記憶する技術―覚えたいことを忘れない

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記憶する技術―覚えたいことを忘れない
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記憶力を高めるためのノウハウ本。さまざまな研究をつまみぐい、エッセンスを読みやすくまとめていて、幾つか、気づきがあった。

「必要のないものは、ムリに覚えない」という章があって、アインシュタインは自宅の電話番号も、専門であるはずの光の速さも暗記していなかったという逸話が取り上げられている。必要としなければ天才でも覚えられないというのにほっとする。逆に言えば覚えようとしなくても覚えられることもある。動機づけが大切ということ。

面白かったのはかつてのエチオピアの国を上げての学習強化エピソード。90%の国民が文字が読めなかったので政府は、8歳以上の子供のいる家庭で文字が読めない家族がいる家には赤いステッカー、全員でできれば黒いステッカーを貼る運動を推進した。赤いステッカーが恥ずかしいので国民は必死に勉強し、識字率向上に成功したという。そういえば、私も講演など人前で話す直前に暗記力が良くなっている気がする。恥ずかしい思いをしたくないからで、やらないと恥を書く状況を作り出すのは手なのかもしれない。

瑣末な周辺情報やディテールを敢えて覚えることで、記憶が定着するというノウハウも心当たりがある。大学受験時に予備校で名物講師がいたのだが、この先生は試験には出ない世界史裏話をよく話してくれた。トルコのオスマン帝国では、王座を継ぐには兄弟を殺してからという法律があったこと、くらいまでは試験に出るのかもしれないが、具体的に絹の布で両方から従者が首を絞めて殺したんだよ、みたいな部分は出るわけがない。だが、実際にはこの生々しいシーンが記憶に残って、オスマン帝国のその他の事項が試験では思い出せた。

著者は記憶術の専門家でない分、この本では、自説に固まらず、幅広く理論や経験則を提示してくれるので、これは私向きかも?というアイデアが見つかる本だった。記憶力は頭の基礎体力みたいなものなのだと思う。調べれば分かるで用が済むことが多いが、覚えていればもっとクリエイティブなことができるチャンスがある。会議で統計の数字や前期の売り上げを「後で調べておきます」で決定が次回回しになってしまうことなど、惜しいなあと思う。

以前、毎回感動しながら見ていたドラマ、(アート引越しセンターがモデルの大阪人情ベンチャー成り上がり物語、藤原紀香)があるのだけれど、

・あなたの人生お運びします
http://www.tbs.co.jp/ohakobi/contents.html

このドラマでは顧客名簿を盗まれたとき、記憶力の強い社員が顧客名簿を丸暗記しており危機が回避された。実話だったかどうかは知らないが、こういう人物が社内に一人いたら、会社では戦力になる気がする。

インドでは、九九の計算を、9*9ではなく22*20まで暗記させるそうだ。日本では詰め込み教育への批判で、暗記は軽視されているようだが、基礎体力不足に陥らないと良いのだが。

関連情報:

・Passion For The Future: なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか―記憶と脳の7つの謎
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000470.html
この本はとてもよかった。名著。

・Passion For The Future: 記憶力を高める50の方法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000974.html
今日の本に似ている。

・Passion For The Future: 「3秒集中」記憶術―本番に強くなる、ストレスが消える、創造力がつく
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001014.html
円周率暗記、元世界チャンピオンの本。

・Passion For The Future: あたまのよくなる算数ゲーム「algo」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001072.html
記憶力を鍛えるゲーム。

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このページは、daiyaが2004年10月19日 23:59に書いたブログ記事です。

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