析してみます。6万クリックで2800点(1600種類)の商品を販売しました。分母としては同傾向の書評ブログの一般的ノウハウを抽出するには十分だと判断しました。
Webサーバの1900万ヒット分のアクセスログ、アマゾンアソシエイトが提供する過去データを統合し、以下の4つの数値に注目しました。
・アクセス数 書評のページビュー
・クリック数 書評を読んでアマゾンへのリンクをクリックした数
・販売数 アマゾンで購入された数
・売上高 購入結果の売上高(単価×販売数)
ここでは書評力を営業力と定義します。良い書評とは読んだ人に実際にその本を手にとってもらう本とします。
最初にアクセス数、クリック数、販売数、さらにアクセスログから得たビジター数(ユニークユーザ数)という要素も加味してみました。
4つのパラメータを統計ソフトを使って相関の計算しました。アクセス数が多ければクリック数が多く、クリック数が多ければ販売数が多いなど、当然ですが相関が深くあることが分かりました。ただし、すべての組み合わせのうち、アクセス数と販売数の相関が最も弱いものでした。つまり、アクセス数を増やしても販売数とつながる可能性は低いと考えられます。そして、ビジター数と販売数の間にはより強い相関が見られ、単純に一人当たりのアクセス数を増やすよりは、人数を呼び込むことが大切ということも分かります。リピータだけでなく、新規のお客を増やすことが重要ということが言えそうです。
さて、早速、各要素でランキングを作成しました。アクセス数ランキングは昨日のものと同じです。
書評のURLは書評ページへ、本の表紙イメージはアマゾンへリンクしています。
■アクセス数ランキング "注目を浴びた書評"
昨日のランキングと同じデータ
1位 キッパリ! たった5分間で自分を変える方法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002147.html
2位 非言語(ノンバーバル)コミュニケーション
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000549.html
3位 日本人の苗字―三〇万姓の調査から見えたこと
http://www.ringolab.com//note/daiya/archives/001909.html
4位 三色ボールペン情報活用術
http://www.ringolab.com//note/daiya/archives/000522.html
5位 論理サバイバル―議論力を鍛える108問
http://www.ringolab.com//note/daiya/archives/002719.html
6位 共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人
http://www.ringolab.com//note/daiya/archives/000533.html
7位 怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001944.html
8位 鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ
http://www.ringolab.com//note/daiya/archives/000575.html
9位 犬は「びよ」と鳴いていた―日本語は擬音語・擬態語が面白い
http://www.ringolab.com//note/daiya/archives/000935.html
10位 集中力
http://www.ringolab.com//note/daiya/archives/001205.html
■クリック数ランキング ”気になった書評”
1位 成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000956.html
アクセス数ランキングではトップ10に入らなかったこの記事が意外にもクリックでは1位です。著者プロフィールに対する私の紹介の仕方が興味を誘ったのではないかと考えています。しかし買う人は少なかった。
2位 <美少女〉の現代史――「萌え」とキャラクター
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001957.html
美少女、萌えというテーマを取り上げたのが受けたようです。
3位 知恵の輪読本―その名作・分類・歴史から解き方、集め方、作り方まで
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001376.html
・知恵の輪読本―その名作・分類・歴史から解き方、集め方、作り方まで
これは書評記事ではなかったのですが、知恵の輪というキーワードで検索経由でたどりつき、気になったユーザがクリックしたようです。
4位 企画書提案書大事典
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000575.html
・企画書提案書大事典
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/447853022X/daiya0b-22/
これは9位の「鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ」の関連書籍としてリンクを紹介しただけでしたが、鉄則!を抜いて、より多くクリックされました。不思議です。
5位 論理サバイバル―議論力を鍛える108問
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002719.html
論理サバイバル―議論力を鍛える108問
アクセス数ランキングで第5位でしたがこちらも第5位。
6位 人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html
タイトルどおり、人の心を動かしました。
7位 キッパリ! たった5分間で自分を変える方法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002147.html
アクセス数ランキングではトップでしたが、クリックでは7位。
8位 花園メリーゴーランド [少年向け:コミックセット]
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002358.html
皆さん、やはり、これ気になりますか。面白いですよ。
9位 鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ
http://www.ringolab.com//note/daiya/archives/000575.html
アクセス数、クリック数、販売数、売り上げの4つのランキングにすべて登場しました。
10位 人と人との快適距離―パーソナル・スペースとは何か
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001278.html
何度か別の記事から書評記事にリンクした結果かもしれません。
1位、2位には意外な展開がありました。アクセス数においては大したことがない書評記事から、大量のクリックがありました。これは書評の書き方が良かったということでしょうか。
■販売数ランキング ”買う気になった書評”
そして実際に購入に至った書籍です。1位は44冊売れました。
1位 人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html
やはり、人の心を動かしたんですね。
2位 すごいやり方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001597.html
タイトルが勝利。
3位 創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001285.html
絶賛した書評が良かったのでしょうか。
