私の好きな映画たち(2)
昨日に続いて、映画評論第2弾。
古典的な作品から。10年以上前の私が書いた映画評論に、今の私が赤字でツッコミを入れるという、時空を超えた独りチャットをやってみます。
オフコースの名曲「はたちの頃」の唄いだしフレーズ。
「君とは良く話したな、アパートの狭い部屋で。お互い認め合えずに夜更けまで話した」
二十歳の頃。私は大学生。あるNPO団体の機関誌で、誰も読まないのに、映画評論を連載していました。はっきり言って、文章がめちゃくちゃ青いですが、この頃、評論した映画は未だに名作という評価は変わりません。古いワープロからテキストデータを救出しました。若気の至りな部分も多くて恥ずかしい気もしますが、そのまま掲載。26作。
みなさんは二十歳の頃、どんな映画が好きでしたか?
(以下の文章が書かれたのは恐らく1991年〜93年頃時点です。赤字はその評論を読んだ今の私のツッコミ感想)。
「ラストエンペラー」では皇帝の家庭教師レジナルド・ジョンストン役を演じ たピーター・オトゥールが、真面目な英国名門パブリックスクールの堅物教師 を見事に演じきった名作。駆け引きだとか欺瞞だとか、日常生活の中にある、 人生のそんな近道があることは分かっていても、ひたすらまっすぐにしか生き ていくことのできない不器用な男の一生の物語は、どこか共感を覚えてしまい ます。出世や名声などを考えず、仕事に真剣に取り組み、一人の女性をずっと 愛し続けるチップス先生は、何か気詰まりな気がしないでもないけれど、素敵 な人物ではあります。ラスト近くの迫真の演技には、感動して涙が出てきます。 いい映画だなあ。
今の私はチップス先生にそれほど共感しないかな。無口で実直はいいけれど、それだけじゃ、つまらない気がして。近道もそう簡単なことではないなあと思う、悪知恵のついた今日この頃。
「2001年宇宙の旅」で有名なスタンリー・キューブリック監督作品。ドラッグ、 暴力、レイプ、強盗、殺人などなどなど、刺激を求めてなんでもありの近未来 社会で、不良グループのリーダーが主人公。やりたい放題の結果、警察に捕まり、国家に洗脳されて...という映像も物語もショッキングな内容なのです が、見おわるとなんか快感という麻薬的映画作品。こんな内容なのに、テーマ 曲がスタンダードの名曲「雨に唄えば」で、これがまた不思議にはまっている。 Singing in the rainと唄いながらの暴行シーンは名場面。でも、万人向け の映画ではございません。世の中なんか違うよなあ、とお考えの、そこのあな たの為の映画であります。間違っても御家族の団欒に見る映画ではございませんのでご注意を。
今となってみるとそれほど刺激に思えないけれども私がスレちゃったかな。キューブリック的という意味では、「CUBE」のヴィンチェンゾ・ナタリ監督に期待しています。
重厚な映像が「ゴッドファーザー」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ アメリカ」を連想させます。もちろんそれらを超えることはできていませんが、 裏切りと欲望渦巻く非常な男の世界を、魅惑的な女性やら、派手な銃撃シーン やらの彩りを加えて、迫力ある鮮やかな映像を作ることに成功しています。知 名度は低いですがお薦めです。
10年経ったけれど同じ感想。B級マフィア映画にしてはよくできてたな
デンマークの作品。本国では絶賛されていたようですが、日本では上映館の少 なさや地味な内容のせいか、あまり評判にならなかったようですが、これは名 作だとおもいますよ。老夫婦が別荘に昔の友人を呼んで、ささやかなパーティ ーを開くところから物語は始まります。パーティーの間、老夫婦は二人の出逢 いから、平坦ではなかった長い人生の軌跡を回想していくのですが...。小 説でも映画でも音楽でも、優れた作品というのは、人間の生き方について語っ ているものですが、この映画もまた生きること、愛することという人間の抱え ている永遠の課題を扱っているように思います。泣かせます。ハンカチの御用 意を。しかし、日本ではなぜこういう名作が大々的に上映されないのでしょうか?
