未踏プロジェクト中間報告会@京都で気になったプロジェクトたち
未踏プロジェクト中間報告会@京都で気になったプロジェクトたち
京都でIPA未踏プロジェクトの中間報告会(石田PM、長尾PMの合同)に参加。今期も残すところ3ヶ月で各プロジェクトも目に見える形の成果が出てきていました。気になったプロジェクトを3つばかりピックアップして紹介してみます。
IPA 2004年度未踏ソフトウェア創造事業 「石田PM・長尾PM合同中間報告会」
http://www.lab7.kuis.kyoto-u.ac.jp/mito/
■「Community Webプラットフォーム」
沼 晃介氏(総合研究大学院大学 博士課程)
セマンティックWebの到達点のひとつがTrust(100%信頼できる)。この研究では、人間関係における信頼を利用して、Web上のコンテンツを信頼できる情報にするための、コミュニケーションプラットフォームが開発されています。
信頼できる人の情報は信頼する。
Community Webプラットフォームは、個人間の信頼に基づく情報流通を実現するための技術で、基本要素は個人(のWeb)、個人間のリンク、興味の度合い、からなります。主にブログの閲覧やリンク、コメントの状況から、ユーザが何をどのくらい信用しているかを数値化します。
3つ目の興味の度合いとは、
Check:どのサイト・人に注目しているか
Clip: どのコンテンツに注目しているか
Post: どんな意見を表明しているか
Anotate:どんな意見に反応しているか
といった情報から得るそうです。
具体的には、RSSリーダーのGlucose、RSS更新チェッカーのRNAの技術をベースにされています。Glucose内部から、ソーシャルネットワーキングサービスにアクセスして、人間のつながりデータを得るなどの実験的機能がデモされました。GreeやMixiの友人のブログ更新一覧は大変便利なわけですが、それがさらに拡張されて、ブログと関心空間とRSSリーダーが合体したような知識コミュニケーションツールを作っているようです。
ブラウザ、ポータルサイトに変わる、新しい情報アプリケーションが誕生するかも。
■「世界規模ソースコード検索エンジンの開発」
高林 哲氏(独)産業技術総合研究所 研究員)
資料がアップされる予定、だそうです。
Namazuの次はGonzuiだった。
Namazuの開発者でオープンソース界の有名人、高林さんの最新作。プログラムのソースコード専門の検索エンジン ゴンズイ(ナマズ目、毒がある、群れる)。ApacheやPostgresなど世界中のオープンソースコードを横断検索できるエンジンです。関数名や変数名、コメントやリファレンスなど検索オプションも多彩で、JavaScriptによる可視化の仕組みも盛りだくさんに実装されていました。現在はC言語のみで公開時にはRuby,Java、Pythonなどの言語にも広く対応していきたいとのこと。
さすがだなあと感じたのは、コーディングの際に使われる部品選びの眼。このタイプの検索エンジンを作るとなると、普通はApacheとSQLデータベースをベースにしてなどと考えがちですが、高林さんが選んだのは組み込み型DBのBerkleyDBと、組み込み型WebサーバのWebRick。敢えて低レベルの組み込み系をベースとすることで、インストールが簡単で高速に動作するプログラムを実現しようとしている模様。作るのは相当大変だと思うのですが、フリーソフトとして公開予定のパッケージは、簡単インストール、設定不要ですぐに一般ユーザが利用できる優れものになりそうでした。
高林さんと先日夜中にチャットしていたときに私はインクリメンタル検索機能が欲しいのですが実装予定はありませんか?と聞いたら「ありません」と返事が返ってきていたのですが、当日デモしたバージョンはそのリクエストに応えて、インクリメンタル検索機能がちゃんと動くものになっていました。意見の採用ありがとうございます。
とりあえずリリースされたら、プログラマに愛される定番検索サイトになりそうです。なお、公開サーバの運営パートナーを探しているとのことです。関心のある団体や企業の皆さんは高林さんにコンタクトしておくと、すごいことになるかもしれませんね。
■「XM支援ツール Galapagos の開発」
中嶋 謙互氏(コミュニティエンジン株式会社 代表取締役)
コミュニティエンジンの中嶋さんはとにかく頭の回転が速くてキレものですが、何を作るかと思えば、回転の速い会議支援システムでありました。XM支援ツール Galapagos。XMはeXtreme Meetingの略。会議を生産的にするための実践的な方法を集めたもの。
その方法とは、
議事録ドリブン(会議) 会議=議事録をあるフォーマットにしたがって完成させること議事録ドリブン(プロジェクト) プロジェクトは議事録のライフサイクルである
意味の明確化 結論、意見、雑談、ToDoなど。議事録をフォーマットに載せる
トラッキング
ジョイントアテンション
タスクの共同所有
議事録は決定ではない
必要なときに必要なだけ
適度な休憩、時間管理
アイスブレイキング
などのノウハウであるそうです。
XM/Galapagosとは、
・プラクティスを抽出しツール化する
・ツールを通してプラクティスを自然に体得する。
というアプローチです。
そしてこうした会議を支援するGalapagosは「ミーティング要請ギプス」なのだそうです。
具体的には議事録を重視した会議の総合管理アプリケーションのようです。PCを使って議事録を作りながら会議を進めます。会議の議題や参加者、時間などを設定して会議を開始。「意見」や「結論」などを書き出していきます。途中で決め忘れがでないようにアラートが働いたりします。テキストエディタのようなアプリケーションで白紙に自由に文を書いていくことができます。ここは意見、ここは結論など後からタグづけを行うこともできます。こうして漏れのない構造化された議事録が作られていきます。目的が不明瞭、議論の迷走、曖昧な結論、時間管理、ToDoのロスと、ファシリテータースキル、議事録作成コストなどを回避することができます。
議事録はXMLで出力され、会議終了時には参加者にメールで送られる機能があります。そうして作られた議事録はWebベースの管理アプリケーションに登録でき、メンバーが共有することができます。
第一印象は、「フォームを全部埋めるような会議って、私は理想としないのですが...。」ということでした。私がいいと思う会議は、
・要点をパパっと顔を見ながら確認する
・相互に場の圧力をかける
・本当に大丈夫か、微妙なニュアンスを読み取る
ための会議であって、議事録ドリブンな会議ではないことが多いのです。
でもでも、実際のデモを見ると、なかなか便利そうだとも思いました。ある程度大きな組織で決定事項をたくさん短時間で決めなければならない会議に向いていそうであります。
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