4位 劇的瞬間の気もち
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002385.html
誰でも読んでみたいですものね。調子に乗って私の劇的体験まで書いてしまいました。
5位 鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000575.html
仕事ですぐ使えそうというのが購入理由ではないかと思っています。
6位 大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html
文章術、表現術は人気。
7位 「分かりやすい表現」の技術―意図を正しく伝えるための16のルール
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000451.html
これもまた表現術。ベストセラーだそうです。
8位 企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000904.html
そして発想術。著者の樋口さんとはその後何度もお会いすることに。
9位 夜這いの民俗学・性愛編
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002358.html
誰しもこのテーマは気になるもので。
10位 中国経済大予測
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002482.html
中国は関心が高い。
実際に買われた数は第一位「人の心を動かす文章術」で44冊でした。
■売り上げランキング
販売数とは別に売り上げでランキングを集計すると以下のようになります。こちらには安い本ほどたくさんは売れなかったけれど、売り上げには貢献した単価の高い本が含まれます。また私の書評を信頼して買っていただけたということでもあるかもしれません。このランキングは私のおすすめに比較的近いものになってきています。
1位 人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html
数が売れました。
2位 ユーザーイリュージョン―意識という幻想
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001933.html
比較的高い本ですが、絶賛したためによく売れました。
3位 鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000575.html
4位 創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク
創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001285.html
5位 Google Hacks―プロが使うテクニック&ツール100選
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000588.html
・Google Hacks―プロが使うテクニック&ツール100選
比較的高額な技術書ですが、技術者に愛されています。
6位 それは「情報」ではない。―無情報爆発時代を生き抜くためのコミュニケーション・デザイン
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000510.html
・それは「情報」ではない。―無情報爆発時代を生き抜くためのコミュニケーション・デザイン
紙の本であるメリットをいかした本であるため、買う意味があります。
7位 すごいやり方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001597.html
なにがすごいのか知りたいのが人情。
8位 歴史の方程式―科学は大事件を予知できるか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000778.html
9位 劇的瞬間の気もち
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002385.html
10位 競争戦略論〈1〉 Diamond Harvard Business 名著論文シリーズ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001165.html
■分析 ”書評力”を計算する
まず、4つの各要素ランキングを数値化するため、各ランキング順位に対して、書評力要素ポイント(10-順位)点を与えました。1位ならば10点、5位なら5点、ランキングしていなければ0です。細かい順位を知りたいわけではないので、この際、計算の簡単化のため、各要素のランキングの根拠となる細かな数値はこの際無視しました。
各ランキングのトップ10を私の考える書評要素の重要度の重みづけしました。
(1)アクセス数 25% 本の選び方、キャッチコピーのつけ方
(2)クリック数 25% 書評文章の書き方、誘い文句の巧みさ
(3)販売数 40% 書評に対する信頼感の強さ
(4)売上高 10% 高い本を売る決定力
前者二つはプレセールス要素、後者二つがセールス要素といえるでしょう。書評の目的は実際に読んでもらうことなので、販売数に高い重みを与えました。
この計算方式で、
人の目を引き(1)、関心を刺激し(2)、買う気にさせ(3)、信頼させる(4)書評
を総合的に選び出しました。それが私の定義する書評力です。
例えば、
人の心を動かす文章術
(0)(4)(10)(10)に対して重みを加えると、
0 + 100 + 400+ 100 = 600
鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ ならば
(8)(1)(5)(7)
200 + 25 + 200 + 70 = 495
というのが書評力です。
すると上位5位に出てきたのは、各ランキングに頻繁に登場した、以下の書評でした。
人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html
鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000575.html
創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001285.html
すごいやり方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001597.html
劇的瞬間の気もち
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002385.html
これらの書評の共通点をまとめました。
そして、書評力のある書評を書く戦略は、
・自分の体験談の文脈で具体的に役立つ本だと紹介せよ
・本が解決する問題を明らかにし、それに対する解決箇所を本文より引用せよ
・最初または最後に絶賛するキラーセンテンスを使え
であると結論しました。
■キラーセンテンス 買わせた言葉
ついでに、キラーセンテンスとは何か?ですが、実例を抽出しました。
「物凄く「今が旬」な本だと思う。興味のある人はいつか、ではなく、今、読むべき。」
「ああ、これは、大絶賛です。」
「実践的という点ではこれがベストである。」
「タイトルに偽りはないと思った。」
「とても面白いです。企画力の勝利。オススメです。」
「目からウロコという素直な感想。」
「ちょっとした衝撃を受けた一冊。」
結局のところ販売数上位には共通して絶賛するセンテンスが入っている。これがキラーセンテンスでした。
結論:本当に買ってもらいたいときには手放しで絶賛すること。
今年最後の明日も書評の話が続きます。
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