もういちど見たいな。これはいい作品で記憶に残っています。老後に夫婦でみたいですね
ガープの母親は戦時中の看護婦でした。彼女は野戦病院に運び込まれてきた脳 死状態の敵兵を、子供欲しさに犯してしまいます。その結果の産物が、この映 画の主人公ガープでした。母親はこの出生を秘密にもせずにガープに教え、ガープもまた悩みもせずに、この不条理と驚きに満ちた現実世界を、しっかりと いきていくのでした。ラストが泣かせます。主演は「レナードの朝」のロビン・ウィリアムス。原作は「ホテル・ニューハンプシャー」(これもよかった)のアーヴィングです。原作の小説も名作です。
原作がいいのだよね。これ。
アランパーカーの監督作品。主演のタムリン・トミタが日系二世のヒロインを 演じて独特の魅力。彼女を見るだけでもこの作品をみる価値があるかもしれま せん。戦時中の日系二世の女性とアメリカ男性の波乱に満ちたラブストーリー を中心に、当時の人々の人生模様が描かれます。激動の時代の流れに翻弄され つつも、したたかに貫かれる愛の強さに感動します。
タムリン・トミタその後なにしてるのだろうか
アメリカの永住権を意味するのがグリーンカード。このカードがどうしても欲 しい男と、利害関係の一致したアメリカ女性とのひょんなことからの出逢いか ら幕が開きます。偽装結婚でカード取得後は2度と会わない約束が、政府の調査をかわす為に、共同生活するはめに。そして芽生える愛の物語。主演のアン ディ・マクダウェルは、元トップモデルというだけあって奇麗。「セックスと 嘘とビデオテープ」の主演も彼女でした。相手役のジェラール・ドパルデュー も、今や個性派俳優の代表格。キャストですでにこの映画は成功しています。
ドパルデューは名優という評価は揺るがず。
奇才デビット・リンチ監督の名作。「ブルーベルベッド」もそうだけれど、彼 の作品は、何だか常軌を逸した変態的なところがあって、評価は分かれると思いますが、リンチファンにはたまらない魅力です。「ツインピークス」で日本 でも有名になりましたが、本来はカルト系でしょう。リンチの映画が一般に大 ヒットしては、この国も終わりなのかもしれませんね。でも、天才の映画では あります。ワイルドでバイオレントでとってもピュアなラブストーリーです。 首がぶっとんじゃったりしますけどね...。
ロードムービーの最高峰ですねえ。
征服者ピサロの部下アギーレらの部隊はイカダで川を下る。ひたすら下る。原 住民の攻撃、食料の不足、内部分列と殺戮を繰り返しながら。やがて狂気の独 裁者と化したアギーレは、仲間を全員処刑して、一人取り残された、死臭漂う イカダの上で、ニヤリと笑い続けるのでした。人間の奥底に潜む、狂暴な虚栄 心、支配欲、狂気というダークな側面を濃縮してドロドロと吐き出させてみせ たこの作品、迫力がすごいです。
真夜中に独りで見るにはよいB級映画でした
ブラジル映画。セリフが少なく、淡々と物語が進行し、淡々と終わるという淡 々系作品。セリフが少ないので単純なストーリーも、よくみていないとわから なくなる。また、睡魔にも気をつけねばならない。私はビデオで見て途中2度 も眠ってしまった。独特の雰囲気が良い。
静かすぎる映画でしたね、っていうかつまらない映画だったんじゃないか
私の好きな小説家の一人、スティーブン・キング原作。キング原作の映画化作 品の中では、最も良く出来たホラーではないだろうか?いじめられっこの内気 な少女キャリーは、ある日自分に恐ろしい超能力が宿っていることに気づく。 エスカレートしたいじめに彼女の怒りが頂点に達したとき、戦慄の復習劇が始 まる。のですが、私は、何だか見ていて、いじめている方の残酷さが恐くなっ てしまいました。しかし、恐い映画です。心臓に自信のない方はやめたほうが いいかも。
スティーブン・キングはパターンが見えて、最近読まなくなってしまった。彼の原作の映画では「シャイニング」が名作でしょう
主演ロバート・デニーロ、ライザ・ミネリ。ジャズマンを主人公にした映画に は他にも「モ・ベター・ブルース」「バード」「ラウンド・ミッドナイト」な ど数多くの名作がありますが、これもそれらに並ぶ傑作です。160分に及ぶ大 作でありながら、ジャズの演奏や舞台を効果的に織り込み、感動のラストシーンまで飽きさせずに連れていってくれます。内容は、大人のラブストーリーです。
当時ジャズにはまっていたんです。「大人のラブストーリー」って表現は、当時何を思って書いていたんだろう。
ライザ・ミネリの主演作。彼女は歌も踊りもプロということで、この手のミュ ージカル映画ではさすがの演技をみせてくれます。男と女が、出逢い、恋し、 別れていく。単純な話ではありますが、単純ではないのです。
今ならもう少しまともなコメントも書けるけど書かない(笑)
