インタフェースの計量化、その2 Fittsの法則
インタフェースの計量化、その2 Fittsの法則
昨日の続き。
ユーザビリティを科学するための計量化手法としてFittsの法則も有名である。
■Fittsの法則
ユーザがカーソルを現在位置から目標ターゲットに移動させるまでの時間を数値化するのがFittsの法則である。カーソルの移動距離とターゲットオブジェクト(ファイルアイコンやメニューアイコン、ボタン、選択したい文字列など)の画面上の大きさが、ここでは重要な変数となる。
数式で表現するとこうなる。(logは対数関数)。
・Fittsの法則
オリジナル(一次元。こちらは原理的説明の式)
T = a + b log2(2A/W)
改訂版(二次元。こちらが現実的なので以下それで説明を進める)
T = a + b log2(A/W+1)
T=時間(ミリ秒)
a、b=ユーザの熟練に応じて変わる操作効率、a=50、b=150くらいが一般値
A=カーソル現在位置とターゲットとの距離(例:100ドット、2センチなど)
W=ターゲットの画面上の大きさ(タテヨコで小さい方の値)
試算してみる。
例えば、カーソル現在位置とターゲットの距離が100ドット離れていたとする。ターゲットの大きさは、Windowsのアイコン(32×32ドット)を想定して32とすると計算は以下のようになる。
T= 50+150*log2(100/32+1)
処理時間であるTの値は、356ミリ秒となる。では、同条件でターゲットがもっと大きな横が10倍のサイズの640×320ドットの写真画像だったらどうだろうか。
T= 50+150*log2(100/320+1)
108ミリ秒になり、ターゲットが大きいことで3倍以上も移動時間は短縮された。ユーザはA地点からB地点へマウスを動かす際に、B地点のエリアが小さいと、処理が複雑になり、処理が遅くなる。小さいアイコンはクリックしにくいという簡単な事実だ。
ユーザが何百回も繰り返すマウス作業では、カーソルの平均的な開始位置を考えに入れて、設計することで、作業時間は大幅に短縮され、疲れも感じなくなる。古典的だが、WindowsのダイアログでOKボタンを自動的にフォーカスして自動で、カーソル移動してくれるチューチューマウスの便利はまさにFittsの法則があるから、と言って良いだろう。
・チューチューマウス
http://homepage1.nifty.com/ikehouse/
Fittsの法則の研究では、ターゲットが、画面の端の枠やウィンドウの枠、あるいは曲線の縁に位置した場合、ターゲットサイズは実際の大きさに関わらず小さめの値(50くらいという説あり)で計算してよいと言われている。画面の端に並んだメニューやアイコンは、画面の中途半端な位置にあるケースよりも選びやすい。重要なよく使うものは画面の端におくべきなのだ。
カーソルが100ドット離れた初期位置で、同じ32ドットのアイコンを画面の端においた場合には、287ミリ秒となる。。真ん中の場合は356ミリ秒でしたからだいぶ短縮された。
#PCでの電卓アプリでlog2は入力がやっかい。偉大なる数学者NightNoiseさんに計算方法を教えてもらった。このようにやればGoogleの電卓機能でも計算できる。
log2はlog2x=log10x/log102だから、上記例題1つ目を解くなら
50 + ((150 log((100 / 32) + 1)) / log(2)) = 356.659118
でよい。
・Fitts's UI Law Applied to the Web(Fittsの法則はWebデザインにも適用できる)
http://msdn.microsoft.com/library/default.asp?url=/library/en-us/dnhfact/html/hfactor9_3.asp
Fittsの法則はWebデザインでも通用することをマイクロソフトが説明している。
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