人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
5月に上巻を書評してから、下巻について書くのを忘れていたので思い出したように書評を書いてみる。デール・カーネギーによるスピーチ術。上巻はスピーチ前の準備と心構えを説いていたが、下巻ではより実践的な内容となっている。登場するのは上巻同様、歴史上の英雄や著名な経営者が多い。
とにかく分かりやすくしゃべることが大切だというのがこの本の要旨である。それには終わり方が重要で、最後にしゃべったことを要約する。私はこれこれこういうことについてお話いたしましたと簡潔に総括することで、聴衆の印象がよくなるというもの。上下巻2冊で語る極意は意外にもシンプルなオチだった。
何を話しているか、とらえどころがないスピーチは、相当の味を持った人物でないとうまくいかないのは事実。聞く側としても、ひとつかふたつのまとまった情報を得られれば、短いスピーチには満足するものだ。一生懸命準備する際には、ネタリストに追加するのではなく、絞り込む部分にこそ重点をおけということになる。
何を話すかについて、人は人について一番興味があるものだから、できる限り人について話なさい、というのは良いアドバイスだなと思った。スピーチでは、人物評は確かに気になる。
ところで、偉い人のスピーチというと先月、かなり笑えたのがライブドア・楽天球界進出を喜ぶ宮城県知事のこんな会見議事録。うっかり差別用語を喋ってしまったのだが、その後の記者のツッコミに対する受け答えを見る限り、本当に知らなかった可能性が高い。広報課長まで調子を合わせて「いや、知りませんでした。」と話したのは日本型タテ社会の悲しい性なのだろうか。それとも広報課長もまた知らなかったのだろうか。差別用語について知識がない広報課長は役目が勤まらないと思うのだが...。
日本の政治家のスピーチは、まず失言しないことが第一のノウハウなのかなと思った。日本の政治家の名演説というのを一度聞いてみたいものだが、最近の法相のしどろもどろな受け答えを見ても、望むべくもないレベルにあるようだ。こういう本、少しは読むべきだなあ(笑)。
・宮城県知事記者会見(平成16年9月21日)
http://www.pref.miyagi.jp/kohou/kaiken/h16/k160921.htm
「
◆Q
先ほどの「バカだ、チョンだ」というのは明らかに差別用語である。取り消しと言ったが、その言葉を使った趣旨と、取り消すに当たってやはり何らかの釈明も要るのではないかと思う。
■浅野知事
ごめんなさい。間違いました。ちょっと、があっという流れの中でつい言ってしまいました。さっき言ったようにおわびして訂正をします。
◆Q
趣旨はどのような趣旨だったのか。
■浅野知事
ちゃんと問題を正しく理解していく、正しい理解がないという意味で使いました。批判されていますよね、無能だとかいうようなことで。それを差別用語と言われる形で言ってしまったということについては、おわびして訂正します。
趣旨は、いろんな言い方でされています。統治者能力がないとか無能だとかというようなこと、そういう趣旨のことを言いたかった。
◆Q
あくまで特定の人種を指定したような発言ではないということか。
■浅野知事
そういうのは人種とは言いません。
◆Q
民族ですか。
■浅野知事
民族……。
◆Q
「チョン」という朝鮮人に対する差別意識があってそういう発言をしたのではないということか。
■浅野知事
あら、私は前者の方をあれだ(適切を欠く表現)と思ったけれども、認識は全然ありませんでした。それはいろいろ言われているかもしれないけれども、それは学術的にというか、言語学的に正しいあれなんですか。分からない。認識すらなかった。
◆Q
「バカだ、チョンだ」というのは朝鮮人に対する差別用語であるのだが、いかがか。
■浅野知事
そうなの。いや、それは認識すらなかった。そういうのは皆さん知っていた。広報課長。
■広報課長
いや、知りませんでした。
■浅野知事
それはそうだとすれば無知も恥じます。
---
◆Q
先ほどの「バカだのチョンだの」という発言を聞いていて、個人的にあまりにも知事が無知なのにショックを受けた。もしこれが全国知事会等の場であれば、他県の知事から「何だこいつは」という目で見られたのは間違いないだろう、特に西日本など在住の方が多いところの知事はそう思うだろうと思ったが、知らないということで、問題意識をどのように持っているのか、在日外国人の地方選挙の参政権の問題等どのように考えているのか伺いたい。差別という問題と絡めて参政権の問題というのはあると思うが、そこでどう考えるかということを伺いたい。
■浅野知事
事実の問題として、私が無知であったと、これは非常に恥ずかしいことだ。これはそれで情報開示を今いたしましたから、これは仕方がないことです。47県知事で私だけがこれ知らないとしたらすごく恥ずかしいことですが、それは分かりません。
後でちょっとメモが入ったということもあって、差別用語であるということは確認をいたしました。「チョン」というのはお話しのとおり改めておわびをして訂正させていただきたいと思います。
この表現は明治以前から使われていたんですね。それが、その後、語呂合わせ、「チョン」ということをかけ合わせて、使われ方としては朝鮮人を差別する用語として使われてきたという歴史があるということを今確認いたしました。でありますから、そういう民族差別ということでは使うべきではないという表現だということを改めて確認をし、したがって、先ほどの表現は改めておわびをし、訂正させていただきます。
」
関連:
The History Channel - Great Speeches
http://www.historychannel.com/speeches/archive1.html
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