平凡な結婚生活に疲れ、離婚を考えている普通の中年女性ペギー・スー。彼女 は出かけていった高校の同窓会の席で気を失い、25年前の高校時代に逆戻りす る。もう一度人生をやり直せたなら。あの時違う選択をしていたなら。という 誰もが考える人生の「もし」がテーマです。60年代アメリカの若者と文化、 音楽にファッションを見事に再現した舞台の中で2度目の人生を生きるペギ ー・スー。恋愛や友情、家族からの独立、セックス、野望など若い世代の直面 する問題に彼女は、大人の視点で2度目の選択をしていきます。それが、若者 の一途さや無知無経験ゆえの純粋さと対比されていきます。監督コッポラは、 若さゆえの愚かさを暖かい目でみているようで、むしろ大人の冷めた考え方に 対して「人生を楽しむって何でしょう?」という問いを発しているように思え ます。映画にタイムスリップものは数多くあっても、懐古趣味や、舞台設定の 奇抜さをみせるだけのものが大半の中で、たんなる古き良きアメリカ賛歌に終 わらせず、時代の移り変わりと、その流れの中でも変わらない普遍的なものと を対照的に浮き上がらせてみたのはコッポラの巨匠たる所以ではないでしょう か。結局、人生に仮定法はなく、生きるとは「If」ではなく「When」の 問題なのだよ、と監督はいいたいように思えます。また、人生の諸場面の選択 の必然性(運命とも言う)という彼の人生観が根底に感じられます。これは後 に彼の代表作となる「ゴッドファーザー」の死生感、運命の悲劇性にも重なるように思います。
何を言いたいのか分からない文章を書いていますね。でも、言いたいことは分かる気がするし、今もそう思うなあ
たった一晩の話で、登場人物もほとんど3人というシンプルな設定ですが、緻 密な演出(原作は演劇であったというのもうなずけます)と存在感ある登場人 物によって緊張感ある上質のサスペンスになっています。毎日単調な仕事に飽 き飽きしていた冴えない田舎町の駅長と、一緒に夜明けを待つことになった美 しい女性、そこに襲いかかる謎の男のサスペンス仕立てのラブストーリー。こ れは楽しめます。
緊張感のあるドラマだったなあと記憶しています
終始ジャズのスタンダードナンバーのオンパレードという感じの映画ですが、 曲がそれぞれの場面の為に書かれたのではないかと思われるほどはまっており、 ジャズファンには堪えられない作品です。主役は大御所ベッド・ミドラー。歌 唱力には圧倒されます。「PS I Love You」「Come Rain or Come Shine」などを唄うシーンは映画というよりライブを観て いる感じです。内容は二人のジャズ歌手の、それは長い長い(50年以上を描 いています)ラブストーリー。
これはいい映画でした。ベッドミドラー、ライザミネリに駄作は少ない
平凡な田舎の家庭の主婦が、戦時中夫の出征中に、生活費捻出の為、バンドで ピアノを弾いたのがきっかけで、バンドとともに旅行をはじめ、やがてバンド の男と恋に落ちてしまうという、不倫のお話です。「君と一緒にラブソングは 唄えない」という不倫相手のセリフなんかがカッコいいですね。ジャズが好き な人は必見です。
妻子もある今からすると寝取られる夫を想像してしまい、怖い映画だな(笑)
現代フランス文学の代表女流作家マルグリットデュラスの15歳の時の愛人と の性関係を綴った自伝が、ジャンジャック・アノー監督(「薔薇の名前」の監 督)の手で映画化されました。映画としては水準に達していますが、この大物 二人の組み合わせに期待したほどではないというのが本音でしょうか。作家の 愛人関係を描いた官能的な映画としては「ヘンリーアンドジェーン」(北回帰 線のヘンリーミラー)、「カミーユ・クローデル」(ロダンの愛人)などの方 が優れているように思います。そもそも主演のジェーン・マーチがいまいちで す。仏領インドシナの風景は美しいですが...。
車内で手が触れ合うシーンよかったな。今もドキドキするかな
気は優しくて、頭脳明晰、剣の腕も超一流。でも、鼻が滑稽なほど大きいため に、女性とつきあえない、悲しい男のラブストーリー。文句無しになけます。 映像は重厚で豪華キャスト。原作は有名な演劇ですね。昔の演劇の資料に「白野弁十郎」と訳されていて笑えましたが、古典的名作です。これはみないと損ですよ。
その後2回観たかな。
・「ローラ」★★
ジャック・ドゥミ監督が「シェルブールの雨傘」(大傑作!)の前に撮った白黒映画。初恋の去っていった男を、ただひたすら待ち続ける踊り子のお話。実 はこの映画微妙に、「雨傘」と設定がつながっていまして、「雨傘」の予備知 識があれば、さらに面白いかもしれません。しかし、なんで昔の映画はこう単 純なストーリーで人を感動させてしまうのでしょうか?
