「格付け」市場を読む
AAAだとかBBB-だとか、企業の格付け情報を金融系ニュースでよく目にする。企業経営の質を表す投資家向けの指標なのだろうと漠然と考えていたが、この本を読んで、やっと意味を理解できた。
・格付け一覧 ムーディーズ
http://www.moodys.co.jp/ssl/list/ratlist.asp
ムーディーズ、スタンダードアンドプアーズ(S&P)、フィッチが格付け企業としては、御三家で、他にも日本系のR&I、JCRや、独立系の三國事務所などがあるそうだ。シェアは御三家の外資系が、圧倒している。
最近では、民間企業だけでなく、大学や病院、自治体などに対しても格付けを行っているらしい。怖いのは指標の過剰評価と独り歩きである。もともと、これらの格付け情報は、企業の未来の成長可能性、大学の難易度やブランド力やサービスレベル、病院なら生存率を示しているわけではない。格付け作成にはいくつものパラメータが使われるが、主に債務不履行(デフォルト)のリスクを判断してつけた指標である。だが、金融に詳しい知識のある人以外は、こうした格付け情報が一般ニュースに混ざって報道されると、組織の持つ総合力を評価したものと勘違いしやすいのではないだろうか。私はだいぶ誤解していた。
儲けるための投資判断材料としても、正しくはないらしい。債務不履行に陥らないような慎重な経営は、短期的な高い成長率にはつながらないことを意味する。むしろ、格付けの一般化した米国では、格付けが低く「投機的」なジャンク債に、投資家の人気が集まったりもするらしい。日本は格付けが神格化されてしまい、格付けの低い金融機関は信用問題を起こして、すぐにつぶれてしまったりするのとはだいぶ様子が違うようだ。日本のように、格付け情報が未来を操作するようでは、本末転倒だろう。
「勝手格付け」が主流になってきているそうだ。企業に格付け費用をもらって格付けを行う依頼格付けではなく、一般人と同じレベルで入手できる公開情報から、”勝手に”格付けを行うやり方のこと。
この本ではムーディーズの格付けの方針が要約紹介されている。
1 専門のアナリストが分析するが主観的な要素は入る
2 格付けは複数のアナリストによって決定される
3 長期的な視野に立って格付けは行われる
できる限り客観に近い主観を提供しますという方針。ムーディーズのサイトに詳細が掲載されている。
・格付けとは(ムーディーズジャパン)
http://www.moodys.co.jp/ssl/general/toha.asp
格付けについての丁寧なガイドで読み応えあり。
読んで思ったのは、格付けビジネスは、モラルが重要だということ。企業から格付け料金をもらう代わりに高い格付けを与えるということも実際にあるらしいのだが、やりすぎると格付け自体が信用を失う。企業体としての利益追求と、中立性のバランスが肝であるらしい。
後半ではアナリストのプロフィールや格付けに見る日本の未来といった話題が続く。格付けについて総合的に理解できる良い入門書だった。
この本は金融業界の格付け企業の話だったが、情報社会において、格付けというのは至る所で重要視されていると思う。ネットオークションのユーザの格付け、オンライン書店のユーザレビューによる書籍格付け、グルメサイトのレストランやラーメンの格付けなど。どれも比較して判断する時間を短縮するために使われているようだ。
米国で面白い格付けビジネスがある。ベケットという会社で、統計の博士が創業した。野球選手やポケモンなどトレーディングカードの希少性を評価して格付けをし、ベケット値と呼ばれる値段を発表する。そのベケット値でカードを取引する流通や、オンラインストア、情報誌を発行するビジネスで大成功している。ネットオークションでもベケット値が参考値になるので、値崩れが起こらず、明らかにレイティングによるバリューを生み出している。ネット上で流通するもので、格付けに専門家の目利きが必要な種類の商材には、まだまだ同じようなビジネス展開が可能なのではないだろうか。
・Welcome to Beckett.com!
http://www.beckett.com/estore/
関連情報:
・2ちゃんねる格付け板
http://that3.2ch.net/ranking/subback.html
芸能人のランキングから、「強そうな駅名」などおかしなものまで
・製品、サービスの格付けサイト PTP
http://www.ptp.co.jp/top.php3
家電、PC、から映画まで
・戒名の格付け
http://sogi-iso.jp/jouhou/sougi18/18_1_4.html
戒名にもランキングが
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