データで読む家族問題
冒頭の<はしがき>より
「たとえば多くの日本人は「未婚の母は昔より増えている」と信じている。ところが明治時代や大正時代のほうが、今の数倍も多いのである。また「核家族は戦後の産物だ」と思っている人も多いが、大正9年の国勢調査でも、核家族は過半数を超える存在だったのである」
この本は、最新の統計データから、日本の家族がこの10年でどのように変容してきたかを数字から読み取る本である。普段、当たり前のように考えていることも、数字を見るとだいぶ違うことが分かる。
たとえば結婚にまつわる部分を要約してみると、こんなことが分かる。
■《配偶者の選択、交際期間》
1949年に結ばれた夫婦では3分の2が見合い結婚で恋愛結婚は2割に過ぎなかった(残りは何なのか不明で気になる。まさか許婚制や政略結婚?)。1960年代後半に見合いと恋愛はほぼ同率になり、現在では恋愛結婚が90%を超えている。これは実感に近いが、夫の職業と結婚形式は相関しており、97年時点でも、夫が農林漁業従事者である場合には、見合いが38.7%もある。結婚情報サービスは、ここらへんにターゲッティングするといいのかもしれない。
知り合ったきっかけは、職場・仕事関係が34%で最多、友人・兄弟を通じてが27%でそれに次ぐ。私は前者で、妹夫婦は後者だったなあとこれも頷く数字だが、この傾向、実は20年間も変わっていないそうだ。ちなみに交際期間の長さは、学校で知り合った二人は7.4年、友人・兄弟を通じて知り合うと2.7年、恋愛結婚の平均は3.7年に対して見合いは1年となっている。87年からの10年の統計では夫25歳、妻23歳で知り合い、3.2年の交際後にゴールインするのが平均モデルだそうだ。
無論、結婚の高齢化、非婚化もまた進んでいる。地域によってもだいぶ違う。2000年の平均結婚年齢は夫28.8歳、妻27歳なのだが、東京が最も高く夫30.1歳、妻28歳である。低いのが岡山、香川、宮崎の夫27.9歳、福島の妻26.1歳である。地方のほうが若い結婚が多い。交際期間も短い。早く結婚するには地方のほうが有利ということになるかもしれない。
結婚年齢は諸外国との比較もあって、日本はかなり高い部類に入る。これが実は合計特殊出生率1.35という有名な数字に深く関係しているという。この数字、だまされやすいが、日本の普通の夫婦に1.35人しか子供がいないという話ではないらしい。出生率は高校生や未婚女性、未亡人などを含む数字なので、低くなるからで、実際には長い結婚期間を続ける夫婦には今日でも、平均2.2人のこどもがいるのだとのこと。そして2.2人という数字は、25年間変わっていないばかりか、4人以上産む例は最近、むしろ増えているのだという。少子化問題を語る上で、見落とされがちな事実ではなかろうか。
■100以上の問題設定と、多面的な分析
後半は、パラサイトシングル、大学のレジャーランド化、早期離職とフリーター、高齢化、自殺、離婚、家庭内暴力などの家族の”問題”に焦点を当てて、各種統計が紹介されていく。形式としては、見開きでひとつの問題分析が行われ、ひとつの問題について3つ程度の統計表が参照される。これが100以上続く。著者は元家庭裁判所調査官で、御茶ノ水女子大名誉教授という経歴。数字だけでなく、実例をよく知っているだけに、取り上げる切り口がよく整理されている。
家族と消費は密接な関係にあるから、マーケティングにも使える一冊だと思う。
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