この映画どこで観たんだろう???大学の図書館だっただろうか。ネットにも情報がみつからず。
・「サウス・キャロライナ」★★
バーバラ・ストライザンド主演・監督。家族の葛藤を描いた秀作で、暗く複雑 なテーマをうまく処理している。ニック・ノルティが主演し、苦悩する男を見 事に演じているのはいいのだけれど、セラピストでヒロインがバーバラという のが気に入らない。バーバラストライザンドはやはり監督に徹するべきです。
苦悩する夫となりつつある今みたら感想ちがうんでしょうね
アウシュビッツ収容所で、生きるために、将校たちの賭けボクサーとして戦う 男の物語。悲惨な状況の中でも強く生きぬいて、人間の尊厳を忘れない人々の 話は、実話なだけに一際心を打ちます。有名な役者は出てきませんが、とても よい作品です。
今思うとたいしたことないかも
黒沢明監督作品。この作品を見ればなぜ「世界のクロサワ」なのかが納得でき るでしょう。代表作「乱」は、日本人が見ると、外国人向けに戦国時代があま りに類型化されすぎていて、違和感があるのですが、こちらは、日本人の為の 日本映画なので、すんなりと入って行けるでしょう。この映画はもう泣けます。 すごく泣けます。冴えない役所の土木課の課長のおじさんが、自分がガンであ と半年の命であることを知ります。おじさんは、そして人生の最後にひとつだ け、何かを残して人生を終えることを決意します。その何かとは...。「生 きる」ことの意味を真正面から描きながら、少しも説教臭さを感じさせず、見 るものを泣かせ、憤らせ、考えさせる、という素晴らしい映画です。日本映画 の頂点と私は思います。
これは未だに最高の映画のひとつと思います。
カルト系映画の巨匠ピーター・グリーナウェイ監督作品。彼の作品はすべて芸 術の香りと死のイメージが基調となる重苦しい映像なのですが、同時に、非常 に美しい絵を撮ることにも定評があります。この映画は、腐敗した食べ物や残 酷な殺人が、それはそれはとても美しく描かれております。見過ごしがちです が部屋ごとに衣装が変わっていることにも注目。他にも「ZOO」「建築家の 娘」「英国式庭園殺人事件」そして「テンペスト」と、グリーナウェイ作品は すべて同じ、重厚で煌びやかな死がテーマのようです。
グリーナウェイに当時はまっていたんです。今はもう少し分かりやすいものが好き
この映画はメジャーですね。素晴らしい映画です。近年まれにみる名作です。 きっと古典になるでしょうね。監督は若干29歳で、この映画を撮りました。 天才ですね。2時間版と3時間完全版がありますが、2時間版がお薦めです。 この映画はまあとにかく見て下さいということで...。単館公開が口コミで 噂が広がり、全国ロードショーになっただけのことはあります。やはりなんと 言ってもラストでしょうか。人生について考えたいあなたに。
その後5回くらい観ました。いいですねえ。
映画史に残る名作の一つですので見た方も多いでしょう。18歳のカトリー ヌ・ドヌーブが主演しております。今はもう大御所である彼女もまだこの頃は 駆け出しでした。ミュージカル映画でしかもフランス語なので、はじめ戸惑う かもしれませんが、とにかく、よくできた映画です。私は「サウンド・オブ・ ミュージック」などよりもこの作品が好きです。非常に洗練されたラブストー リーです。ラストは悲しいような、かっこいいような...。
おしゃれ
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